「またか……本当に好きよね、いびりってやつ?」
私の空けた木箱の中身は、異臭のする虫で溢れていた。すぐに閉めたけれど。
ここ皇国の都に位置する帝のお住まい、皇都御所。本宮と後宮に分かれており、本宮の後ろに構える後宮に住む私が、こんな待遇を受けてもいいのかしら。
周りに侍女はおらず掃除に洗濯に食事にといった仕事を放棄され、毎日毎日素敵なプレゼントをいただく日々。……毎日私が食べる食材が使用人によって届くのだけれど、同じ木箱だから何が入っているか分からない。だから開けなくてはいけないから難問ね。
……数日前に帝と夫婦の契りを交わした正妻である私、琳の食事がこれでいいとは、思えないのだが。
さらには……
「ただの下劣な人間がここ後宮に住まわせてもらってるんだもの、私に感謝する事ね!!」
朝っぱらから彼女はわざわざ私の住まいに来ては、そう言いつつ私に異能で作り上げた水を頭上から落とした。父親が急ぎであつらえた上等な着物が一瞬にしてずぶ濡れになってしまった。
私に感謝? ここ後宮で、側室である貴方より正妻の私の方が身分が上のような気がするのだけれど。貴方も住むここ後宮の主は一応私のはず。まぁ、彼女の実家が私の実家より序列が上の一族だから威張るのは分かるけれど。
「このドブネズミより香耶様の方がよっぽど帝の隣に立つに相応しいですわ!」
「そうですわ! 卑怯な手を使って正妻の座を奪っただなんて、人として恥ずかしくないのかしら!」
……卑劣な手を使えば奪えるくらい、その正妻の座は安いものである。今の彼女達の言葉はこう返せると分かっているのかしら。
彼女に味方をする彼女達、この後宮の侍女達は、間違ってもこう言えない。「帝に進言し、考え直してもらった方がいい」と。
