テオの町で開催されたフェスタから、約半年が経った。
世界の情勢は、母さんが飛空艇の上で予想した通り、大きく様変わりした。
フェスタの中心になって各回を盛り上げ、各国の積み荷を狙って現れる海賊たちに対する抑止力として、率先して警備の指揮を執っていたガレドーラ共和国が、実は海賊そのものだった。この衝撃は瞬く間に世界を駆け抜け、大きな爪痕を残した。
ガレドーラ共和国は、オルブライト・ワイズマンとその一派による個人的な犯行を主張したものの、決定的な証拠を提出できず、築いてきた大国としての地位と信頼を完全に失った。
海賊行為そのものについては、確かにオルブライトの独断によるところが大きかったのは確かだろう。しかし、世論はそれだけでは収まらなかった。
小国を囲い込み、形だけは国家を維持させながら、ほぼ属国のような扱いで不平等な貿易を強いていた事実が次々と露呈し、ガレドーラ共和国自体の体質が問題視されたからだ。
この世界において、不平等な貿易や契約が存在しないわけではないし、むしろそういう話は往々にしてあるものだ。
そうだとしても、それらはそれぞれの立場で損得をやりとりした上での、暗黙の了解で成り立つものがほとんどだ。
どちらか一方だけが搾取を続ける関係は、どこかで必ず破綻するし、大きな恨みを買ってしまう。
今回のガレドーラ共和国の失脚は、海賊行為の被害によって過去に商機を逃した大国、属国扱いを受けていた小国、双方が声を大きくしたことで、ガレドーラ共和国の肩を持つ者がいなくなった結果だ。
主犯であるオルブライトは、全世界に手配書が公開され、今も捜索が続けられている。
海賊行為をはじめとした数々の倫理に反する行いに加えて、ひとりで大型船を沈めるような力を持つ筆頭魔術師でもあったのだから、警戒されて当然だ。
一連の衝撃的な出来事の中で、躍進した国もある。
僕たちステラロード王国もそのひとつであるし、イグナイト王国もそのひとつだ。
ステラロード王国とイグナイト王国が共同で開発した、ということになっている飛空艇は、ガレドーラ共和国の件とは別の意味で、まさしく世界をひっくり返すほどの衝撃を与えた。
フェスタから半年が経った今では、飛空艇の数は二隻に増えている。
一度成功させた合成なので、素材さえ揃えば数をどんどん増やせはするのだけど、世界のバランスを考えた二国間の取り決めで、そうはしないことになった。
共同開発の形で声明を出したのも、ざっくり言えば僕を守るためだ。
オルブライトが使ったフェンリルの魔法も記憶に新しい今、強大な力が誰かに偏っている状態は、ご時世的によろしくない。
しかもそれが、これまでまったく存在しなかった空を飛ぶ技術や、魔導大砲などという壊れ兵器ともなれば、いい顔をされるわけがない。
上手くいっても懐柔工作、下手をすれば誘拐や暗殺までありえるということで、技術を秘匿するかわりに、飛空艇の船団を組んだりはしない取り決めに落ち着いた。
順番が逆になってしまうのだけど、エンジンとスクリューで風を無視して動く船は、飛空艇開発の副産物ということにして事なきを得ている。
ステラロード王国は、これらの船と飛空艇を使った運送事業が大きく伸びて、空飛ぶ貿易国家として名を馳せるまでになっていた。
運送事業だけではない。前回のフェスタで好評だったピッツァ・ステラロードや、そこに使っていた食材や携帯用のピザ窯など、様々な商品の売れ行きも好調だ。
中でも、ステラロード王国発祥の缶詰は、大きく売り上げを伸ばしている。
素材となる良質な魔法金属をイグナイト王国から買い付け、ステラロード王国で加工する形を基本にしつつ、イグナイト王国にも少しずつ製造を任せるようになってきている。これには、課題だった缶詰自体の製造を、素材合成した機械を使ってある程度まで仕組み化できたことが大きい。
缶詰の売れ行きが伸びるにしたがって、新たな問題として浮上した素材の不足とゴミの問題も、リサイクルの仕組みの試運転を開始したところだ。
今日はその報告を聞いて議論するために、関係者が集まっている。
