大蛇の呪いと無能の花嫁


 この皇国を収める帝は、(おおやけ)に顔を出す事もせず、妻として迎えられた私達と会う事すら拒み口出しなどしない。正妻である私と帝の婚儀ですから、あらかじめ文書に署名し姿を現さなかったのだから。

 香耶殿は側室であるため、婚儀をしないのが決まり。だから余計、進言しようと何度も何度も願い出ても許可が下りず、私に八つ当たりをしている。実に分かりやすい人だ。


「ちんけな異能しか使えないくせに。そもそもあなたは九条家の汚点! 私とこうして面と向かって話す事すらおこがましいのよ!」

「五家の一族の血を受け継いでるにもかかわらず相伝の異能すら使えないだなんて、ここにいること自体おこがましいのですわ!」


 一体これはいつまで続くのやら。早く朝餉が食べたいところではあるのだけれど……と思いつついつも付き合ってあげている。本当は言い返したいところではあるけれど相手が相手だから素直に聞く事しか出来ない。

 ようやく癇癪(かんしゃく)を起こした子供が落ち着き、勝ち誇ったような表情で捨て言葉を吐き帰っていった。


「……はぁ、このままじゃ風邪引くじゃない……」


 とりあえず、湯浴みをしましょうか。この住まいの水道がお湯が出て良かった。あの香耶殿の事だから住まいのガスを止めてしまうのではと予測していたけれど、意外だったかも。

 彼女はここ都を守護する五家の一つ、序列二位である伊集院家の生まれであり、一族相伝の《水の異能》を持ち、こうして水を操ることが出来る。それに代わって私の実家は五家の一つであっても序列五位であり、私自身は一族相伝の《風の異能》を持って生まれてこなかった。

 持っているとしたらただ光を発散させるだけの《光の異能》。明かりを(とも)すだけの役に立たない異能である。電気やろうそくを使えばいいだけの話なのだから。

 だから余計腹が立つのでしょうね。こんなやつが正妻で、自分が側室だという事が。

 とはいえ、これを変更する事は難しいし私にも出来ない事。だから、無駄な八つ当たりを私にするのは実に迷惑極まりない。

 香耶殿は私の実家である九条家の汚点と言っていたけれど、別に待遇なんて今の生活と同じようなものよね。といっても、この住まいには私以外一人もいない。痛い視線が毎日毎日刺され息苦しかった生活よりよっぽどいい。

 それに、ずっと水浴びだったから湯浴みが出来て嬉しいわ。

 さてと、では湯浴みね。今着ている着物を絞り、湯浴みに急いだ。