私は次の日もこの屋敷に足を運んだ。やっぱり鍵がかかってないから、ちょっと心配になっちゃうけれど……大丈夫かしら?
「食べられないものはない? ちゃんと食べなきゃ元気にならないわよ」
「いらないと言っているだろう。さっさと帰れ」
「わがまま言わないっ!」
「はぁ……」
とはいえ、全く聞く耳を持たず布団を深くかぶってはさっさと帰れの一点張りだ。いや、呆れているのかしら。でも、ご飯を食べなくちゃ元気にならないのは事実よね。
仕方ないわね……と、ここに来る前に持ってきたまだ温かい朝餉を前に出した。ふたを開け、ほらほらと手で仰ぐようにして香りを彼の方に向けた。布団を被ってはいるけれど、匂いが彼の鼻に向かってくれるかしら。
その時だった。
ぐぅぅ……
お腹の音が、聞こえてきた。さて、このお腹の音は誰のものか。
……私である。恥ずかしい……
「……ぷっ」
けれど、その後聞こえた。私は地獄耳だからよく聞き取れた。これは、彼が噴き出した声だ。
なぁんだ、笑えるんじゃない。さっきからずっと怖い顔して帰れの一点張りだったけれど、笑えるんじゃない。
私は強引に掛け布団をひっぺがした。「おいっ!」と文句を言われたけれど……
「一緒に食べましょう?」
「……帰って一人で食え」
「誰かと一緒に食べた方が美味しいでしょ? 貴方もお腹空いてない?」
「そなたと一緒にするな」
私が持つ掛け布団を掴み引っ張ってくるけれど、普通の成人男性より力がないのか中々取り返せない。病人なんだから仕方ないけれど。しょうがないな、とその手を取ろうとすれば、すぐに引っ込められた。
「……触るな」
「はいはい、触らないから。それよりも、ちゃんと食べた方がいいわよ。もし気力がないならお水にする?」
「このままずっといれば、そなたにまで移るぞ」
「え? 私体には自信あるけれど。風邪なんて数回しか引いた事ないし」
「そうじゃない」
風邪じゃない、としたら……何かの病気かしら。もしかして感染症? でもまだ私は何事もないし……
けれど、それでも放っておけない。彼が一人で苦しむよりずっといい。
「――【呪い】だ」
彼の睨みつけてくる瞳が、光った。
