「働く? トキが?」
「はい。だって、何もせずにお世話になるなんて申し訳ないですから」
さらりとそんなことをいうトキに驚きしかない。
フィリグランは守るべき存在で決して働かせたりはしない。
これまでそうしてきたはずだ。
だが、トキは今までのフィリグランとは違うようだ。
トキの清らかな目を見ていると、働きたいと言っていることが本心だとよくわかる。
まだどんな仕事をやらせるかは考えなければならないが、できるだけトキの願いは叶えてやりたいと思う。
「トキの気持ちはよくわかった。とにかく今は身体を治すことだけを考えていればいい。わかったか?」
私の言葉にトキは素直に頷いた。
それにしてもこんな子どもが働きたいだなんて……
トキがいた世界ではそれが普通だったのだろうか?
そうでなければ働くなんて言葉はあんなにも簡単には出てこないだろう。
「トキ……つかぬことを聞くが、そなたは幾つだ?」
見た目は十は超えているかどうか、と言った様子だが、トキの言葉遣いや思慮深いところを考えれば十二歳くらいにはなっているかもしれない。
「僕……二十歳です」
「はっ? 今、なんと?」
あまりにも想像とかけ離れた言葉が聞こえてきて、思わず大きな声をあげてしまった。ピクッと身体を震わせるトキを抱きしめて謝罪する。
「悪い。驚かせるつもりではなかったが、その……二十歳というのは本当なのか?」
「は、はい。先日、誕生日を迎えて二十歳に……何か、おかしかったですか?」
私が驚いていることに違和感を感じているようだ。
もしかしたら、二十歳というのは、トキのいた世界では我々の十歳くらいの感覚なのか?
気になって確かめてみたが、数の数え方はここと変わらないようだ。
つまり、トキは二十歳。成人しているということだ。
あの時、風呂場で見たトキの裸は赤子のように清らかで、性的なものはなにも知らないというように輝いて見えた。それがフィリグランだと言えばそうなのだろうが、それならば尚更早く髪も身体も綺麗にしてあげたい。
「いや、何もおかしくはない。とても……その、若く見えただけだ」
成人しているトキにさすがに子供に見えたとは言いづらくてそう言ったのだが、トキは私の言葉に納得しているようだった。
どうやらあちらでも子どもに見えていたようだ。
やはりトキはあちらでも特別な存在だったのだとわかる。
「トキ。身体に負担がかからないように注意しながらになるが、トキを風呂に入れたいと思っている。どうだろう? 温かい湯船に入れば身体も少しは楽になると思うのだが」
「えっ! お風呂、あるんですか?」
「ああ。どうだ?」
「入りたいです! 髪も身体もずっと気持ち悪くて……」
一応湯で流したが、やはり繊細な身体を持つフィリグランには耐え難いことだったのかもしれない。
「それではすぐに用意しよう。少しだけ一人で待っていられるか?」
その問いかけに、トキは少し考えていたが、小さな声で「頑張ります」と言った。
それだけ私と離れることを不安に感じてくれているのだ。
「これをしばらく抱いていてくれ」
私はさっと上着を脱ぎ、トキに渡した。
彼はそれを抱きしめると、安心したように笑顔を見せた。
それだけで私の心は興奮と喜びでいっぱいになっていた。
急いで寝室を出てベルを鳴らす。
すぐにクラウスがやってきた。
「旦那様。お呼びでございますか?」
「彼の名がわかった。トキだ。これからはトキ様と呼ぶように」
「と、き……様。おお……っ、やはりあのお方は……」
「ああ。髪色も瞳の色も、そして名前まで……フィリグランに間違いない」
トキの名前を聞いて、クラウスはその場に崩れ落ちたが、そうしている暇はない。
「トキが風呂に入りたいと言っている。ゆっくりさせたいから大浴場に入る。五分で準備をしろ」
「承知いたしました」
「それから、トキは私以外の者を怖がっている。五分後に部屋を出るから、誰もトキの前に現れるな。それはしっかりと伝えておくんだ」
「承知いたしました」
クラウスは頭を下げるとすぐに部屋を出ていった。
これでトキを風呂に入れてやれる。
さて、一緒に入るか、トキだけを入れるか……
悩むところだな。
「はい。だって、何もせずにお世話になるなんて申し訳ないですから」
さらりとそんなことをいうトキに驚きしかない。
フィリグランは守るべき存在で決して働かせたりはしない。
これまでそうしてきたはずだ。
だが、トキは今までのフィリグランとは違うようだ。
トキの清らかな目を見ていると、働きたいと言っていることが本心だとよくわかる。
まだどんな仕事をやらせるかは考えなければならないが、できるだけトキの願いは叶えてやりたいと思う。
「トキの気持ちはよくわかった。とにかく今は身体を治すことだけを考えていればいい。わかったか?」
私の言葉にトキは素直に頷いた。
それにしてもこんな子どもが働きたいだなんて……
トキがいた世界ではそれが普通だったのだろうか?
