禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

夕餉の支度が終わり、家の者がそれぞれの部屋へ散っていった頃。

雪乃はそっと、和臣から預かった弁当包みを持って台所へ戻った。
人目を避けるように、薄暗い明かりの下で布を広げる。

そこに、紫の花が揺れた。

ムラサキハナナの簪。
以前、和臣から贈られたような気がする。
飾りの中央に落ちる灯りが、かすかに光る。

(和臣様)

雪乃の胸の奥が、きゅう、と小さく痛んだ。
そんな贈り物を受け取る理由も、好かれるほどのこともしていないのに。

姉の櫻子との縁談がまとまっていると分かっていても、自分と和臣は思い合っている気がして手紙を入れた。
あったような、なかったような朧げな記憶の中で自分と和臣は確かに恋仲だった。

雪乃はそっと簪を手に取る。
冷たく、美しく、それでいてあたたかい。

ムラサキハナナ──“変わらぬ愛”。

和臣は言葉をくれない。
視線すら自分に向けてくれることは少ない。
指でそっと飾りを撫でた瞬間、胸の奥から、抑えきれないものが込み上げた。

ぽたり、と簪にひとつ涙が落ちる。

雪乃は思わず口を押さえた。
声を殺して、肩を震わせる。