<side斗希>
国王さまからの祝福を受け、僕たちは広い謁見の間に二人だけになった。
さっきまでは緊張していたけれど、二人になるとホッとする。
しんと静まり返った部屋の中で、僕はふぅと小さく息を吐いた。
「……今のって、夢じゃないんですよね?」
なんだか白昼夢を見たような、不思議な感覚がする。
「夢じゃないよ。私は正式に夫夫になることを認められたんだ。これで、もう何も心配はいらない」
エリアスさんはそう言って僕を抱きしめる。
その腕の力がいつもより少し強く感じるのがなんだか嬉しい。
不思議だ。
ほんの少し前まで張り詰めていた胸の奥が、すっと軽くなっていく。
怖いとか、緊張するとか、そんな感情が全て消え去って、心がほどけたみたいだった。
「トキ……」
優しい声で名前を呼ばれてそっと見上げた。
すぐ近くにエリアスさんの顔が見えて安心する。
「トキの気持ちを知ることができて嬉しかった」
本当に嬉しそうに言われて、胸がいっぱいになる。
「僕も、エリアスさんの気持ちを知れたから……。これからもずっと、僕のそばにいてください」
ドキドキしながら告げる。
エリアスさんはほんの少し目を細めて、僕の額にそっと口付けた。
「どうして、おでこに?」
「口が良かったか?」
そう言われて少し照れる
でも、唇でエリアスさんの熱を感じたかった。
「口が、良いです……」
正直に気持ちを告げると、ほんの一瞬エリアスさんの動きが止まった。
「くっ」と苦しげな声をあげ、僕の唇にそっと重ねた。
あまりにも一瞬で、離れていくエリアスさんの唇を見つめてしまう。
その気持ちがエリアスさんにも伝わったようだ。
「トキの唇を味わったら、このまま押し倒したくなってしまう。ここでは無理だろう?」
「あっ……」
あまりにも正直な彼の言葉にどきっとする。
「帰ろう。私たちの家に」
そういうが早いか、エリアスさんはサッと僕を抱きかかえて広間を出た。
足音がやけに大きく聞こえる。それほど焦って家に帰ろうとしてくれている。
それは僕を求めてくれている現れ。
緊張感が伝わってくるけれど、それでも安心できた。
だって、エリアスさんが一緒だから……
城を出ると、外の空気は少しひんやりとしていた。
でも高い空は、僕の心のように晴れやかだった。
すでに用意されていた馬車に、僕は抱きかかえられたまま乗り込んだ。
中に入ると、すぐに扉が閉められる。すぐに外の音が聞こえなくなった。
ここはエリアスさんと二人っきり。
その瞬間、ふっと力が抜けてエリアスさんの胸に顔を埋めた。
「疲れさせてしまったな」
僕は首を横にふる。
「行って良かったです。エリアスさんと夫夫になれたから……」
「トキ……」
背中を撫でる手が、優しい、
彼の温もりが服越しに伝わってくる。
「これからは私の夫だ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥までじんわりと温かくなった。
「……はい」
小さく返事をし、そっと顔を上げた。
「トキ……愛してる」
彼の目にはうっすらと涙が見える。
僕は、自らそっと顔を近づけて唇を重ねた。
それは、これから先を約束するみたいな、そんな静かなキスだった。
<sideクラウス>
旦那様とトキ様が王城に行かれてから、なんと時間が経つのが遅いことか。
トキ様に何かあった時のために、ロジェリオ様にも屋敷で待機していただいているが、廊下を行ったり来たりしている私を見て、ロジェリオ様に何度も落ち着くように言われてしまった。
だが、どうしても落ち着かない。
なんせ、トキ様がこの屋敷を出られるのは初めてのことなのだから。
ああ、神よ。
どうかトキ様をお守りください。
ご帰宅後にすぐにベッドでお休みになられるように準備は整っている。だが、それ以外の仕事が手につかない。
ロジェリオ様にはすっかり呆れられているだろう。
それでも私は、トキ様のご無事を祈り続けた。
それからどれほど時間が経っただろう。
馬車の音が聞こえて、玄関に飛び出した。
馬車が止まってすぐに扉を開ける。
「おか――」
声をかけようとした途端、旦那様がすごい形相でトキ様を抱きかかえて馬車から降りてこられた。
「すぐに寝室に入る。声をかけるまで決して部屋に立ち入るな」
低く、重苦しい声でそう告げると、私の返事も聞かぬまま急いで階段を駆け上がられた。私は一人、玄関に残され、茫然と立ち尽くすしかなかった。
