異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

「エリアスさん。やっぱり熱いですか?」

必死に耐えようとする私を見て、トキが声をかけてくる。
興奮を抑えている私の表情を見て、心配してくれているのだ。
こんなにも清らかで優しいトキに対して、邪な気持ちを抱くなど失礼なことをしているのは重々承知だ。しかし、愛しい相手と裸で抱き合えば、こうなってしまうのも当然だろう。ただ、相手がトキだから当然というのが通らないだけだ。

「大丈夫だ。気にしないでいい。それより、トキはあったまっているか?」

なんとか私の話題から、トキの話題に変えようと試みる。

「すっごく気持ちがいいです。いつもエリアスさんにお風呂に入れてもらっていたけれど、やっぱり一緒に入るほうが楽しいですね」

その言葉に、少し引っ掛かりを覚えて尋ねてみた。

「トキは、その……以前いた世界で、誰かと一緒に入っていたのか?」

「うーん」

悩み始めてドキドキする。もしや、当然のように入っていたというのではあるまいな? その世界によって常識も異なることはわかっている。
だが、愛しいトキの肌が大勢の目に晒されていたのかと思うと、なんともいえない感情が込み上げる。

「物心ついてからはないですね。大学から住み始めたアパートはシャワールームだけついてたので、そこで一人で入ってました。だからエリアスさんに初めて入れてもらった時は、少し恥ずかしかったです。だけど、ずっとお世話してもらっているので恥ずかしい気持ちは、今はないですね。今はこうしておしゃべりしながら入れるのが嬉しいです」

「そう、なのか……」

トキが誰とも入っていなかったことに安堵する。
だが、この美しい肌を見たのが私だけなのだとわかった途端、一気に興奮が増してくる。

「エリアスさんは、クラウスさんに洗ってもらったりしてたんですか?」

「えっ? クラウス?」

突然、クラウスの名前が出てきて興奮していた気持ちが一気に萎えていくのがわかる。

「だって、執事さんって着替えとかお風呂とか手伝うものじゃないんですか?」

「それは、トキのいた世界の執事の仕事か?」

「えっ? えっと……家には執事さんはいなかったのでわからないですけど、そういう話を聞いたことがあるくらいで……」

「なるほど。そうなのか。だが、我が家の場合はそれは当てはまらぬな。私もトキと同じく物心ついた頃、おそらく三つの時には一人で風呂に入っていた。着替えの手伝いをしてもらうことはあるが、裸は見せないからクラウスも見たことはないだろうな」

それぞれの家庭によって異なるだろうが、我がランチェスター家ではこれが常識だ。

「それじゃあ、エリアスさんが人前で裸になったのは今日が初めて、ですか?」

「ああ、そうなるな」

「そっか、だからちょっと戸惑ってたんですね。ごめんなさい、僕知らなくて……。一緒に入ろうなんて誘って嫌だったんじゃないですか?」

トキが申し訳なさそうに顔を項垂れる。
私が戸惑ったのはトキのせいではないのに。
ただ私が堪え性がないだけだ。

「いや。それは違う」

「でも……」

「本当に違うんだ。言っただろう? 私はトキを好きなのだ、と。好きな相手に風呂に誘われたら照れてしまうのもわかってくれるだろう?」

私の言葉にトキはハッとした表情を見せた。
トキが私がそばにいて安心すると言ってくれたのは家族愛だったのかもしれない。
けれど、今、ほんのりと頬を染めたトキには間違いなく、私に対して少なからず恋愛感情が見える。

「あの、僕……」

トキは何かを言いかけながら身体を倒し、私に身を預けてきた。

「ト、トキッ!」

慌てて引き離そうとしたが、その前にトキの身体にアレが触れてしまった。

「エリアスさん、これ……」

驚いて身体を離したトキが目を丸くして問いかけてくるのが、アノことだとわかっている。

「……申し訳ない。堪えきれなかった……」

トキに自分の欲望を気付かれて恥ずかしさでいっぱいになる。
が、どうすることもできない。

「本当に、僕のこと……好き、なんですね」

「それはもちろん! 嘘なんて吐くはずが無い」

正直に告げると、トキは嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

<side斗希>

僕が一緒に入ろうなんて誘ったから戸惑わせてしまったのかもしれない。

映画や小説の貴族の人がしてもらっているように、てっきりエリアスさんもお風呂のお世話を執事のクラウスさんや他のメイドさんたちにしてもらっているとばかり思っていた。

誰にも裸を見せないように過ごしてきたから、僕をお風呂に入れてくれる時もずっと服を着ていたんだと気づいた。
それを僕が誘ったから優しいエリアスさんは断れなかったんだろう。

申し訳なくて謝ると、エリアスさんはそれは違うといってくれた。

「好きな相手に風呂に誘われたら照れてしまうのもわかってくれるだろう?」

そう言われてハッとした。
そうだ。エリアスさんは僕のことを好きなんだ……

あの時、僕はまだ自分の気持ちがわからないといった。だけど、照れて戸惑ってしまうくらい僕のことが好きだと言われたら、嬉しさが込み上げてくる。

どうしてだろう……

僕にとってエリアスさんが特別な存在であることは間違いない。
そのエリアスさんが僕を特別だと思ってくれるのが嬉しいからなのかもしれない。

エリアスさんの思いが嬉しくて抱きつくと、お腹に何かが触れた。
僕の知っているものでこんな形状のものといえば棍棒だけど、そんなものを持ってお風呂に入るわけがない。
場所的にもしかして、アレ?

ミルク色の入浴剤を入れているから直に見ることができないから定かではないけれど、もしアレだとしたら僕のとどれだけ大きさが違うだろう。
三倍? 五倍?
いずれにしても想像つかないほどの大きさだ。

びっくりして、これが本当にアレなのか聞きたかったけれど、エリアスさんが申し訳ない、堪えきれないと告げるのをみるとそれ以上は聞けなかった。

湯船の中でこっそり触れてみる。
すると、エリアスさんの切羽詰まったような声が聞こえた途端、湯船からピューッと何かが噴き出し、僕の顔にかかった。

「うわっ。トキ! 申し訳ない。すぐに洗おう!」

エリアスさんが慌てて僕を抱っこしたまま立ち上がった。エリアスさんの顔が一気に青ざめているのが見える。

その間に頬を伝って、蜜が僕の口に触れた。
なんとなく舌でぺろっと舐めとると、驚くほど甘くて驚いた。

「うわ、美味しい!」
「なっ――」

笑顔になってしまった僕の目の前でエリアスさんが目を丸くしている。

「トキ……な、めたの、か……?」

「はい。でもすごく甘くて美味しいですよ」

正直に答えると、エリアスさんはぎゅっと僕を抱きしめた。

「トキ……私を好きになってくれたんだな……」

「それって、どういう意味、ですか……?」

「好きな相手の場合だけ、甘く感じられると言われているんだ」

「そう、なんですか……?」

それがここの世界だからなのか、僕がいた世界でもそうだったのかはわからない。
今となってはそれを調べる方法もないけれど、僕がエリアスさんを好きだというのは本当のことらしい。

好きだとか嫌いだとか自分の感情がわからなかったけれど、本能がそう理解していたってことなのかな
……

「僕、エリアスさんが好き、なんですね。だからこんなに安心するんだ……」

ようやく自分の気持ちが腑に落ちた気がした。