異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

<side斗希>

パタンと扉がしまって、部屋に一人になる。
途端に心細さが襲ってくる。頑張ると言ったばかりなのに何も頑張れてない。

真っ暗でもない。
檻に閉じ込められているわけでもない。
柔らかな寝心地のいいベッドに横になっているだけなのに、不安でたまらなくなる。
エリアスさんが隣にいて、話をしていた時は全く思わなかった感情だ。

それだけあの時間が、僕のトラウマになっているんだろう。
エリアスさんのところにいれば大丈夫。
頭ではわかっているけれど、どうしても恐怖が拭えない。
身体が震えてきて、エリアスさんから渡された上着を抱きしめる。

ふわっとあの優しい匂いがして少し恐怖が落ち着いた気がした。
やっぱりエリアスさんの匂いがホッとするんだ。
それでも早く戻ってきてほしいと思ってしまう。

一人はやっぱりまだ怖い。

「ひぃっ!」

扉が開く音が聞こえてびっくりして声が出た。

「トキ? 大丈夫か?」

僕が急に声を出したからだろう。
心配そうな顔で駆け寄ってきてくれた。

「……えり、あすさん。ごめんなさい……ぼく……」

申し訳なさすぎて涙が出る。

「いいんだ。トキは悪くない。一人にしてすまなかった」

僕の隣にスッと身体を滑り込ませて、大きな身体で抱きしめてくれる。

「震えているな。怖かったか?」

「一人が、怖くて……」

「そうか。わかった。これからは絶対に一人にはしない。約束する」

その言葉がものすごく僕を安心させてくれた。

「どうだ? 落ち着いたようなら風呂場に案内するが……」

しばらく抱きしめていてくれたおかげで身体の震えは止まっていた。

「は、はい。大丈夫です」

「それじゃあ行こうか」

エリアスさんはさっと布団を捲り、僕を抱きかかえてスッと立ち上がった。

「あの、僕……歩けますよ、多分」

身体に傷はない。足に痛みもない。だから大丈夫だと思ったけれど、彼は静かに首を横に振った。

「まだ無理をしないほうがいい。医師の見立てではしばらくは安静に、ということだった」

お医者さんがそういうのなら守るべきなんだろうな。

「あの、じゃあ……お願いします」

僕の返事に彼は笑顔を見せると、扉を開けた。
するとそこには広々とした部屋が続いていた。

「えっ? まだ部屋?」

「ここは二間続きなのだよ」

「あ、じゃあエリアスさんのお部屋は?」

「私の部屋は隣だ。トキが良ければ、風呂から戻ったら私の部屋で休むといい」

「えっ? でも……」

「一人にはさせないと約束しただろう? 私の部屋にいれば、ずっと一緒にいられる」

確かにそう約束してくれたけど……いいのかな?

「邪魔じゃないですか?」

「邪魔だなんて思うはずがない。トキは何も心配しないでいい」

そうはっきりと言ってくれたらもう何も言えなかった。

「さあ、風呂に入ろう」

部屋を出て広い廊下を突き進む。
突き当たりの扉を開けると、広々とした脱衣所が現れた。

あの磨りガラスの向こうにお風呂があるらしい。

「少し辛いだろうが、ここに座っていてくれ」

そういうと、エリアスさんは腕まくりをし、ズボンも膝ほどに捲り上げた。
そして準備が整ったとばかりに僕に近づいてくる。

エリアスさんの指が僕の服を脱がそうとしていることに気づいて、ようやくわかった。

「あ、あの……僕、一人で脱げます」

「何も心配はしないでいいと言っただろう? トキは気を遣わずとも良い」

「は、はい……」

実際のところ、ずっと横になっていたからか、こうして座っているだけでも辛い。
腕を上げるのもやっとだ。

だからエリアスさんが手伝ってくれるのはありがたい。
でもやっぱり人前で裸になるのは恥ずかしい。

服が脱がされていくたびに、僕の顔が赤くなっていく。
エリアスさんはそれに気づいたんだろう。

「恥じらう必要はない。私はもうすでに一度トキを風呂に入れている。何も心配することはないよ」

そうか。そういえば、そう言ってたな。

意識がある時とない時じゃ天と地ほど感情も違う。けれど、それでも見られていることに違いはない。それに同じ男同士だ。気にすることじゃないな。

「そうですね。お願いします」

覚悟が決まってそう告げると、エリアスさんは笑顔で裸の僕を抱き上げた。

そうしてお風呂場の扉を開けた。

「えっ、す、すごい……っ」

中には広々とした浴槽があり、まるで銭湯みたいだ。

「こんな広いお風呂に、いつも一人で入ってるんですか?」

「そうだな。のんびりとくつろぎながら身体を休めるにはぴったりだろう。先に髪と身体を洗おう」

洗い場には椅子と目の前に大きな鏡がある。
これもまた銭湯みたいだ。

エリアスさんは僕を抱きかかえたまま椅子に座り、目の前のボトルを手に取った。