大蛇の呪いと無能の花嫁


「それ、光の異能ではないぞ。最初に決めつけたのはどこの阿呆だ?」

「……」


 決めつけ……最初に発現させた時は、確かその場にお父様や他の使用人達がいたはず。けれど、今の帝の口ぶりでは……もしかして間違っていた、という事?

 もし間違っていたとしたら、ならどんな異能なのかしら……?


「その淡い青色の光は、治癒する際に発散する光だ」

「……ん?」


 私は、耳を疑った。そして、失礼ではあるけれど帝も疑った。

 ち、治癒……? 治癒って、治療する方の、治癒でいいのかしら?

 治癒の異能だなんて、稀ではなかったかしら……?


「確かそなたは風邪を引かないと言っていたな? 治癒の異能なんて持っていれば引かないに決まってるだろ! あっはっはっはっはっ!」

「……」


 た、確かに、そうでしょうけれど……本当に、治癒の異能なの……?

 というより、早く笑い止んでくださいませんか……?


「我は運がいいな。いや、これは運命と言ったところか? 少し骨は折れるが、相手が治癒の異能を持つそなたであれば話は簡単。手を貸せ」

「えっ」


 帝は、私が出す前に両手を掴み引き寄せた。少し骨が折れるが、というところが気になったけれど、帝の霊力が体中から溢れ出ている事に気が付いた。


「霊力は我ので十分だ。安心しろ。……――我の源を糧とし、奥底に根を生やす毒を消し去れ……【解呪】」


 言霊は、一つの単語よりいくつも並べた言葉の方が霊力を多く必要とする。単語をいくつも重ねる事になるからだ。

 今、帝が重ねたいくつもの単語の数を見るに、私が持つ霊力より倍以上の量が必要とされる事だろう。けれど、大蛇の呪いを受けたものは霊力を多く持つと聞いた。それならば、この言霊は帝にとって難しい事ではないのだと思う。

 ……けれど、これは体調が万全な時の話。

 体調不良な彼には無理をする事になるのでは……と思った時には、遅かった。

 周りに小さな光の玉が現れ、パチパチとはじけては消えていく。そして、長年帝を(むしば)んでいた呪いの証、蛇の痣が、光り出した。


「やはりそうか!」


 そして、光が収まると、帝に巻き付いていた痣が……消えてしまっていた。

 一体これは……? と混乱していると、帝は勢いよく立ち上がり着物を脱ぎだしてしまった。

 ……え?


「全部消えたか! さすが希少な治癒の異能だ! 琳! 感謝してもしきれ、な……」

「……」

「へぇ、琳、どうした?」


 勢い良く、帝から背を向け、両手で顔を覆ってしまった。いきなり、脱がないで……


「ぷっ、くくっ、耳まで赤いな。さては、風邪でも引いたか?」

「……」


 顔を覆っていても、帝が近くでしゃがみこんできたのはよく分かる。声からも、これは馬鹿にされているのが分かる。

 お願いですから、服を着てください……


「ありがとう、琳」

「っっっ!?」


 いきなり、体中が温かくなった。これは、抱きしめられてしまった……? それを理解すると、身体が強張り、頭は真っ白になってしまった。どうしよう、どうしよう、どうしよう。頭から火が噴きそうになっていたけれど……違和感に気が付いた。

 あれ? だんだん、頭が揺れる感覚が……


「琳? ……琳っ!!」


 全身の力が抜けてしまい、そして、私は意識を手放してしまった。