「そなたは粥しか作れないのか」
「病人なんだから文句言わないのっ! 胃に優しい食事が大切だって知らないの?」
「我は病人ではないと何度も言っているだろう」
「はいはい、食欲があって安心したわ」
病人には粥が一番。ではあるんだけれど……本音は、家に米が沢山ある。
最近、私の住まいに届く食材の中に、大量の米が敷き詰められていた。あとは、野菜ばかり。だから米が余ってるのよね……通りで重いと思った、と呆れてしまったけれど。
きっとこれは、香耶殿が何か言ったのだと思う。私は九条家の令嬢、そして使用人は一人もいない。だから、米を食べるのは難しいのではとでも思ったのかしら。鍋さえあれば食べられるのだからこちらは助かるけれど、でもやっぱり朧には他の栄養も取ってもらいたい。
抗議に、なんて言えないのよね……帝はもちろんの事、帝に仕える秘書官にすら会わせてもらえない。いわば、放置同然。
ここに嫁いだ際、私の住まいに案内してくれたのがその秘書官。その時言われた事はよく覚えている。
『決して、香耶様を刺激しないでいただきたい』
……と。
私は一応正妻。それでも、秘書官が側室に気を遣えなんて言ってくる。それだけ、政治は複雑だという事なのだろうけれど……それならば香耶殿を正妻にしてしまえばよかったのでは? という疑問を持ってしまう。
私の結婚だって、婚約を省かれるくらい、だいぶ急なものだった。いきなり話が舞い込んできて、しかも結納金も普通以上にたんまり貰ったらしいし。
それに、もう一つ疑問がある。どうして、九条家の汚点である私が選ばれたのだろう。私には一族相伝の異能を持ち優秀である妹がいる。
五家の序列一位の嫡男である婚約者はいるものの、相手はこの国を治める帝。あの両親の性格からしたら、婚約を断ってでも妹を嫁がせたと思う。
両親は、嫁いだ娘には正妻という名を張り付け後宮に閉じ込め放置する事を知っていた……? うん、ありそう。
ん~、色々と事情があるものね。結婚って。
