スーッと扉が開き、男が顔を覗かせる。
「ひぃっ……!」
その顔を見て、身体の震えが止まらない。
「あっ、やっ……っ」
怖い、怖い。
どうしてあの人がここに?
声をあげたいけれど、怖くて声が出ない。
そんな僕を見てニヤリと笑みを浮かべながら、男が部屋の中に入ってきた。
「ここにいたのか。お前はしぶといな。あのままあそこで死んでしまえばよかったのに」
そう言いながらコツコツと近づいてくる。
「お前には、生きる価値なんてないんだ」
男が僕に向かって両腕を伸ばした瞬間、
「いやぁぁぁーーーっ!」
と大きな声が出た。
「助けてーっ! エリアスさん!!」
そう叫んだ瞬間、自分の身体が大きなものに包まれたことに気がついた。
「いやだ、いやだ、離して!」
そこから必死に抜け出そうと手足をばたつかせる。
「トキ、大丈夫。私だ。エリアスだ。落ち着いて」
背中まで腕が回り、胸に押し当てられるように強く抱きしめられる。
ふわっと安心する匂いがした。
「あっ……」
エリアスさんだ……
大きな手が僕の背中を優しく撫でる。
それでもまだ少し怖くて恐る恐る目を開けて見上げると、そこにはエリアスさんがいた。
「え、りあ、すさん……」
ホッとして一気に体の力が抜ける。
「トキ!」
エリアスさんの心配する声が聞こえたけれど、僕はもう目を開ける力もなかった。
<sideエリアス>
応接室にはロジェリオと必死にメモをとるロドリゴの姿があった。
「待たせたな」
ロドリゴは私の声にさっと立ち上がり、帽子を取って深々と頭を下げる。
「旦那様。トキ様のお口に合わない料理を作ってしまい申し訳ございません」
ブルブルと身体を震わせ、謝罪の言葉を述べる。
「ロドリゴ。頭を上げろ。私はお前に文句を言いたいわけではない。トキはお前のスープを喜んでいた」
「えっ……」
目を丸くしてロドリゴが顔を上げる。
「トキは我々とは違う。食事が口に合わなくて当然だ。これから少しずつトキの好みをわかってもらえたらいい」
「旦那様……」
ロドリゴは恐らく暇を出されるかもしれないと覚悟していたのだろう。
だがそんなことするはずがない。
「ただ、気になるのは先ほどの食事に出していた羽兎のローストにかけていたフルーツソースだ。私も味見をしたが、普段より少し甘みが強いくらいで、特段問題はなかったが、トキはあれを辛いと言ったんだ」
「えっ?」
私の言葉にロドリゴよりもロジェリオの反応が大きかった。
「辛いと、仰ったのでございますか?」
「ああ。口に入れただけで飲み込むこともできず私が口から取り出した。うがいをさせたが赤く腫れていたようだったな」
トキの様子を説明すると、ロジェリオはしばらく考え込む仕草をしたと思ったら、慌てたように大きな声をあげた。
「旦那様。すぐにトキ様の元にお戻りください。もしかしたら幻覚症状が現れているやもしれません」
「幻覚、だと?」
「はい。危険です。すぐにお戻りください!」
その勢いの強さに押されるように私は応接室を飛び出した。
廊下をかけ、階段を駆け上る。
ようやく部屋の前に到着すると扉を開けた途端、トキの悲鳴が聞こえた。
急いで寝室に入ると、トキは錯乱したように私の名前を呼んで助けを求めていた。
トキをこんなにも怖がらせてしまったことを後悔しつつ、落ち着かせるためにトキを抱きしめた。だが、まだ私だと気づいていないようでて足をばたつかせ暴れている。
小さな背中を撫で耳元で私だと告げると、安心したように落ち着いたがそのまま意識を失った。
「トキ!」
声をかけたが、腕もだらんとしたまま身動き一つしない。
このまま死んでしまうのではという恐怖でいっぱいになり、私はトキを抱きしめ、ベッド脇に置いていたベルを思いっきり鳴らした。
「ひぃっ……!」
その顔を見て、身体の震えが止まらない。
「あっ、やっ……っ」
怖い、怖い。
どうしてあの人がここに?
