それから、俺たちは陸人の家の裏の空き地に移動した。
陸人の家はそこそこ大きな一軒家で、なんでも祖父母と陸人家族、そしてそこに母親の姉家族も同居しているのだという。
次々と家族が顔を覗かせて俺に挨拶をしていった。
みな笑顔で、俺のことを親し気に「和弥」と呼んだ。
彼の人懐っこさの由来を見たような気がした。
「ほら、花火。去年の余りはちょっとしけってるやつあるかもだけど」
陸人が用意していた手持ち花火は、ものすごい量だった。
「これ、全部?」
俺が驚いていると、陸人は悪い笑みを浮かべた。
「まとめて火をつけてみない?」
「いいの?」
「盛大にやっちゃおう。一回やってみたかったんだよね」
「最高かよ……!」
俺はもろ手を挙げた。
夏に巨大花火。
なんだかいい。
青春っぽい。
バケツに水を汲んで、それからばらばらの手持ち花火をゴムで縛ってひとつにまとめた。
「おお……大砲みたいだ」
ずっしりと重みのある、ひとかかえもある花火が完成した。
俺はそれを小脇に抱えて機関銃のように構えてみせる。
「うおお……かぁっこいい……」
陸人が手を叩く。
「かっこいい~……!」
「これ、どうやる? 持ったまま火をつけるか?」
「どこかに固定したほうがいいかなって思うけど」
この空き地には固定できるような場所はない。
「じゃあ、持ち手の部分を埋めるか」
俺が提案すると、陸人は頷いた。
「いいね、それ。そうしよう」
俺たちはすぐに木の枝と石を使って地面に穴を掘りはじめる。
俺たちの両手はあっというまに土まみれになった。
まるで小学生みたいだ。
それがおかしくて、俺たちはくすくすと笑いながら掘り進めた。
30センチほど掘ったところで、俺は手を止めた。
「もういいんじゃないか?」
「入れてみよう」
手持ち花火の持ち手部分を穴に入れて、あとは土で固定する。
「……ぴったりだ」
俺が言うと、陸人もにやりと笑った。
「完璧」
俺たちはどちらからともなく悪い笑みを浮かべた。
――いよいよ、点火のときだ。
陸人がそれに火をつける。
花火の束はボッと音を立てて火を噴く。
それは思っていたよりもずっと大きな火柱となった。
「おおっ!」
感動した一瞬あと、乾いた音が響いた。
「えっ!?」
花火はいっそう激しく燃えあがる。
そして夜空を引き裂くように、一閃の光が飛んでいく。
陸人は頓狂な声をあげた。
「……発射型花火もいっしょに混ざってる!?」
「えええ!?」
花火は一閃、二閃と次々と飛翔していく。
「は、離れて!」
言われて、一歩後ろに下がったが、空き地に生えた雑草に足を取られて尻もちをつく。
そんな俺に向かって、花火が一筋飛んできて……。
「危ない!」
とっさに目を閉じる。
しかし、いつまでたっても予想した熱は訪れなかった。
激しい燃焼の音が止む。
あたりには火薬の匂いが漂っている。
「……あ」
恐る恐る目を開けると、俺の上に陸人が覆いかぶさっていた。
「り、陸人……!?」
陸人も目を開ける。
「びっくりしたねぇ……」
「大丈夫か?」
陸人の体を見ると、半袖であらわになった右腕が赤くなっている。――花火が当たったのだ。
「な、なっ……!」
驚愕で言葉も出ない俺とは対照的に、陸人は平然と言う。
「ああ、ちょっと、当たったかも?」
「馬鹿! 水! すぐに冷やさないと……!」
俺はバケツをひったくるように持ってくると、その中に陸人の腕を沈める。
水中で、みるみる陸人の腕は水膨れになっていく。
「なんで俺をかばったんだよ」
ぽつりと言うと、陸人は笑った。
「ふふ」
「……なにがおかしいんだよ」
「いやぁ」
陸人は小首を傾げる。
「和弥に怪我がなくてよかったなぁって」
「俺は……俺なんかを助けるために陸人に怪我しないでほしかったよ」
俺が言うと、陸人は笑う。
「僕が怪我してよかったんだよ。和弥が怪我するとこと、見てるだけだったら、僕の心が痛かったよ」
陸人は俺の背中を叩く。
「僕は腕がちょっと痛くて、いま和弥は心が痛いだろうから、これでおあいこだね」
「……ごめん」
「大げさだなぁ。友達なんだから、いいよ、これくらい」
――友達。