「前回のお話を踏まえて、試算をしてみました。空き缶の回収に対する報酬と、回収した空き缶の再加工を合わせたコストは、新規で鉱石を採掘して加工するコストを若干ですが下回れる見込みです」
イグナイト王国の担当者が報告書を読み上げると、「ステラロード王国の技術協力のおかげです」とイグナイト国王が付け加えて、笑顔を見せた。
魔法金属を卸してもらっている以上、ステラロード王国で回収して加工を進めてしまう形では、イグナイト王国の利益と雇用を奪ってしまう。
そこで考えたのが、回収コストを負担してもらうかわりに、再加工のための技術協力を行い、リサイクルした製品としての空き缶を卸してもらう形だ。
資源の節約に加えて、イグナイト王国にとっては新たな雇用と利益を生み出し、ステラロード王国としても、容器ではなく缶詰を作る部分に人を使える。課題は出てくるだろうけど、今のところは、双方にいい結果をもたらしそうな流れだ。
「レガロ殿下が提案してくださった、冒険者ギルドを通した依頼として回収を促す案も、試験的に運用を開始しています。リスクの低い依頼として、思いのほか好評のようですよ」
「そもそも缶詰自体が、保存食の革命と言える大発明ですからね。それを食べられなくなっては困る、固い干し肉と味のしないパンに逆戻りは嫌だと、協力的な者が多いようです」
冒険者の胃袋、掴んだり。
もっと色々な問題が起きて、収拾がつかなくなるかと思っていたけど、嬉しい誤算もあって、空き缶の回収も順調な滑り出しのようだ。
「ありがとうございます。このまますべて順調に、とはいかないでしょうけど、ひとつずつ相談して解決していけたら嬉しいです」
「ええ、生死の境を共に乗り越えた私たちなら、きっと乗り越えていけますわ」
丁寧な礼を取った僕に、シエナがにっこりと微笑んで応える。
いやあ頼もしい、これで両国は安泰だと、後ろから色々な声が……主に僕の家族からの声があがって、笑顔がぎこちなくなる。
今のところは、シエナからもイグナイト国王からもお咎めはないけど、押しも押されぬ大国の姫君と、今回の件で名前を売った小国の末っ子王子では、釣り合わないにもほどがある。
怒られないうちに、話題を逸らしておきたいところだ。
「ところで、飛空艇の調子はいかがですか? 気になるところがあったら、すぐ教えてくださいね」
「ありがとうございます、そちらもとても順調ですわ。強いて言えば、着陸の時に少し揺れるくらいでしょうか」
「もしよければ、この後少し見てみましょうか? ちょうどこの間、ステラロード王国の飛空艇に、揺れを制御する仕組みを入れたんです。同じものを追加で合成すれば、少しよくなるかもしれません」
着陸の衝撃で飲み物をこぼした父さんから、強い要請があって試行錯誤したことは名誉のために黙っておく。
そもそも、着陸直前にお酒を飲んでいるなんて、油断しすぎだ。
本来であれば、飲めないくらい揺れた方がいいのかもしれないとさえ考えたけど、全体的な安全性と快適さを天秤にかけて、揺れは制御することにした。
「ぜひお願いいたします。レガロ様はすごいですね、次々と新しいアイデアが出てくるんですもの。レガロ様のような方こそ、きっと本物の天才なのですね……!」
僕はそれには首を横に振って、「とんでもないです」と笑った。
たまたま前世の記憶があって、そこで見聞きしたアイデアをスキル頼みで再現しているだけなのだから、本物の天才には程遠い。
「自分にできることをやっておきたいとは、いつも思っています。造りたいもの自体はたくさんありますし。最終的には空のもっと向こう、星の世界まで行けるような船が作れたら嬉しいですね」
そこまで一気にしゃべってから、その場にいるみんながぽかんとしていることに気付く。
しまった、夢中になりすぎた。
宇宙船は完全に趣味の挑戦だけど、飛空艇や船の改良をしっかりやっていきたいと思っているのは本当だ。もちろん、兵器になってしまうようなものの開発は、十分な注意が必要だと思う。
