「ほんとに大丈夫か?」
授業が終わって昼休み。僕は昇降口前自販機に戻ってきてしまった。
食欲もない。何かを食べたい気も失せた僕に、青葉がりんごジュースを奢ってくれた。
「平気……寝不足気味なだけだからさ」
「んなこと言っても、今日倒れたじゃん。保健室で寝て少しは良くなったかなーと思ったけど……やっぱ今日も保健室行きなよ」
「あーうん……どうしよう……」
白銀の蝶と蜘蛛のうわさを受け入れ、名もしらない【あいつ】とやらの記憶を持つ青葉を、それでも僕は友達だと思っている。
「入学式ん時、初めて話しかけたときも元気なかったし、もしかしてもとから体弱い?」
「ううん。そん時はたぶん、緊張でドキドキしてただけだと思う」
「そっか。……でも、ほんとに無理すんなよ? 授業のこととか部活のこととか気にしなくていいし。俺がノート取っといてやるし、お前んとこの部長には俺から言っとくし」
青葉が僕を、心から案じてくれているのがわかる。僕が悩んでいても無理やり聞き出そうとしないし、こちらから話すのを待ってくれる人だ。高校に入学したてで、環境ががらっと変わったせいで体調を悪くしていた僕に、最初に声をかけてくれた青葉は、今でも僕の具合の悪さに一番に気づいてくれる。
僕の周囲が現実と常識をすっ飛ばして激変しても、青葉の気遣いは失われない。それがどれだけ僕の救いになってくれていることだろう?
「……ありがとう、青葉」
「いいってことよ。何なら課題も丸写ししても良いし!」
「そりゃバレちゃうって」
僕は苦笑して、自販機に小銭を入れた。コーヒー牛乳のボタンを押して、落ちてきたコーヒー牛乳を青葉に差し出す。きょとんと首を傾げる青葉に、「僕からの奢り」と答えた。
「いいの?」
「良いよ。話を聞いてくれたお礼。青葉のアドバイス通り、無理しないようにする」
「ように、じゃなくて、無理しない、をちゃーんと実行しないとだめだぞ。あと飯は食え?」
「売店で栄養ゼリー買ってくるよ。それより、青葉は良いの? 先輩とミーティングあるんじゃない?」
「やべ、忘れてた~」
気づいた青葉は、コーヒー牛乳を巾着のなかに大切にしまって、早歩きで先輩の待つ教室へと戻っていった。僕は彼の背中に向けて、ひらひらとさりげなく手を振った。
僕はふうっと息を吐き、まだにぎわっている売店に向かおうとした。
「浪川君」
背後で、三峰先輩の声がした。
授業が終わって昼休み。僕は昇降口前自販機に戻ってきてしまった。
食欲もない。何かを食べたい気も失せた僕に、青葉がりんごジュースを奢ってくれた。
「平気……寝不足気味なだけだからさ」
「んなこと言っても、今日倒れたじゃん。保健室で寝て少しは良くなったかなーと思ったけど……やっぱ今日も保健室行きなよ」
「あーうん……どうしよう……」
白銀の蝶と蜘蛛のうわさを受け入れ、名もしらない【あいつ】とやらの記憶を持つ青葉を、それでも僕は友達だと思っている。
「入学式ん時、初めて話しかけたときも元気なかったし、もしかしてもとから体弱い?」
「ううん。そん時はたぶん、緊張でドキドキしてただけだと思う」
「そっか。……でも、ほんとに無理すんなよ? 授業のこととか部活のこととか気にしなくていいし。俺がノート取っといてやるし、お前んとこの部長には俺から言っとくし」
青葉が僕を、心から案じてくれているのがわかる。僕が悩んでいても無理やり聞き出そうとしないし、こちらから話すのを待ってくれる人だ。高校に入学したてで、環境ががらっと変わったせいで体調を悪くしていた僕に、最初に声をかけてくれた青葉は、今でも僕の具合の悪さに一番に気づいてくれる。
僕の周囲が現実と常識をすっ飛ばして激変しても、青葉の気遣いは失われない。それがどれだけ僕の救いになってくれていることだろう?
「……ありがとう、青葉」
「いいってことよ。何なら課題も丸写ししても良いし!」
「そりゃバレちゃうって」
僕は苦笑して、自販機に小銭を入れた。コーヒー牛乳のボタンを押して、落ちてきたコーヒー牛乳を青葉に差し出す。きょとんと首を傾げる青葉に、「僕からの奢り」と答えた。
「いいの?」
「良いよ。話を聞いてくれたお礼。青葉のアドバイス通り、無理しないようにする」
「ように、じゃなくて、無理しない、をちゃーんと実行しないとだめだぞ。あと飯は食え?」
「売店で栄養ゼリー買ってくるよ。それより、青葉は良いの? 先輩とミーティングあるんじゃない?」
「やべ、忘れてた~」
気づいた青葉は、コーヒー牛乳を巾着のなかに大切にしまって、早歩きで先輩の待つ教室へと戻っていった。僕は彼の背中に向けて、ひらひらとさりげなく手を振った。
僕はふうっと息を吐き、まだにぎわっている売店に向かおうとした。
「浪川君」
背後で、三峰先輩の声がした。
