禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

(どうして、だ。雪乃を守るためにここまで来たのに⋯⋯)
想いを言葉にできない呪い。

雪乃の名を紙に書くことすらできない呪縛。
そして、雪乃に近づくほど胸が締めつけられる焦燥。

それでも和臣は今日も士官学校に向かう。
朝靄の残る敷地を歩くと、冷たい空気がやけに胸を突いた。

歩く足音が、静かな決意のように響く。
だが和臣の知らないところで妖狐の視線は、今日も彼の背を見つめていた。

昼下がりの訓練場に、冬の始まりを告げるの冷たい風が吹き込んでくる。
和臣は静かな木陰に腰を下ろし、膝の上へ弁当の包みをそっと置いた。
雪乃が用意してくれたものだが、包みの結び目に、ほんのわずかな違和感を覚える。

和臣は眉を寄せ、ゆっくりと布をほどいた。
次の瞬間、小さな白い封がふわりと落ちてくる。
震える指で拾い上げると、几帳面な文字が目に飛び込んだ。

『和臣様、お慕いしております。雪乃』
胸が、強く締め付けられる。

今回、雪乃には、和臣から告白などしていない。
守ることすら、まだ十分にできていない。

——なのに。

(……もしかして、雪乃にも“前の時”の記憶が、少しでも残っているのか?)