万理を見ると、彼は真剣な顔で図を覗き込んでいた。
俺は言う。
「被害はいまのところこれだけだ。なぁ、これ、絶対に悪霊がやっているよな?」
「……そう考えるのが妥当だな。悪霊はまだそのマンションにいるのか?」
「今朝は404号室の前にいた」
「なるほど」
「なにか、法則ある?」
期待を込めて彼を見つめるが、彼はノートから視線を動かさずに言う。
「……すぐには思いつかないな」
「安城でも、そんなことあるんだ」
「君は僕をピエール=シモン・ラプラスかなにかかと思っているのか?」
「……ごめん、わからない」
「フランスの天才数学者だ」
「へぇ……」
説明されても、やっぱりわからない。
俺の推理を披露するときがきたようだった。俺は咳ばらいをして、彼の真似をして指を1本立ててみせた。
「俺が思うに……縦だと思うんだよ」
「縦?」
「うん」
俺はノートを叩く。
図には星印が縦に並んでいる。
「1階はまぁいろいろあるけど、その、被害があったのが106、206、306だろ? 2階と3階は06の部屋しか被害がでていない。だから、次に被害がでるのは406だと思う」
「はぁ……」
気のない返事。俺は慌てて言葉を付け足す。
「あのさ、悪霊はどんどん、髪が長くなってきているんだよ」
「髪?」
「うん。はじめて視たときはショートヘアだったけど、いまでは腰の下まである。なんとなく、髪が長くなるほどどんどん被害も大きくなってきている気がするんだよ。次はもっと大きな被害になると思う……」
「そうだとして、君は僕になにをしてほしいんだ」
「俺の時と同じように、その日、住民が逃げておけばいいと思うんだ。だから、その。ええと」
「なんだ」
俺は覚悟を決めた。
「406号室の人に、言いに行ってくれないか? 悪霊がいるから逃げろって。その、安城が霊媒師だって設定で」
安城は眉を跳ね上げた。
「……他力本願にもほどがあるだろう」
俺は必死になって食い下がる。
「どうしてもだめか? 406号室には小さい子どももいるんだ」
「却下だ。僕には尊厳というものがある」
「霊媒師にも尊厳くらいあるだろ!」
「霊媒師に尊厳があったとして、霊媒師を騙る人間には尊厳などない!」
全力で拒絶されて、俺は呆然とした。良い案だと思ったのだが。
「じゃあ、見捨てるってこと……?」
「見捨てるもなにも、君の推理は破綻している」
「破綻?」
俺は首を傾げた。
俺は言う。
「被害はいまのところこれだけだ。なぁ、これ、絶対に悪霊がやっているよな?」
「……そう考えるのが妥当だな。悪霊はまだそのマンションにいるのか?」
「今朝は404号室の前にいた」
「なるほど」
「なにか、法則ある?」
期待を込めて彼を見つめるが、彼はノートから視線を動かさずに言う。
「……すぐには思いつかないな」
「安城でも、そんなことあるんだ」
「君は僕をピエール=シモン・ラプラスかなにかかと思っているのか?」
「……ごめん、わからない」
「フランスの天才数学者だ」
「へぇ……」
説明されても、やっぱりわからない。
俺の推理を披露するときがきたようだった。俺は咳ばらいをして、彼の真似をして指を1本立ててみせた。
「俺が思うに……縦だと思うんだよ」
「縦?」
「うん」
俺はノートを叩く。
図には星印が縦に並んでいる。
「1階はまぁいろいろあるけど、その、被害があったのが106、206、306だろ? 2階と3階は06の部屋しか被害がでていない。だから、次に被害がでるのは406だと思う」
「はぁ……」
気のない返事。俺は慌てて言葉を付け足す。
「あのさ、悪霊はどんどん、髪が長くなってきているんだよ」
「髪?」
「うん。はじめて視たときはショートヘアだったけど、いまでは腰の下まである。なんとなく、髪が長くなるほどどんどん被害も大きくなってきている気がするんだよ。次はもっと大きな被害になると思う……」
「そうだとして、君は僕になにをしてほしいんだ」
「俺の時と同じように、その日、住民が逃げておけばいいと思うんだ。だから、その。ええと」
「なんだ」
俺は覚悟を決めた。
「406号室の人に、言いに行ってくれないか? 悪霊がいるから逃げろって。その、安城が霊媒師だって設定で」
安城は眉を跳ね上げた。
「……他力本願にもほどがあるだろう」
俺は必死になって食い下がる。
「どうしてもだめか? 406号室には小さい子どももいるんだ」
「却下だ。僕には尊厳というものがある」
「霊媒師にも尊厳くらいあるだろ!」
「霊媒師に尊厳があったとして、霊媒師を騙る人間には尊厳などない!」
全力で拒絶されて、俺は呆然とした。良い案だと思ったのだが。
「じゃあ、見捨てるってこと……?」
「見捨てるもなにも、君の推理は破綻している」
「破綻?」
俺は首を傾げた。