声をあげたいけれど、怖くて声が出ない。
そんな僕を見てニヤリと笑みを浮かべながら、男が部屋の中に入ってきた。
「ここにいたのか。お前はしぶといな。あのままあそこで死んでしまえばよかったのに」
そう言いながらコツコツと近づいてくる。
「お前には、生きる価値なんてないんだ」
男が僕に向かって両腕を伸ばした瞬間、
「いやぁぁぁーーーっ!」
と大きな声が出た。
「助けてーっ! エリアスさん!!」
そう叫んだ瞬間、自分の身体が大きなものに包まれたことに気がついた。
「いやだ、いやだ、離して!」
そこから必死に抜け出そうと手足をばたつかせる。
「トキ、大丈夫。私だ。エリアスだ。落ち着いて」
背中まで腕が回り、胸に押し当てられるように強く抱きしめられる。
ふわっと安心する匂いがした。
「あっ……」
エリアスさんだ……
大きな手が僕の背中を優しく撫でる。
それでもまだ少し怖くて恐る恐る目を開けて見上げると、そこにはエリアスさんがいた。
「え、りあ、すさん……」
ホッとして一気に体の力が抜ける。
「トキ!」
エリアスさんの心配する声が聞こえたけれど、僕はもう目を開ける力もなかった。
<sideエリアス>
応接室にはロジェリオと必死にメモをとるロドリゴの姿があった。
「待たせたな」
ロドリゴは私の声にさっと立ち上がり、帽子を取って深々と頭を下げる。
「旦那様。トキ様のお口に合わない料理を作ってしまい申し訳ございません」
ブルブルと身体を震わせ、謝罪の言葉を述べる。
「ロドリゴ。頭を上げろ。私はお前に文句を言いたいわけではない。トキはお前のスープを喜んでいた」
「えっ……」
目を丸くしてロドリゴが顔を上げる。
「トキは我々とは違う。食事が口に合わなくて当然だ。これから少しずつトキの好みをわかってもらえたらいい」
「旦那様……」
ロドリゴは恐らく暇を出されるかもしれないと覚悟していたのだろう。
だがそんなことするはずがない。
「ただ、気になるのは先ほどの食事に出していた羽兎のローストにかけていたフルーツソースだ。私も味見をしたが、普段より少し甘みが強いくらいで、特段問題はなかったが、トキはあれを辛いと言ったんだ」
「えっ?」
私の言葉にロドリゴよりもロジェリオの反応が大きかった。
「辛いと、仰ったのでございますか?」
「ああ。口に入れただけで飲み込むこともできず私が口から取り出した。うがいをさせたが赤く腫れていたようだったな」
トキの様子を説明すると、ロジェリオはしばらく考え込む仕草をしたと思ったら、慌てたように大きな声をあげた。
「旦那様。すぐにトキ様の元にお戻りください。もしかしたら幻覚症状が現れているやもしれません」
「幻覚、だと?」
「はい。危険です。すぐにお戻りください!」
その勢いの強さに押されるように私は応接室を飛び出した。
廊下をかけ、階段を駆け上る。
ようやく部屋の前に到着すると扉を開けた途端、トキの悲鳴が聞こえた。
急いで寝室に入ると、トキは錯乱したように私の名前を呼んで助けを求めていた。
トキをこんなにも怖がらせてしまったことを後悔しつつ、落ち着かせるためにトキを抱きしめた。だが、まだ私だと気づいていないようでて足をばたつかせ暴れている。
小さな背中を撫で耳元で私だと告げると、安心したように落ち着いたがそのまま意識を失った。
「トキ!」
声をかけたが、腕もだらんとしたまま身動き一つしない。
このまま死んでしまうのではという恐怖でいっぱいになり、私はトキを抱きしめ、ベッド脇に置いていたベルを思いっきり鳴らした。


