禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃の白い手が、氷に覆われていく光景が脳裏に蘇る。
 その瞬間和臣の足が、わずかに雪乃から離れた。
 雪乃の瞳が大きく揺れる。

 櫻子の口元に、勝ち誇ったような笑みが浮かぶ。
「和臣様。分かってくださると思っていましたわ。家のためにも、私と結ばれるのが一番でしょう?」

 和臣は否定したかった。
 本当は雪乃を庇って、彼女を守りたかった。

 なのに、影の囁きが脳を締めつけ、言葉も発せない彼には抗う術がない。
 震える手で雪乃に触れようとするが、妖の囁きがその手をぴたりと止める。

 ——その女に触れるな。
 ——その女の正体は危険な雪女だ! 離れろ。

 雪乃の顔が悲しみに歪む。
 和臣は声を奪われ、妖に思考を濁されていた。

 今の彼はただ“苦悩”だけをまとって雪乃を見つめるしかなかった。
 廊下には、雪乃の小さな嗚咽と櫻子の満足げな笑いと、そして和臣の声にならない叫びだけが沈んだ。

 雪乃は震える指で袖を握りしめ、和臣の顔をじっと見つめていた。
 しかし、和臣は声を出して否定することも、彼女の手をとることもできない。

 その沈黙が、雪乃の不安をさらに深めた。
「和臣様」