禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 しなやかな尾が幾本も揺れている。

 “千年を経た狐は妖となり、妖術で操る。人を魅了し契約を交わす。契約は蜜のように甘く、鎖のように重い。大妖の使い魔”
(契約?)

 その言葉に、雪乃はなぜか櫻子の顔を思い浮かべた。
 理由は分からない。ただ、胸の奥がざわりと揺れた。

 ーー雪女

 最後の頁に辿り着いたとき、雪乃の手が止まった。

 そこには、白い着物に月光のような銀色の髪の女が描かれていた。
 氷のような蒼の瞳が恐ろしい程、美しい。

 “雪女は人の男を惑わせ、凍える吐息で凍らせ、魂を喰らう。
 しかし稀に、人の子を抱きたくて人里へ降りることもある。”

「⋯⋯っ」
 何か、胸を突き刺すような切ない痛みが走った。

 理由はわからない。ただ、その文章の一行一行が自分の奥深くに落ちていく。

 窓の外を見ると、初雪が静かに落ちていた。
 白川家の庭は、降り始めの白にぼんやりと霞み、世界の輪郭が少しずつ溶けていくようだった。

 灯籠に積もる雪はまだ薄く、冷えた風に触れるたび、かすかな音を立てて舞い落ちる。
 雪乃は肩をすくめながら縁側を歩いていた。