禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 翌日、雪乃は和臣が士官学校に行っている間、和臣の私室を掃除する。

 雪乃は箪笥の奥に一冊だけ古びた本が挟まっているのを見つけた。

「妖に関する本だわ」
 雪乃は無意識に胸の奥がざわつくのを感じながら、そっとページを開いた。

 ーー大妖(だいよう)

 最初の頁には、禍々しい絵。
 鬼のように黒々とした角と、狐のように長い尾。

 その目だけが赤く光り、紙から抜け出しそうな迫力で睨んでいる。

 “千年を生き、人ならざるものすべての頂に立つ存在。気まぐれにして執念深く、魂を喰らう。”

 雪乃は喉が鳴るほど息を呑んだ。
 どこか、見覚えがあるような気がする。夢の中で見た影だろうか。

 ーー鬼

 次の頁には大妖とは異なる、荒々しい赤い肌の怪物が描かれていた。

 “怒りや恨みから生まれる力の権化。力は強いが知恵に乏しく、しばしば大妖に従う。”
 荒涼とした雪山を背景に、雪を踏み砕く鬼の姿が描かれている。

 雪乃は、理由もなく寒気を覚えた。
 自分でも理解できないほど、胸が強く締めつけられる。

 ーー妖狐

 頁をめくると、艶やかな狐面のような横顔が現れた。