大蛇の呪いと無能の花嫁


 西洋文化が進んだ皇都は、ハイカラなもので溢れていた。後宮もそれを取り入れられたものがあるものの、側室である香耶殿に与えられた洋館と違って、私に与えられた住まいはそのまま。むしろ珍しいくらいの古風溢れる建物。

 香耶殿が何か言ったのか、それとも正妻はそれが決まりなのか。そこら辺の説明は欲しかったなぁ。

 とはいえ、使用人の一人もいないから私一人でここに住み、身の回りや建物の維持は私一人でこなさないといけない。

 異能が発現する10歳からずっと両親に放置された私は、周りの使用人達にすらいないものとされ、身の回りを全て自分一人でこなしてきた。もちろん、自室の掃除だってそう。自分のご飯も、布団の洗濯も全て。

 無視する使用人もいれば、私にちょっかいを出す侍女もいた。特に気にしなかったけれど、邪魔する人間がいないのは逆に楽かもしれない。

 それに、もし洋館で過ごすことになれば、一人では扱い方や掃除の仕方も分からず苦労したと思う。これはこれでありがたいわ。

 そんな事を思いつつ、私は手洗いで洗った着物や敷き布を力いっぱいに絞り外に持っていった。今日は天気がいいから洗濯日和ね。と、るんるんで外にある物干しに洗濯物をかけた。

 これは使用人がする仕事ではあるけれど、これは実家でしていた事でもあるから難しい事はない。何も困る事はないし、周りにブーブー言われながらだと気が散るからむしろこちらの方が楽ね。

 けれど、その時だった。いきなり強い風が吹いたかと思ったら、今から干すはずだった手ぬぐいが、手元から消えていた。

 ……待って!! うちに手ぬぐいは何枚かしかないのよ!? 待ってどこ行っちゃったの!?

 さっき吹いてきた風の過ぎた方向を見て走り出した。どこ行っちゃったの!?

 探せど探せど見つからない。たぶんこっちに飛んでいっちゃったと思うけれど……もしかして、屋敷の塀から出ちゃった!? こんなに強い風だったらそれもあり得るわよね……

 すぐに私は、この屋敷の門から出た。帝どころか秘書官にすら会ってもらえないんだもの、新しいものを買ってくださいと言ったところで話を聞いてくれるか分からない。

 私達は後宮から出ることを禁じられている。ただ嫁いだだけだというのに、これじゃあちょっと待遇の良い囚人みたいなものじゃない。

 内心帝に文句を言いつつ探していると、あった!

 屋敷を出て少し走った先にある、庭池にかけられた橋。その手すりに引っかかっていた。ちょっと間違えればいけに落ちていたかもしれない。本当に運が良かった。さ、帰って他の洗濯物を……

 その時だった。