禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃は息を吸い込み、震える膝を押さえた。
声が震えても、思いだけは曲げられない。

「奉公までは、我慢しようと思いました」
 静寂の中に、彼女の声が小さくかすれた。

「でも、これ以上は、もう我慢ならんのです。私がこれ以上、家に尽くすことはありません。私の人生は私のものです!」
 その言葉に、武虎がわずかに眉をひそめる。

 だが雪乃は引かなかった。

 細い体をまっすぐに伸ばし、まるで冬の竹のように折れぬ意志を宿して立っていた。
 和臣の胸が強く締めつけられる。
(そうだ。これなんだ)

 雪乃の肌は雪乃ように白く、その身体の線は細く繊細だ。
 しかし、彼女は弱そうに見えて、誰よりも強い。

 どれだけ踏みにじられても、心の核だけは折れない。
前世でも、その強さが誰よりも美しかった。

 だから守りたいと思った。
 だから愛した。
 だから、声を失ってまで時を遡った。

 雪乃の青緑の瞳が、必死に揺れながらも武虎をまっすぐ見据えている。
 涙は浮かべても、逃げる気配は一切ない。
(雪乃は強い⋯⋯どんな絶望的な運命にも抗おうとした。だから俺も強くありたい)