カイナのことは、ミカにしか見抜けない

 休み時間は少し教室を出て、先輩にメッセージを送る。
『具合はどうですか?』
 真っ先に既読がついた。返信はない。
(見てくれてるんだし、問題はないか)
『新しい情報を手に入れました』
 秒で既読がついた。そして返信もくれた。
『どんな情報』
『うちのクラスに、生徒が戻ってくるって。
 竹岡翼っていってました』
 また秒既読。
『ほかには』
『僕は竹岡翼と仲が良かったそうです』
 既読。返信はない。
『先輩は、竹岡翼を知ってますか』
『知らない』
 二限目のチャイムが鳴った。僕は慌てて教室に戻る。
 二限が終わって休み時間、僕は先輩にメッセージを送ろうとしてスマホを開いて、通知の多さに驚いた。
『いま授業か?』
『新しい情報はあるか?』
『写真とノートを読んだ』
『二限はいつおわる?』
『まだか?』
 ずらっと、先輩のひと言メッセージが並ぶ。
『いま終わりました。遅くなってすみません』
 また秒既読。
『てか、体調悪いんでしょ。既読スルーでいいですよ』
『いやだ』
 嫌なのかよ。
『授業中には手がかりナシです。またあとで』
『ならほかのことを』
『他って例えば?』
『おもしろい話』
『すみません、持ちネタないんで』
『いま考えろ』
『もう休み時間終わるんですけど』
『やだ』
 何がやなんだ、この人は。
『じゃあ姉の話』
『なんで姉ちゃん?
 もしかして姉ちゃんのこと気になるの?』
『大いに。
 べつに、恋人になりたいわけじゃない』
 だったら、なんで姉の話を聞きたがるんだろう?
『姉は、おれの自慢の姉弟です』
『ほかには』
『ありません』
『おい』
 僕は既読無視して、授業に戻った。
 休み時間にスマホを見たら、鬼のような通知が来ていた。どんだけ姉ちゃんの話聞きたいんだよ。
 三限、四限と授業は続く。先生の眠くなる話を聞いて気づいたが、先生も竹岡翼の登校を心待ちにしているようだ。授業の話の端々で、竹岡翼という生徒のことを案じている言葉が見つかる。
 僕も先輩も知らないということは、竹岡翼は異物だということだ。
 でも、それは完全なる架空の人間なのか、それとも本当にいる人だったのか。
 僕にはわからない。