禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

(和臣様、和臣様、和臣様⋯⋯会いたい⋯⋯触れて欲しい)

どうして涙が出るのか自分でもわからない。
ただ、心のどこかが傷んで、そして同時に、あたたかく満たされていく。

台所の冷たい空気の中、雪乃は簪を胸に抱き、そっと涙をこぼし続けた。

簪を胸に抱いたまま、雪乃はそっと目を閉じた。
涙の余韻がまだ頬に残る。

その瞬間、頭の奥に白い紙がふっと浮かび上がった。

見覚えのある筆跡。

『妖の気配が近い。君が狙われている。どうか、一人にならないで欲しい』
和臣の字。

はっ、と雪乃は息を呑んだ。
こんな手紙、もらった記憶などない。
(この記憶は何? いつの和臣様? 妖?)

雪乃は思わず胸元を押さえる。

心臓が不規則に跳ねた。
最近、人里で妖が出没しているという噂は耳にしていた。

若い女が忽然と姿を消す事件が続き、それは妖狐の仕業だと囁かれている。
(若い女、消える事件、妖狐⋯⋯)

彼女の背筋に、冷たいものがすっと走った。

(私が狙われている? もしかして妖狐に?)

ぞくり。

室内の空気が急に寒くなったように感じる。