禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

雪乃は必死に手を引き抜こうとする。

「いたっ、櫻子姉様、やめてください!」
「やめないわよ」

櫻子の瞳が細くなる。

「奉公人が仕えるべき主人に色目をつかうなんて、恥知らずだって言ってるの。あなたのせいで白川家まで噂されるの、分からないの?」
雪乃の顔色が真っ青になる。

和臣はそのやり取りを見て、胸が締め付けられた。
(やめろ。櫻子⋯⋯雪乃が痛がってる)

止めたい。
声を出したい。
腕を伸ばせばすぐに引き離せるのに。

——お前には関係ない。雪乃は人ではなく妖だ。
——櫻子は、お前の“嫁”になる。

あの妖の囁きが頭の中を満たし、動きたいのに脚が凍りつくようだった。
雪乃が櫻子の引く方向へよろめく度に、和臣の胸は引き裂かれるように痛んだ。

「ほら、来なさい。奉公人なら、奉公人らしく主人が通る時は頭でも下げたら?」
櫻子は雪乃の頭をぐいっと下げさせる。

わざと和臣の目の前で上下関係を見せつけるようにした。

和臣は雪乃を守ろうと手を伸ばそうにも、体が金縛りにあったように動かない。
妖の影がひやりと和臣の耳元を撫でる。

——雪女を守るな。関わるな。
——また死ぬぞ。