大蛇の呪いと無能の花嫁

 けれど、私としては何も気にしていない。それよりも……


「うっ……ぐぅっ……」

「朧っ!?」


 看病宣言をしてからたびたび、朧は熱を出し苦しくする事があった。少しすれば収まるけれど、だいぶ苦しそうにしているし、熱だってすごく高い。だから、私はそばで汗を拭き、熱を下げるように濡れタオルを額に乗せてあげる事しか出来ない。

 けれど、何度も思った。これは日常茶飯事と彼は言っていたけれど……それを、異能が発現した10歳の頃からずっと一人で耐えてきた。

 ここには誰も来ないわけではないのだと部屋周りを見れば分かるけれど、私がここに来てからは一度も会った事がないし、朧本人に聞いても何も言わない。だけど、一人寂しくここに閉じこもっていた事だけは分かる。


「ごめんね、朧」


 その言葉の意味は、私にも分からない。代わってやりたいと思っても出来るわけではない。とはいえ、呪いの痣に触ってしまった私にもその運命が待っている事は分かっている。

 手をぎゅっと握れば、彼はいつものように「触るな」と手を払う事すら出来ず、むしろ強く握り返してくる。とても、手が熱い。

 だから、他の事にかまけてる暇なんてどこにもないわ。


「ごめ……なさぃ……はは、うぇ……」


 そんな時に彼がこぼした、その言葉。彼のお母上に対する謝罪。一体どんな意味の謝罪なのか分からないけれど……呪いを身に受けた彼だから、きっと悲しいものなのだと思う。

 他人に呪いを移したくない。その言葉を私に言った時の彼は、一瞬とても悲しげに見えた。これは、呪いに関する謝罪なのかな……

 せめて少しでも、彼にのしかかる重みを減らせてあげられたらいいのに。なんて思ってしまった。もうすでに外は真っ暗。部屋は電気が通っていないから暗く、私の異能で少し明かりを灯している。

 私に出来る事なんて、明かりを灯す事しか出来ないけれど……せめて、少しでも彼の心が明るくなりますように。その意味を込めて、光の玉を増やして部屋を明るくした。