そうでなければ働くなんて言葉はあんなにも簡単には出てこないだろう。
「トキ……つかぬことを聞くが、そなたは幾つだ?」
見た目は十は超えているかどうか、と言った様子だが、トキの言葉遣いや思慮深いところを考えれば十二歳くらいにはなっているかもしれない。
「僕……二十歳です」
「はっ? 今、なんと?」
あまりにも想像とかけ離れた言葉が聞こえてきて、思わず大きな声をあげてしまった。ピクッと身体を震わせるトキを抱きしめて謝罪する。
「悪い。驚かせるつもりではなかったが、その……二十歳というのは本当なのか?」
「は、はい。先日、誕生日を迎えて二十歳に……何か、おかしかったですか?」
私が驚いていることに違和感を感じているようだ。
もしかしたら、二十歳というのは、トキのいた世界では我々の十歳くらいの感覚なのか?
気になって確かめてみたが、数の数え方はここと変わらないようだ。
つまり、トキは二十歳。成人しているということだ。
あの時、風呂場で見たトキの裸は赤子のように清らかで、性的なものはなにも知らないというように輝いて見えた。それがフィリグランだと言えばそうなのだろうが、それならば尚更早く髪も身体も綺麗にしてあげたい。
「いや、何もおかしくはない。とても……その、若く見えただけだ」
成人しているトキにさすがに子供に見えたとは言いづらくてそう言ったのだが、トキは私の言葉に納得しているようだった。
どうやらあちらでも子どもに見えていたようだ。
やはりトキはあちらでも特別な存在だったのだとわかる。
「トキ。身体に負担がかからないように注意しながらになるが、トキを風呂に入れたいと思っている。どうだろう? 温かい湯船に入れば身体も少しは楽になると思うのだが」
「えっ! お風呂、あるんですか?」
「ああ。どうだ?」
「入りたいです! 髪も身体もずっと気持ち悪くて……」
一応湯で流したが、やはり繊細な身体を持つフィリグランには耐え難いことだったのかもしれない。
「それではすぐに用意しよう。少しだけ一人で待っていられるか?」
その問いかけに、トキは少し考えていたが、小さな声で「頑張ります」と言った。
それだけ私と離れることを不安に感じてくれているのだ。
「これをしばらく抱いていてくれ」
私はさっと上着を脱ぎ、トキに渡した。
彼はそれを抱きしめると、安心したように笑顔を見せた。
それだけで私の心は興奮と喜びでいっぱいになっていた。
急いで寝室を出てベルを鳴らす。
すぐにクラウスがやってきた。
「旦那様。お呼びでございますか?」
「彼の名がわかった。トキだ。これからはトキ様と呼ぶように」
「と、き……様。おお……っ、やはりあのお方は……」
「ああ。髪色も瞳の色も、そして名前まで……フィリグランに間違いない」
トキの名前を聞いて、クラウスはその場に崩れ落ちたが、そうしている暇はない。
「トキが風呂に入りたいと言っている。ゆっくりさせたいから大浴場に入る。五分で準備をしろ」
「承知いたしました」
「それから、トキは私以外の者を怖がっている。五分後に部屋を出るから、誰もトキの前に現れるな。それはしっかりと伝えておくんだ」
「承知いたしました」
クラウスは頭を下げるとすぐに部屋を出ていった。
これでトキを風呂に入れてやれる。
さて、一緒に入るか、トキだけを入れるか……
悩むところだな。


