異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

それは、エリアスさんに依存している。
愛情じゃない。

そう言われたら、困ってしまう。
だって、エリアスさんに依存していることは事実だから。

でも、エリアスさんが隣にいてくれる安心感は、他の人では決して得られない。
たとえ目の前にいる国王さまが隣にいても、僕が心から安心する場所を得ることはできない。

僕が自然な僕でいられるのは、やっぱりエリアスさんの隣だけ。

僕がエリアスさんの夫となることで、ずっとエリアスさんのそばにいられる。
それで、いつか離れるかもしれないという不安が消えるのなら、僕はエリアスさんの夫になりたい。

エリアスさんは心から僕を思ってくれているのに、こんな気持ちでオッケーしていいのか、そんな申し訳なさもある。

そっとエリアスさんを見上げる。
彼の表情は少し緊張しているようにも、不安そうにも見える。
でも、何も言わない。
ただ、静かに僕の答えを待ってくれている。

もし、僕が夫になることを拒んでも、受け入れるつもりなんだろう。
そして、自分の気持ちを抑えながらも、僕が望む限りそばにいようとしてくれるだろう。

それがエリアスさんの表情から感じ取れた。

今はまだ夫とか夫夫についてよくわかっていないけれど、エリアスさんと離れたくないと改めて思う。だから、その思いを伝えたい。

「……エリアス、さん……」

名前を呼ぶだけで、胸がいっぱいになる。
でも、ちゃんと言わなきゃ。

「僕……エリアスさんと、夫夫になりたいです。だから――」

震える声で必死に告げた瞬間、僕はエリアスさんに強く抱きしめられた。

「ありがとう。ありがとう……トキ。嬉しいよ」

僕以上に震える声でそう告げるエリアスさんの声を聞きながら、僕は彼の安心する匂いに包まれていた。


<sideエリアス>

陛下の提案には驚いた。

まさか、トキをご自分の養子にした上で私と夫夫にさせようなどと仰るとは思っていなかった。だが、王子がトキにしたあの酷い仕打ちに心を痛めていらっしゃったのだろう。だからこそ、トキがこれから先、この国で安心して過ごせるようにお考えくださったのだ。

トキが陛下の養子となり、陛下が後ろ盾となればもう二度と怖い思いをすることはない。あの王子はすでに陛下の手から離れ、トキと会うこともない。

それならば、トキはこれから先、私の隣で心穏やかに過ごせるだろう。

陛下が義父となることは些か戸惑いはあるが、たいした問題ではない。
私にとっては全く異存のない提案だ。すぐに了承したが、それは私だけの気持ち。

トキには寝耳に水の話で、まだ考えも及ばないだろう。
だが、私の気持ちだけを伝えておきたかった。

その上でトキの気持ちが固まるまでいつまででも待とう。
たとえ、それでトキが私と夫夫になることを断ったとしても、それは受け入れよう。
私はトキ以上に愛せる者はいないし、これからも出てこない。
だから、断られてもトキのそばで変わらぬ愛情を注ぐことを誓う。

トキは不安げに私を見たが、私は目を逸らすことはしない。
それが私のトキへの強い思いの表れだから。

すると時は意を決したように、震える声で私の名を呼んだ。

そして――

僕……エリアスさんと、夫夫になりたいです。

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
トキの声は震えていたが、私の耳にはしっかりと届いた。
陛下の存在も一緒で意識の外に押し出されるほどに、トキの声だけが私の中を占領した。

トキに選ばれた。

そう理解するまで時間が必要だったが、理解するより先に身体が動いていた。
腕に力を込め、離したくなくて強く抱きしめる。

服越しにトキの早い鼓動が聞こえる、
だが、それ以上に私の鼓動も騒がしかった。

トキの気持ちが整うまで待とう。
それだけでなく、断られる覚悟もしていたが、本当は怖くてたまらなかったのだ。

「ありがとう。ありがとう……トキ」

情けないが、声が震えて止まらない。
トキの小さな手がそっと私の背中に回る。

その温もりに、救われる。
私は守るだけでなく、トキからも守られていたのだ。

私たちは、やはり離れてはいけない。

私たちの未来には、お互いが必要なのだと改めてわかる。

ああ……トキをこの腕に抱けて幸せだ。

「良い答えだったな、公爵」

陛下の低い声に、ここが陛下の御前だったことを思い出す。
それほど私にはトキしか見えていなかったようだ。

「エリアス・ランチェスター」

名を呼ばれて、私は姿勢を正す。
もちろん、トキを抱く腕だけは離さなかった。

「そして、トキ殿」

陛下の視線は、この上なく穏やかで優しい。

「汝らの意思、確かに受け取った」

陛下のよく通る声が広間に響く。

「これよりトキ殿を我が養子として迎える。そして、エリアス・ランチェスターの夫として降嫁させることを王として正式に宣言する」

一拍おいて、陛下は続けた。

「この婚姻は、誰にも侵されぬ。二人が選び、二人が望んだ結果だ」

その言葉に、私とトキは顔を見合わせて微笑み合い二人で深く頭を下げた。

「ありがたきお言葉、身に余る光栄に存じます。一生離れず、愛し合うことをここに誓います」

陛下からの祝福に、しっかりと誓いを告げる。
陛下はほんのわずかに口元を緩めた。

「トキ殿」

再び名を呼ばれ、腕の中のトキが小さく身動ぐがそこに不安は見えない。

「幸せになるのだぞ」

その一言に、トキは満面の笑みで答えた。

「はい。国王さま。ありがとうございます」

トキのその笑顔に、陛下がほんのり頬を染めたように見えたが、これは見て見ぬふりをしておいた。
陛下は満足そうにゆっくりと謁見の間を出ていかれ、大きな広間に私とトキだけが残った。