異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

<side斗希>

エリアスさんじゃない声が聞こえて、僕は怖くてたまらなかった。
必死にベルを押したけれど、エリアスさんはお城にいる。
すぐに来られないとわかっている。

ここから逃げ出したいけれど、身体がいうことを聞かない。
目を瞑って耳を押さえて現実から逃げるしかできない。

怖い、怖い。

抑えようとしても身体の震えが止まらなかった。

すると、僕の耳に飛び込んできたのはエリアスさんの声。
僕の名前を呼んでくれたのがかすかに聞こえた。
間違えるわけがない。目を開けてその声がするほうを見た。

「……え、りあす、さん……」

恐怖で声が上擦ったままだ。
エリアスさんはすぐに僕のところに来てくれて、強く抱きしめてくれる。

「もう大丈夫だ。怖がらせて申し訳ない」

その言葉だけで胸の奥に溜まっていた不安が一気にほどけた。
来てくれただけでそれで十分だ。だから謝らないでほしい。

安心したら途端に目の前が暗くなっていく。
意識を失いそうだ。

エリアスさんはそれに気づいて僕を休ませようとするけれど、今は離れたくない。

わがままだと言われても今はどうしても離れたくなかった。

エリアスさんはいやがることなく、上着を脱ぎ捨てさらに僕を強く抱きしめてくれる。急いで帰ってきてくれたんだろう。
いつもよりもずっとエリアスさんの匂いが濃い。

汗の匂いかな。でもすごく落ち着く。

この匂いに包まれているとどんどん安心してくる。
さっき感じた恐怖も薄らいでいく。

ああ、エリアスさんが来てくれて本当によかった。


ふと頬に何かが当たる感触がして、目を覚ました。
気づかない間に眠ってしまっていたみたいだ。
目を覚ましてエリアスさんが隣にいてくれることにホッとする。

「大丈夫。もう怖くないよ」

そう言われて、眠る前のあの恐怖を少し思い出して怖かった。
でもエリアスさんが助けに来てくれたとき、すごく安心したのをよく覚えている。

「私がずっとトキを守るよ」

その言葉が僕を落ち着かせてくれる。
エリアスさんを見上げると、ゆっくりとエリアスさんの顔が近づいてくる。
そして、ゆっくりと唇が重なった。

えっ……これって、キス……?

まさか、僕がエリアスさんとキスなんて……

男同士なのに。
でもこの国では普通のことなのかもしれない。

何より、僕は全然嫌じゃない。
むしろ、重なった唇からエリアスさんの温もりが伝わってきて、心に少し残っていた恐怖心も全て消え去っていった気がした。

「え、りあすさん……あの、」

「突然口づけをして、トキを戸惑わせてしまっているな。申し訳ない。だが、どうしても伝えたかったんだ……私の気持ちを」

「えりあす、さんの……きもち?」

「私がこれほど必死に守りたいと思うのはトキだけだ。ずっとそばにいて、トキを安心させてやりたい」

エリアスさんの言葉を聞いても、すぐに返事ができなかった。
胸の奥がじんわりと熱くなって、なんと返せばいいのかわからない。

「……ど、うして……?」

やっと絞り出した言葉は、自分でも驚くほど小さかった。

エリアスさんはすぐには答えず、僕の顔をじっと見つめてからそっと額を寄せてくる。
その距離はものすごく近いのに、全く怖いとは思わなかった。

「理由が必要か?」

低く落ち着いた声がすぐ近くで響く。
それにどきっとさせられる。

「トキが怯えていると、胸が締め付けられる。……だから、そばにいたい。それだけだ」

エリアスさんの言葉が心に刺さる。
それだけ……というけれど、僕にはそれがすごく重要なことに感じられた。

「……ぼくは、まだ……よく、わからない……」

それが正直な気持ち。
今までこんな気持ちになったことがないから、わからないんだ。

それでも……

「でも……エリアスさんが、そばにいてくれるのは、すごく、安心する」

そういうと、エリアスさんの表情が和らいだ気がした。

「それで十分だ」

今度は唇じゃなく、額にエリアスさんの唇が当てられる。
触れられた場所がじんわりと温かく感じる。

「今はそれでいい。トキが私を必要としてくれるだけで。ただ、私がトキを好きだということだけはわかっていてほしい」

真剣な目で見つめられて、僕は頷いた。
そのままエリアスさんの胸に身体を委ねると、エリアスさんの鼓動が伝わってくる。
今の僕には、何の怖さもなかった。