人にしろ魔物にしろ、前世より戦いが身近にあるだけに、そういうつもりでなく作ったものが、簡単に戦いに流用されてしまうことだって大いにありえる。
「レガロなら、本当にそんな船を造ってしまいそうだな。その時は俺も連れて行ってくれ」
「モーターボートみたいに、星の隙間を縫って走る船も頼むぜ。あれはいい、俺の性に合ってる」
父さんがにやりと笑い、マグナ兄がモーターボートのハンドルを握る真似をしてみせた。
僕が突拍子のない話をしても、信じて聞いてくれる家族がいるのは、すごく大きい。
「星の世界にも魔物はいるのかしら? 私たちがレガロを守りましょうね、シルヴァン? ヴィクターもマグナスも、自分のことばっかりなんだから」
「そうだね母さん、でもレガロはそんなに弱くないよ。飛空艇の主砲でフェンリル・ケイオスを吹き飛ばしたの、母さんも見てたでしょ?」
「あら、でも船に乗り込まれるかもしれないわ。その時はやっぱり、私たちの出番じゃないかしら?」
「そういうことなら、私もお手伝いいたしますわ。レガロ様はおひとりで無理をしすぎるところがありますから。誰かがそばについていないといけませんわよね」
「キュイ!」
宇宙での白兵戦を想定しだした母さんに、シエナ姫とソルまで乗っかる。
「まずは世界中を回ってみたいです、星の世界はだいぶ先の目標ですから」
「どこに行ってもやっていけるように、斧の訓練をしっかりしないとな」
「レガロ様なら、魔法の才能もあるのでは? 私、お手伝いします!」
「世界中の美味しいものを食べて、第二のピッツァ・ステラロードを開発しましょうよ、うふふ」
適当なところで話を変えようとしたつもりが、ここでも話があちこちに逸れていく。
みんなふざけているようで、それぞれ本気で聞いてくれているのがわかるからこそ、どの話も楽しく聞けてしまう。
「みんなありがとう。一生推せる気がしてる」
「キュイ?」
推すってどういう意味?
みんなの頭に浮かんだハテナを、首を傾げて代弁してくれたソルの頭をそっと撫でて、「もちろんソルもその中に入ってるからね」と僕は笑った。
了
世界の情勢は、母さんが飛空艇の上で予想した通り、大きく様変わりした。
フェスタの中心になって各回を盛り上げ、各国の積み荷を狙って現れる海賊たちに対する抑止力として、率先して警備の指揮を執っていたガレドーラ共和国が、実は海賊そのものだった。この衝撃は瞬く間に世界を駆け抜け、大きな爪痕を残した。
ガレドーラ共和国は、オルブライト・ワイズマンとその一派による個人的な犯行を主張したものの、決定的な証拠を提出できず、築いてきた大国としての地位と信頼を完全に失った。
海賊行為そのものについては、確かにオルブライトの独断によるところが大きかったのは確かだろう。しかし、世論はそれだけでは収まらなかった。
小国を囲い込み、形だけは国家を維持させながら、ほぼ属国のような扱いで不平等な貿易を強いていた事実が次々と露呈し、ガレドーラ共和国自体の体質が問題視されたからだ。
この世界において、不平等な貿易や契約が存在しないわけではないし、むしろそういう話は往々にしてあるものだ。
そうだとしても、それらはそれぞれの立場で損得をやりとりした上での、暗黙の了解で成り立つものがほとんどだ。
どちらか一方だけが搾取を続ける関係は、どこかで必ず破綻するし、大きな恨みを買ってしまう。
今回のガレドーラ共和国の失脚は、海賊行為の被害によって過去に商機を逃した大国、属国扱いを受けていた小国、双方が声を大きくしたことで、ガレドーラ共和国の肩を持つ者がいなくなった結果だ。
主犯であるオルブライトは、全世界に手配書が公開され、今も捜索が続けられている。
海賊行為をはじめとした数々の倫理に反する行いに加えて、ひとりで大型船を沈めるような力を持つ筆頭魔術師でもあったのだから、警戒されて当然だ。
一連の衝撃的な出来事の中で、躍進した国もある。
僕たちステラロード王国もそのひとつであるし、イグナイト王国もそのひとつだ。
ステラロード王国とイグナイト王国が共同で開発した、ということになっている飛空艇は、ガレドーラ共和国の件とは別の意味で、まさしく世界をひっくり返すほどの衝撃を与えた。