国王さまからの祝福を受け、僕たちは広い謁見の間に二人だけになった。
さっきまでは緊張していたけれど、二人になるとホッとする。
しんと静まり返った部屋の中で、僕はふぅと小さく息を吐いた。
「……今のって、夢じゃないんですよね?」
なんだか白昼夢を見たような、不思議な感覚がする。
「夢じゃないよ。私は正式に夫夫になることを認められたんだ。これで、もう何も心配はいらない」
エリアスさんはそう言って僕を抱きしめる。
その腕の力がいつもより少し強く感じるのがなんだか嬉しい。
不思議だ。
ほんの少し前まで張り詰めていた胸の奥が、すっと軽くなっていく。
怖いとか、緊張するとか、そんな感情が全て消え去って、心がほどけたみたいだった。
「トキ……」
優しい声で名前を呼ばれてそっと見上げた。
すぐ近くにエリアスさんの顔が見えて安心する。
「トキの気持ちを知ることができて嬉しかった」
本当に嬉しそうに言われて、胸がいっぱいになる。
「僕も、エリアスさんの気持ちを知れたから……。これからもずっと、僕のそばにいてください」
ドキドキしながら告げる。
エリアスさんはほんの少し目を細めて、僕の額にそっと口付けた。
「どうして、おでこに?」
「口が良かったか?」
そう言われて少し照れる
でも、唇でエリアスさんの熱を感じたかった。
「口が、良いです……」
正直に気持ちを告げると、ほんの一瞬エリアスさんの動きが止まった。
「くっ」と苦しげな声をあげ、僕の唇にそっと重ねた。
あまりにも一瞬で、離れていくエリアスさんの唇を見つめてしまう。
その気持ちがエリアスさんにも伝わったようだ。
「トキの唇を味わったら、このまま押し倒したくなってしまう。ここでは無理だろう?」
「あっ……」
あまりにも正直な彼の言葉にどきっとする。
「帰ろう。私たちの家に」
そういうが早いか、エリアスさんはサッと僕を抱きかかえて広間を出た。
足音がやけに大きく聞こえる。それほど焦って家に帰ろうとしてくれている。
それは僕を求めてくれている現れ。
緊張感が伝わってくるけれど、それでも安心できた。
だって、エリアスさんが一緒だから……
城を出ると、外の空気は少しひんやりとしていた。
でも高い空は、僕の心のように晴れやかだった。
すでに用意されていた馬車に、僕は抱きかかえられたまま乗り込んだ。
中に入ると、すぐに扉が閉められる。すぐに外の音が聞こえなくなった。
ここはエリアスさんと二人っきり。
その瞬間、ふっと力が抜けてエリアスさんの胸に顔を埋めた。
「疲れさせてしまったな」
僕は首を横にふる。
「行って良かったです。エリアスさんと夫夫になれたから……」
「トキ……」
背中を撫でる手が、優しい、
彼の温もりが服越しに伝わってくる。
「これからは私の夫だ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥までじんわりと温かくなった。
「……はい」
小さく返事をし、そっと顔を上げた。
「トキ……愛してる」
彼の目にはうっすらと涙が見える。
僕は、自らそっと顔を近づけて唇を重ねた。
それは、これから先を約束するみたいな、そんな静かなキスだった。
<sideクラウス>
旦那様とトキ様が王城に行かれてから、なんと時間が経つのが遅いことか。
トキ様に何かあった時のために、ロジェリオ様にも屋敷で待機していただいているが、廊下を行ったり来たりしている私を見て、ロジェリオ様に何度も落ち着くように言われてしまった。
だが、どうしても落ち着かない。
なんせ、トキ様がこの屋敷を出られるのは初めてのことなのだから。
ああ、神よ。
どうかトキ様をお守りください。
ご帰宅後にすぐにベッドでお休みになられるように準備は整っている。だが、それ以外の仕事が手につかない。
ロジェリオ様にはすっかり呆れられているだろう。
それでも私は、トキ様のご無事を祈り続けた。
それからどれほど時間が経っただろう。
馬車の音が聞こえて、玄関に飛び出した。
馬車が止まってすぐに扉を開ける。
「おか――」
声をかけようとした途端、旦那様がすごい形相でトキ様を抱きかかえて馬車から降りてこられた。
「すぐに寝室に入る。声をかけるまで決して部屋に立ち入るな」
低く、重苦しい声でそう告げると、私の返事も聞かぬまま急いで階段を駆け上がられた。私は一人、玄関に残され、茫然と立ち尽くすしかなかった。