その響きは俺の心に深く染み渡った。
陸人の家はそこそこ大きな一軒家で、なんでも祖父母と陸人家族、そしてそこに母親の姉家族も同居しているのだという。
次々と家族が顔を覗かせて俺に挨拶をしていった。
みな笑顔で、俺のことを親し気に「和弥」と呼んだ。
彼の人懐っこさの由来を見たような気がした。
「ほら、花火。去年の余りはちょっとしけってるやつあるかもだけど」
陸人が用意していた手持ち花火は、ものすごい量だった。
「これ、全部?」
俺が驚いていると、陸人は悪い笑みを浮かべた。
「まとめて火をつけてみない?」
「いいの?」
「盛大にやっちゃおう。一回やってみたかったんだよね」
「最高かよ……!」
俺はもろ手を挙げた。
夏に巨大花火。
なんだかいい。
青春っぽい。
バケツに水を汲んで、それからばらばらの手持ち花火をゴムで縛ってひとつにまとめた。
「おお……大砲みたいだ」
ずっしりと重みのある、ひとかかえもある花火が完成した。
俺はそれを小脇に抱えて機関銃のように構えてみせる。
「うおお……かぁっこいい……」
陸人が手を叩く。
「かっこいい~……!」
「これ、どうやる? 持ったまま火をつけるか?」
「どこかに固定したほうがいいかなって思うけど」
この空き地には固定できるような場所はない。
「じゃあ、持ち手の部分を埋めるか」
俺が提案すると、陸人は頷いた。
「いいね、それ。そうしよう」
俺たちはすぐに木の枝と石を使って地面に穴を掘りはじめる。
俺たちの両手はあっというまに土まみれになった。
まるで小学生みたいだ。
それがおかしくて、俺たちはくすくすと笑いながら掘り進めた。
30センチほど掘ったところで、俺は手を止めた。
「もういいんじゃないか?」
「入れてみよう」
手持ち花火の持ち手部分を穴に入れて、あとは土で固定する。
「……ぴったりだ」
俺が言うと、陸人もにやりと笑った。
「完璧」
俺たちはどちらからともなく悪い笑みを浮かべた。
――いよいよ、点火のときだ。
陸人がそれに火をつける。
花火の束はボッと音を立てて火を噴く。
それは思っていたよりもずっと大きな火柱となった。
「おおっ!」
感動した一瞬あと、乾いた音が響いた。
「えっ!?」
花火はいっそう激しく燃えあがる。
そして夜空を引き裂くように、一閃の光が飛んでいく。
陸人は頓狂な声をあげた。
「……発射型花火もいっしょに混ざってる!?」
「えええ!?」
花火は一閃、二閃と次々と飛翔していく。
「は、離れて!」
言われて、一歩後ろに下がったが、空き地に生えた雑草に足を取られて尻もちをつく。
そんな俺に向かって、花火が一筋飛んできて……。
「危ない!」
とっさに目を閉じる。
しかし、いつまでたっても予想した熱は訪れなかった。
激しい燃焼の音が止む。
あたりには火薬の匂いが漂っている。
「……あ」
恐る恐る目を開けると、俺の上に陸人が覆いかぶさっていた。
「り、陸人……!?」
陸人も目を開ける。
「びっくりしたねぇ……」
「大丈夫か?」
陸人の体を見ると、半袖であらわになった右腕が赤くなっている。――花火が当たったのだ。
「な、なっ……!」
驚愕で言葉も出ない俺とは対照的に、陸人は平然と言う。
「ああ、ちょっと、当たったかも?」
「馬鹿! 水! すぐに冷やさないと……!」
俺はバケツをひったくるように持ってくると、その中に陸人の腕を沈める。
水中で、みるみる陸人の腕は水膨れになっていく。
「なんで俺をかばったんだよ」
ぽつりと言うと、陸人は笑った。
「ふふ」
「……なにがおかしいんだよ」
「いやぁ」
陸人は小首を傾げる。
「和弥に怪我がなくてよかったなぁって」
「俺は……俺なんかを助けるために陸人に怪我しないでほしかったよ」
俺が言うと、陸人は笑う。
「僕が怪我してよかったんだよ。和弥が怪我するとこと、見てるだけだったら、僕の心が痛かったよ」
陸人は俺の背中を叩く。
「僕は腕がちょっと痛くて、いま和弥は心が痛いだろうから、これでおあいこだね」
「……ごめん」
「大げさだなぁ。友達なんだから、いいよ、これくらい」
――友達。
その響きは俺の心に深く染み渡った。
