禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 その眼差しが全てを語り、雪乃は胸が熱くなった。

 和臣の指先が震えながら雪乃の頬に触れようとした時。
 廊下の奥で、襖がゆっくり開く。

 櫻子が立っていた。

 紅い唇をきゅっと噛みしめ、美しく化粧された顔が怒りで震えていた。

「どうして、雪乃なの?」

 その声は小さく、けれど嫉妬の炎はあまりにも濃く、廊下の空気がひやりと冷えるほどだった。

 櫻子の目が、雪乃と和臣を真っ直ぐに射抜いた。

(どうして? どうしてあの子ばかり……)

 櫻子の胸の奥で、復讐の火が再び強く燃え上がった。
 真っ直ぐに雪乃を目掛けて突進してくる。

「どいてくださいませ、和臣様。同情は不要ですわ。妹はこうやって男の気を引く女狐なのです」
 気品をまとった笑顔。
 だが、その奥の瞳は刺すように鋭い。

 雪乃は怯えたように和臣の袖をつかむ。
 その指先が震えているのが、袖越しにも伝わった。

 和臣は、無意識に櫻子の前へ立ちはだかった。

 声は出ない。
 言葉で追い払うこともできない。

 ただ、両腕で雪乃を庇うように広げる。
 櫻子の眉がわずかに歪む。