大蛇の呪いと無能の花嫁


 すぐに部屋を出て、他の部屋をあたった。すると、ようやく見つけた水場。その近くに小さな桶を見つけた。水は……うん、飲んでみても大丈夫そう。すぐに水を汲んで急いだ。

 部屋に戻れば、彼はまだうなされていた。手ぬぐいで汗を拭き、額に手をやってみると……凄く熱い。けれど、濡らしタオルを頭の上に乗せた時、気が付いた。

 彼の頬に、黒いものがある。これは、刺青……? 縄のようなものが二本描かれ、それは首から身体の方まで伸びている。こんな刺青、見たことがない。いや、そもそもあまり刺青を見たことがない。確か、刺青って高貴な方達がするおしゃれなのではなかったかしら。

 すぐに熱くなってしまった濡れタオルをまた水で冷やし額に乗せた。だいぶ熱い……

 それにしても、この部屋……むわっとしていて居心地が悪いわね。畳の上には埃はないようだけれど、湿気がある。この屋敷自体が埃っぽいのよ。こんなんじゃ、治るものも治らないじゃない。

 すぐに立ち上がった私は……思いっきり障子を開いた。

 その途端、とてもいい風が入ってくる。やっぱり、換気はした方がいい。起きちゃうかしら、と思い彼の方に振り向くと……


「……誰だ」


 そんな声が聞こえてきた。少し低めの、男性の声だ。


「ごめんなさい、起こしちゃったかしら。苦しいところはない? お水を持ってこようか」


 そう聞きつつ駆け寄ったけれど、彼は答える代わりに目を見開き、そして睨みつけてきた。そうよね、起きたら知らない人が近くにいたのだから驚くわよね。

 でも、このままにはしておけないし……というところで、気が付いた。

 差し込んでくる陽の光で光る、彼の瞳。とても綺麗な、金色の瞳に。


「ぁ……えぇと、さっきそこら辺を散歩? していたらあなたの声が聞こえてきたの」

「……――去れ」


 彼の言葉に、一瞬(ひる)んだ。それは重く、何かを引き裂くような一言に感じたから。

 ここまで発熱をしていて苦しがり弱っていた彼からのその言葉に、恐ろしさを感じた。けれど、ここで去るなんて事出来るわけがない。


「……病人は黙って寝なさいっ」

「っ!?」