フェスタから半年が経った今では、飛空艇の数は二隻に増えている。
一度成功させた合成なので、素材さえ揃えば数をどんどん増やせはするのだけど、世界のバランスを考えた二国間の取り決めで、そうはしないことになった。
共同開発の形で声明を出したのも、ざっくり言えば僕を守るためだ。
オルブライトが使ったフェンリルの魔法も記憶に新しい今、強大な力が誰かに偏っている状態は、ご時世的によろしくない。
しかもそれが、これまでまったく存在しなかった空を飛ぶ技術や、魔導大砲などという壊れ兵器ともなれば、いい顔をされるわけがない。
上手くいっても懐柔工作、下手をすれば誘拐や暗殺までありえるということで、技術を秘匿するかわりに、飛空艇の船団を組んだりはしない取り決めに落ち着いた。
順番が逆になってしまうのだけど、エンジンとスクリューで風を無視して動く船は、飛空艇開発の副産物ということにして事なきを得ている。
ステラロード王国は、これらの船と飛空艇を使った運送事業が大きく伸びて、空飛ぶ貿易国家として名を馳せるまでになっていた。
運送事業だけではない。前回のフェスタで好評だったピッツァ・ステラロードや、そこに使っていた食材や携帯用のピザ窯など、様々な商品の売れ行きも好調だ。
中でも、ステラロード王国発祥の缶詰は、大きく売り上げを伸ばしている。
素材となる良質な魔法金属をイグナイト王国から買い付け、ステラロード王国で加工する形を基本にしつつ、イグナイト王国にも少しずつ製造を任せるようになってきている。これには、課題だった缶詰自体の製造を、素材合成した機械を使ってある程度まで仕組み化できたことが大きい。
缶詰の売れ行きが伸びるにしたがって、新たな問題として浮上した素材の不足とゴミの問題も、リサイクルの仕組みの試運転を開始したところだ。
今日はその報告を聞いて議論するために、関係者が集まっている。
「前回のお話を踏まえて、試算をしてみました。空き缶の回収に対する報酬と、回収した空き缶の再加工を合わせたコストは、新規で鉱石を採掘して加工するコストを若干ですが下回れる見込みです」
イグナイト王国の担当者が報告書を読み上げると、「ステラロード王国の技術協力のおかげです」とイグナイト国王が付け加えて、笑顔を見せた。
魔法金属を卸してもらっている以上、ステラロード王国で回収して加工を進めてしまう形では、イグナイト王国の利益と雇用を奪ってしまう。
そこで考えたのが、回収コストを負担してもらうかわりに、再加工のための技術協力を行い、リサイクルした製品としての空き缶を卸してもらう形だ。
資源の節約に加えて、イグナイト王国にとっては新たな雇用と利益を生み出し、ステラロード王国としても、容器ではなく缶詰を作る部分に人を使える。課題は出てくるだろうけど、今のところは、双方にいい結果をもたらしそうな流れだ。
「レガロ殿下が提案してくださった、冒険者ギルドを通した依頼として回収を促す案も、試験的に運用を開始しています。リスクの低い依頼として、思いのほか好評のようですよ」
「そもそも缶詰自体が、保存食の革命と言える大発明ですからね。それを食べられなくなっては困る、固い干し肉と味のしないパンに逆戻りは嫌だと、協力的な者が多いようです」
冒険者の胃袋、掴んだり。
もっと色々な問題が起きて、収拾がつかなくなるかと思っていたけど、嬉しい誤算もあって、空き缶の回収も順調な滑り出しのようだ。
「ありがとうございます。このまますべて順調に、とはいかないでしょうけど、ひとつずつ相談して解決していけたら嬉しいです」
「ええ、生死の境を共に乗り越えた私たちなら、きっと乗り越えていけますわ」
丁寧な礼を取った僕に、シエナがにっこりと微笑んで応える。
いやあ頼もしい、これで両国は安泰だと、後ろから色々な声が……主に僕の家族からの声があがって、笑顔がぎこちなくなる。
