7月1日火曜日。
俺は目覚ましのアラーム音で目を覚ました。
スマートフォンの液晶には6時と表示されている。
これはいつもよりずっと遅い時間だ。
俺は布団の中で思わず頬をゆるめた。
俺の身に降りかかっていた奇異は解決には至らないが、ひとまず切羽詰まった状況からは脱した。
昨日はいつもの癖で早朝に起きて学校に行ってしまったが、もう今日からはゆっくりするつもりだった。
窓の外が明るい。
カーテンをあけると、日光がさしこんでくる。
体をぐっと伸ばすと、土曜日にあった体育祭で頑張り過ぎたせいか、まだ筋肉痛が残っていた。
体育祭が残したのは筋肉痛だけではない。
スマートフォンにはメッセージアプリの通知が届いていた。
陸人からだ。
メッセージアプリを開くと『おはよ~! 今日ちょっと遅刻する~‼』とある。
そう。俺はメッセージアプリに初めて友人を登録したのだ。
ゆるむ頬を叩いて、リビングに向かう。
うちは中学1年生の時に両親が離婚して以来、母子家庭となっている。
しかし母は今日も出張でいない。
朝食はいつもコンビニで買ったパンを適当に流し込むだけだ。
しかし、今日にあたたかい朝食を食べたいような気がした。
俺はトーストを焼いた。
ピーナッツバターを塗ってひと口かじる。
あたたかい食事は活力を与えてくれる。
――今日はいい1日になりそうだ。
俺が住んでいるのは都内の5階建てマンションの5階の西側の角部屋だ。
俺は生まれた時からここに住んでいる。
築40年とやや古いが、駅に近いのがいいところだ。
部屋を出ると、7月の夏の風が頬を撫でた。
俺は気合をいれて、階段をおりはじめる。
5月の半ばからエレベーターが絶賛故障中なのだ。
「暑い……」
たん、たん、たんとリズムよく階段をおりていると、それだけで汗がにじみ出てくる。
マンションの高いところに住むのがステータスだという人がいるが、それは嘘だと思う。
高層とは呼べない5階でさえエレベーターの故障ひとつでこんなに不便なのに、もっと上の階に住むだなんて信じられない。
4階で、一度足を止める。
嫌なものを視る。
俺はそれを視なかったふりをして再び階段を下る。
手の悪霊に怯えていたころはそれどころではなかったが、身が軽くなったいまは、やけにそれが気になりだす。
もんもんと考えながら3階に下りると、ベビーカーを運んでいる女性においついた。
彼女の足元には2歳くらいの子どももいる。
「おはようございます」
朝から気分がいいのも手伝って、柄にもない言葉が口から出た。
「て、手伝いましょうか」
女性は困ったように笑う。
「ほんとうに? それなら、この子と手をつないであげてくれない?」
子どもはうんと背を伸ばして母親にしがみつくようにしながら一歩ずつ階段を下りている。
「ほら、みいちゃん、お兄ちゃんと手をつないで」
俺はその子の手をとった。
それはあたたかくて、柔らかい。
俺は目覚ましのアラーム音で目を覚ました。
スマートフォンの液晶には6時と表示されている。
これはいつもよりずっと遅い時間だ。
俺は布団の中で思わず頬をゆるめた。
俺の身に降りかかっていた奇異は解決には至らないが、ひとまず切羽詰まった状況からは脱した。
昨日はいつもの癖で早朝に起きて学校に行ってしまったが、もう今日からはゆっくりするつもりだった。
窓の外が明るい。
カーテンをあけると、日光がさしこんでくる。
体をぐっと伸ばすと、土曜日にあった体育祭で頑張り過ぎたせいか、まだ筋肉痛が残っていた。
体育祭が残したのは筋肉痛だけではない。
スマートフォンにはメッセージアプリの通知が届いていた。
陸人からだ。
メッセージアプリを開くと『おはよ~! 今日ちょっと遅刻する~‼』とある。
そう。俺はメッセージアプリに初めて友人を登録したのだ。
ゆるむ頬を叩いて、リビングに向かう。
うちは中学1年生の時に両親が離婚して以来、母子家庭となっている。
しかし母は今日も出張でいない。
朝食はいつもコンビニで買ったパンを適当に流し込むだけだ。
しかし、今日にあたたかい朝食を食べたいような気がした。
俺はトーストを焼いた。
ピーナッツバターを塗ってひと口かじる。
あたたかい食事は活力を与えてくれる。
――今日はいい1日になりそうだ。
俺が住んでいるのは都内の5階建てマンションの5階の西側の角部屋だ。
俺は生まれた時からここに住んでいる。
築40年とやや古いが、駅に近いのがいいところだ。
部屋を出ると、7月の夏の風が頬を撫でた。
俺は気合をいれて、階段をおりはじめる。
5月の半ばからエレベーターが絶賛故障中なのだ。
「暑い……」
たん、たん、たんとリズムよく階段をおりていると、それだけで汗がにじみ出てくる。
マンションの高いところに住むのがステータスだという人がいるが、それは嘘だと思う。
高層とは呼べない5階でさえエレベーターの故障ひとつでこんなに不便なのに、もっと上の階に住むだなんて信じられない。
4階で、一度足を止める。
嫌なものを視る。
俺はそれを視なかったふりをして再び階段を下る。
手の悪霊に怯えていたころはそれどころではなかったが、身が軽くなったいまは、やけにそれが気になりだす。
もんもんと考えながら3階に下りると、ベビーカーを運んでいる女性においついた。
彼女の足元には2歳くらいの子どももいる。
「おはようございます」
朝から気分がいいのも手伝って、柄にもない言葉が口から出た。
「て、手伝いましょうか」
女性は困ったように笑う。
「ほんとうに? それなら、この子と手をつないであげてくれない?」
子どもはうんと背を伸ばして母親にしがみつくようにしながら一歩ずつ階段を下りている。
「ほら、みいちゃん、お兄ちゃんと手をつないで」
俺はその子の手をとった。
それはあたたかくて、柔らかい。
