翼の目がぱちくりしている。周囲のクラスメートは、みんな僕に視線を突き刺す。
一気に注目の的だな。なにも良くない。
揺さぶられた翼は目を見開いていたが、そのまなざしは三峰先輩じゃない。どこまでも竹岡翼だ。
「おれに名前をもらって喜んで、おれに名前をくれて嬉しそうに呼んでたじゃないか……それも覚えてないの……?」
翼の手が、僕の手に重なる。どこまでも人間の体温に満ちてて気持ち悪い。
「……浪川くん」
教室の静まり返った空気が、苦しい。どよめきが広がって、クラスメートたちは僕と翼を引き離した。
「落ち着けよ、浪川」
「翼くん、大丈夫?」
青葉が心配そうに、僕を見つめてくる。
「翼につっかかるなんて、お前らしくないぞ。どうしたんだよ? 勉強とかしんどい?」
「ちがう……」
「それに、翼とのイベントも覚えてないって薄情だなー」
「ちがう……ほんとに知らないんだって……!」
「写真見たじゃん。それに俺も、イベント終わったあとにほっとしてへたり込んでたの見たし。お疲れ様って翼がポカリ差し出してくれてたよ」
青葉から、翼とのエピソードを聞かされる。僕の中には、存在しない記憶だ。
それでも、僕はあきらめきれない。中身が竹岡翼でも、そこにいるのは間違いなく三峰魁だ。
「翼……覚えてないの!? おれに名前をつけたじゃないか! ミカって名前、忘れちゃったのかよ!」
僕は祈るような気持ちで、翼に問う。
翼の、光の宿らぬ黒い目が、またぱちくりした。数秒の、妙な間があった。もしかしたら、思い出してくれたのかもしれない。僕はそう、一縷の望みをかけた。
頼むよ、魁無。あんたがつけてくれた、おれの名前を思い出してくれよ。
顔もわからない神様に、でたらめに祈った。
翼は僕の手に触れて微笑むと、くすっと笑う。
「ペットにつけた名前かな? きみの家の猫さんの名付け親になったっけ」
僕の目の前が、真っ暗になった。
一気に注目の的だな。なにも良くない。
揺さぶられた翼は目を見開いていたが、そのまなざしは三峰先輩じゃない。どこまでも竹岡翼だ。
「おれに名前をもらって喜んで、おれに名前をくれて嬉しそうに呼んでたじゃないか……それも覚えてないの……?」
翼の手が、僕の手に重なる。どこまでも人間の体温に満ちてて気持ち悪い。
「……浪川くん」
教室の静まり返った空気が、苦しい。どよめきが広がって、クラスメートたちは僕と翼を引き離した。
「落ち着けよ、浪川」
「翼くん、大丈夫?」
青葉が心配そうに、僕を見つめてくる。
「翼につっかかるなんて、お前らしくないぞ。どうしたんだよ? 勉強とかしんどい?」
「ちがう……」
「それに、翼とのイベントも覚えてないって薄情だなー」
「ちがう……ほんとに知らないんだって……!」
「写真見たじゃん。それに俺も、イベント終わったあとにほっとしてへたり込んでたの見たし。お疲れ様って翼がポカリ差し出してくれてたよ」
青葉から、翼とのエピソードを聞かされる。僕の中には、存在しない記憶だ。
それでも、僕はあきらめきれない。中身が竹岡翼でも、そこにいるのは間違いなく三峰魁だ。
「翼……覚えてないの!? おれに名前をつけたじゃないか! ミカって名前、忘れちゃったのかよ!」
僕は祈るような気持ちで、翼に問う。
翼の、光の宿らぬ黒い目が、またぱちくりした。数秒の、妙な間があった。もしかしたら、思い出してくれたのかもしれない。僕はそう、一縷の望みをかけた。
頼むよ、魁無。あんたがつけてくれた、おれの名前を思い出してくれよ。
顔もわからない神様に、でたらめに祈った。
翼は僕の手に触れて微笑むと、くすっと笑う。
「ペットにつけた名前かな? きみの家の猫さんの名付け親になったっけ」
僕の目の前が、真っ暗になった。
