視える系男子・古屋和弥は解かれたい


 9月1日。
 今日は始業式だ。
 暦の上では9月は秋に分類されるらしいが、うだるような暑さはまったくゆるむ気配がない。
 俺は交差点のわきにある小さな木陰で汗を拭いていた。

 少しすると、安城が登校してきた。
 彼はこの暑い中、相変わらず制服のシャツのボタンを一番上まで閉めている。
「おはよ、安城」
 俺が片手をあげると、彼もわずか、ほんのわずかに笑って応えてくれる。
 そのまま俺と安城は並んで歩き出す。

 別に、どちらからいっしょに登校しようと言い始めたわけではない。
 なんとなくそうなるのだ。
 たぶん、高校生というのはそういうものなのだろう。
 話題は尽きない。
 夏休みにしたこと、安城の同好会立ち上げの行方、それからショッピングモールの取り壊しがいよいよはじまったこと――。
 安城は皮肉屋だけど、意外と雑談もできるらしい。

 校門を抜け、シミのある十字路をこえ、校舎に入る。
 俺たちがそろって教室に入ると、陸人が元気に手をあげた。
「あ、ふたりともー! おっはよー!」
「陸人! お前、真っ黒だなぁ!」
「えへへ。あれから海に6回も行ったんだあ」
 陸人は明るく笑ったあと、はっとした顔で尋ねてくる。
「2人とも、夏休みの宿題やった!?」
 俺は頷く。
「やったけど……?」
 安城の答えは聞くまでもないだろう。
 陸人は両手を合わせて申し訳なさそうな顔をする。
「僕まだ終わってないんだけど! お願い写させて!」
「いいよ」
 俺が応じると、すぐに安城が制止する。
「おい。やめろ。宿題を写すなど、相手にも自分にも利がない」
「はいはい。安城は黙ってろよ」
 陸人は言う。
「そうだよ。高校生にとって宿題はシェアするものだよ!」
 安城は呆れかえって、肩をすくめて席に向かう。

「そうだ」
 一歩進んだところで、彼は振り返った。
「次に悪霊が出たら、決着をつけよう」
 俺は苦笑する。
「……もう出てほしくないよ」
「1学期の遭遇率を鑑みると、2学期も相当数に遭遇するはずだ」
「ひぃ~……」
 安城は口角を上げた。
「嫌なら、我が同好会に入るんだな」
「なんでそうなるんだよ!」

 騒がしい2学期が、始まった。

(完)