けれど、気が付けばまた朧の膝に座らされてしまった。今日はずっとこのままなのかしら。それは、ちょっと恥ずかしい。
「文句は言わせぬぞ。ようやく、ようやく心配なく触れられたのだ。なら、とことん近くにいてもらうつもりだ」
「……心配しなくても、逃げないわよ」
「それでも」
長年一人で孤独にいたのだから、心細くいたくないのは分かるけれど……これは少しやりすぎな気もする。正妻だから許されるのだろうけれど、周りの目というものもあるわけだし……
でも、朧本人は離れるつもりは毛頭ないとでも言っているような顔だ。
そこまでして、人のぬくもりに触れていたいのかしら。それを思うと、強く言えなくなってしまう。
「それに、呪いに躊躇なく触れてしまうほどの馬鹿だからな。近くで見張っていないと何をやらかすか分からん」
「……知らなかったんだから、仕方ないでしょ」
「仕方ないで片づけられるものではないと言っているだろう。それすらも分からぬ阿呆なのだから、我がいなければとんでもない事になる可能性もある」
……それは、だいぶ過保護のような気がする。自分の妻ではあっても、普通そこまでするかしら。
それに……馬鹿や阿呆まで言う必要はないと思う。失礼よね。
これは、何を言っても折れないでしょうね……朧がそこまで頑固な人だってよく分かったわ。
そんな不服な気持ちも込めて、首に腕を回して抱きしめた。はぁ……とわざと深くため息を聞かせてやれば、くつくつと笑い声が聞こえてくる。これは、からかわれているのでは……?
「そこまで構ってほしいのか。見た目によらず寂しがり屋とは知らなかったな。覚えておこう」
「……それは朧の方ではないの?」
「さぁ?」
その後、私達は永晋秘書官の案内の元別室に移動した。そこにあったのは……溢れんばかりの女ものの服。
上等な着物や、何となく見たことのある、洋風の服。ここから、明日給与行われる事になった宴会に着る服を決めるらしい。
「これが、ハイカラ……」
「これがいいか?」
「い、いや、多分、落ち着かないから……」
「そうか?」
「……」
全くもってよく分からず、着物にしてもらうよう説得した。
どれも上等なものだから落ち着かないでしょうし、これ以上に着慣れない洋服にしてしまったら……恐ろしい事になりそう。
「そうだな……我はセンスというものがよく分からないからな。流行なんてものは全く知らぬ。なら、好きなものを選べ」
「と、言われましても……」
その時、私の世話係となってくれたらしい侍女さんがお手伝いをしてくれた。そして、最終的にはとても綺麗な紅色の着物に決まった。朧のは? と聞いたけれど「どれでもいい」という一言で終わってしまった。私のはあんなに時間をかけたのに、いいのだろうか。

