口をあんぐりする彼に向けて、着物の袖をたくし上げ腕を見せた。
「ほら、まだ何ともない。まっ、これから症状が出るかもしれないけれど、触っちゃったんだから後悔したところでもう遅いじゃない? だったら動けるまであなたの事とことん看病するわよ!」
「そなたは馬鹿なのかっ!?」
「だって、お医者さんなんていないじゃない。なら、もがいてもどうしようもないでしょ? 私の場合風邪でも何でも気合いで乗り越えてきたんだし、貴方より体力あるわよ?」
「そういう問題じゃないっ!」
「それに、そこまで元気があるなら回復傾向にあるんじゃない? なら勝機はあるわ! 二人で一緒に頑張るわよ!」
一人で寂しくしてるより、誰かと一緒にいた方がいい。死の道しかなかったとしても、孤独を抱えて歩くよりよっぽどいい。
まぁ、彼はどうなのかは分からないけれど、私としては未練を抱えたまま死にたくないしね。
「っ……はぁ、そなたは相当な馬鹿だな……呆れを通り越して賞賛を贈りたいものだな……」
「それなら貴方にはご飯をお返しするわ!」
「……」
さ、まずは一口いきましょう? と彼の両脇を持ち上半身を抱き起した。身体が強張っていたけれど、呆れたのかため息を吐いていた。
粥をさじでひと掬いして彼の口元に持っていき、さぁ食べてとにこにことしていると、睨みつけていた彼はジト目に変わり、そして素直に口に入れてくれた。
「どう? 美味しい?」
「……マズい」
「えっ、マズい!? 味見はしたんだけれど……ごめんなさいっもう一回作り直して……」
ど、どうしよう、美味しくないもの食べさせちゃった……あ、じゃあ作りに行く前に水を……と立ち上がる前に、着物の袖を掴まれた。
「いい、寄こせ」
「えっ……ダメよっ! 病人なんだからちゃんとしたもの食べなきゃっ!!」
「味は悪くない。だから寄こせ」
マズいのに、味は悪くないの……?
「……お腹、壊すわよ?」
「寄こせ」
視線は横に流しているけれど、袖は全く離さず、むしろ引っ張ってくる。心なしか、耳が少し赤いような気もする。
……あぁ、なるほど。そういう事ね。
「……ふふ、はいどうぞ」
「煩い。黙ってろ」
なるほど、あまり素直じゃないって事ね。
さっきまでさっさと帰れ、って言ってたのに今は言わないのね、ふふっ。