今のところは、シエナからもイグナイト国王からもお咎めはないけど、押しも押されぬ大国の姫君と、今回の件で名前を売った小国の末っ子王子では、釣り合わないにもほどがある。
怒られないうちに、話題を逸らしておきたいところだ。
「ところで、飛空艇の調子はいかがですか? 気になるところがあったら、すぐ教えてくださいね」
「ありがとうございます、そちらもとても順調ですわ。強いて言えば、着陸の時に少し揺れるくらいでしょうか」
「もしよければ、この後少し見てみましょうか? ちょうどこの間、ステラロード王国の飛空艇に、揺れを制御する仕組みを入れたんです。同じものを追加で合成すれば、少しよくなるかもしれません」
着陸の衝撃で飲み物をこぼした父さんから、強い要請があって試行錯誤したことは名誉のために黙っておく。
そもそも、着陸直前にお酒を飲んでいるなんて、油断しすぎだ。
本来であれば、飲めないくらい揺れた方がいいのかもしれないとさえ考えたけど、全体的な安全性と快適さを天秤にかけて、揺れは制御することにした。
「ぜひお願いいたします。レガロ様はすごいですね、次々と新しいアイデアが出てくるんですもの。レガロ様のような方こそ、きっと本物の天才なのですね……!」
僕はそれには首を横に振って、「とんでもないです」と笑った。
たまたま前世の記憶があって、そこで見聞きしたアイデアをスキル頼みで再現しているだけなのだから、本物の天才には程遠い。
「自分にできることをやっておきたいとは、いつも思っています。造りたいもの自体はたくさんありますし。最終的には空のもっと向こう、星の世界まで行けるような船が作れたら嬉しいですね」
そこまで一気にしゃべってから、その場にいるみんながぽかんとしていることに気付く。
しまった、夢中になりすぎた。
宇宙船は完全に趣味の挑戦だけど、飛空艇や船の改良をしっかりやっていきたいと思っているのは本当だ。もちろん、兵器になってしまうようなものの開発は、十分な注意が必要だと思う。
人にしろ魔物にしろ、前世より戦いが身近にあるだけに、そういうつもりでなく作ったものが、簡単に戦いに流用されてしまうことだって大いにありえる。
「レガロなら、本当にそんな船を造ってしまいそうだな。その時は俺も連れて行ってくれ」
「モーターボートみたいに、星の隙間を縫って走る船も頼むぜ。あれはいい、俺の性に合ってる」
父さんがにやりと笑い、マグナ兄がモーターボートのハンドルを握る真似をしてみせた。
僕が突拍子のない話をしても、信じて聞いてくれる家族がいるのは、すごく大きい。
「星の世界にも魔物はいるのかしら? 私たちがレガロを守りましょうね、シルヴァン? ヴィクターもマグナスも、自分のことばっかりなんだから」
「そうだね母さん、でもレガロはそんなに弱くないよ。飛空艇の主砲でフェンリル・ケイオスを吹き飛ばしたの、母さんも見てたでしょ?」
「あら、でも船に乗り込まれるかもしれないわ。その時はやっぱり、私たちの出番じゃないかしら?」
「そういうことなら、私もお手伝いいたしますわ。レガロ様はおひとりで無理をしすぎるところがありますから。誰かがそばについていないといけませんわよね」
「キュイ!」
宇宙での白兵戦を想定しだした母さんに、シエナ姫とソルまで乗っかる。
「まずは世界中を回ってみたいです、星の世界はだいぶ先の目標ですから」
「どこに行ってもやっていけるように、斧の訓練をしっかりしないとな」
「レガロ様なら、魔法の才能もあるのでは? 私、お手伝いします!」
「世界中の美味しいものを食べて、第二のピッツァ・ステラロードを開発しましょうよ、うふふ」
適当なところで話を変えようとしたつもりが、ここでも話があちこちに逸れていく。
みんなふざけているようで、それぞれ本気で聞いてくれているのがわかるからこそ、どの話も楽しく聞けてしまう。
「みんなありがとう。一生推せる気がしてる」
「キュイ?」
推すってどういう意味?
みんなの頭に浮かんだハテナを、首を傾げて代弁してくれたソルの頭をそっと撫でて、「もちろんソルもその中に入ってるからね」と僕は笑った。
了



