味方の反撃が、ぴたりと止まってしまった。
たったひとつの凶悪な魔法で、こちら側の士気をごっそり持っていかれた。
「シエナ、戻りなさい。そんなところにいては、狙い撃ちにされてしまう」
イグナイト国王の悲痛な叫びにハッとした。シエナは甲板の端に立ったまま、拳を握りしめて立ち尽くしている。悔しがっているのか、恐怖で動けないのか、後ろ姿からは読み取れない。
どちらにしても、イグナイト国王の言う通り、あそこにいてはいけないのは確かだ。
怖くて笑っていた膝をひっ叩いて、僕は駆け出した。
「素材……合成!」
素材ボックスに入っていた魔法金属と、えぐれた甲板の破片を利用して簡易的な盾を作り、シエナの前に打ち立てた。
間髪入れず、いくつかの魔法弾が盾を揺らす。
「戻ってください、シエナ姫」
ぐいと肩を掴んで引き寄せて、僕は思わず息を飲んだ。
シエナは瞳いっぱいに涙を溜めて、それでもなお海賊の旗艦を睨みつけていた。
怖い、悔しい、なんとかしたい。様々な感情と葛藤が、彼女の中で渦巻いている。
そっと手を離してから、無理やりに笑顔を作ってシエナの前に回り込む。いつかのシルヴァ兄の真似をして恭しく礼を取った。
「シエナ姫、どうかこのレガロに、エスコートをお任せください。ご安心を、この場は私が、必ずなんとかしてみせましょう」
しばらくしてから、「いいでしょう」と小さな声がして、そっと顔を上げる。
いくつもの魔法弾が降り注ぐ中で、シエナは大粒の涙をこぼしながら、きらきらした瞳で笑っていた。
「レガロ様に、私の命とイグナイト王国の命運、お預けいたしますわ」
イグナイト王国の命運までとなると、さすがに荷が重すぎやしませんか、と言いたくなるのをぐっとこらえる。これだけ格好つけておいて、すぐさま弱音を吐くわけにはいかない。
「承りました、さあこちらへ」
そっとシエナの手を取ると、魔法金属の盾を何度か合成しなおしながら、みんなのところに戻った。
「やるねえ、レガロ。もう僕から教えることは何もないみたいだね」
戻るなり、さっそくシルヴァ兄に脇をつつかれる。
「シルヴァ兄、この非常時に何言ってんの!?」
からかうにしても、時と場合と状況を考えてほしい。
「それで? 実際どうしようか? 向こうはどう考えても海賊じゃない。海賊にカモフラージュしたどこかの魔法兵だね。むかつくほど統率の取れた集中砲火で、味方の船が次々やられてる」
「メテオライト号が、救助にあたってくださっていますわね」
一時は僕たちを目指していたメテオライト号は反転して、僕たちがいるクイーン・ベアトリス号より早く沈んでしまいそうな、あるいはすでに沈められてしまった船の救助にあたっていた。
二隻のモーターボートが出ているのも見える。乗っているのはもちろん、父さんとマグナ兄だ。ふたりは、海に投げ出された人を順番に助けて回っているようだ。
実際のところ、エンジンがついていて急旋回ができるメテオライト号以外は、まともに魔法攻撃をかわせない状態まで追い込まれている。
そんな状況にも関わらず、時間が経つにつれて、メテオライト号からの魔法による反撃が増えていく。救助した人たちの中から魔法が使える人を集めて、母さんが指揮をしているのだろう。
まだ、誰も諦めてなんていない。
だけど、とても楽観できる状況ではない。
こちら側の無事な船はどんどん減って、海賊たちが包囲を狭めるように動き始める。
包囲の中心にあるのは、僕たちがいるこのクイーン・ベアトリス号だ。
めぼしいところの救助を終えたのか、メテオライト号が僕たちに向かって速度を上げる。
別の場所では、ステラロード王国の貨物船一隻が、ダメージを追ったイグナイト王国の船を率いて包囲を突破しようとしているのが見えた。
エンジンが無事な一隻を先頭にすることで、強引に包囲に穴を開けようとしているのだ。
どうやらメテオライト号は、その殿を買って出たらしい。ときおり止まっては、モーターボートが周囲を駆け回っているのを見ると、海に投げ出された人をできる限り助けつつ、海賊の注意を引きつつ、僕たちも助けるつもりらしい。とんでもない高難易度だ。
ごぼごぼと、下の方で音がし始めた。いよいよ、クイーン・ベアトリス号も沈みつつある。あまり時間があるとは言えない。このまま何もせず、メテオライト号を待つだけではダメだ。
強力な魔法で一発逆転したり、父さんやマグナ兄のように、剛腕を振るって突破口を開いたりはできない。僕にできるのは結局、素材合成と素材分解だけだ。
それでも、できることは全部やるんだ。
「レガロ様、無理はなさらないでください」
シエナにそっと手を握られる。僕はなるべく明るい表情を作った。
「バレちゃいましたか。でもやっぱり、何かできることがあれば、したいと思うんです」
そっと手をほどくと、シエナはますます必死な表情になって、訴えかけてきた。
「私、嬉しかったです。危険を顧みず助けにきてくださったことも、素敵なエスコートを買って出てくださったことも。こんな状況ですけれど、空に舞い上がってしまいそうな気持ちでしたわ。だから、レガロ様にもしものことがあったら、絶対に嫌」
「……それだ!」
僕は、ぐるりと海賊たちの包囲網を見渡した。
メテオライト号が抵抗して動き回っているおかげで、海賊たちの旗艦は包囲を突破しようとしている貨物船の追撃までは手が回っていない。おそらく、あの一団はどうにか抜けられるだろう。
ただしその後は、メテオライト号と僕たちを逃がすまいと、包囲がさらに狭められるのは間違いない。そうなれば、海上にはいよいよ逃げ場がなくなる。
それじゃあどうすればいいか。シエナのセリフに、ヒントをもらった。
海から逃げられないなら、空に逃げてしまえばいい。
海賊たちの船から、規則正しく飛んでくる魔法攻撃の間隔を慎重に測る。
「イグナイト国王陛下、お願いがあります」
「むう。どうしたのだね?」
「クイーン・ベアトリス号と積み荷のすべてを、ステラロード王国に……いえ、僕に譲ってはいただけませんか?」
「なんと。船はともかく、積み荷のすべてとなると……むう」
「お父様、何を迷っていらっしゃるのですか」
「しかしだな、シエナ。もう少しでステラロード王国の旗艦メテオライト号が来てくれる。それを待って脱出すれば、後でここに戻れる目もあるのではないか? この場で積み荷のすべてを譲る約束というのは、さすがに」
「レガロ様には考えがあるご様子。これまで、レガロ様に何度助けられたとお思いですか? しかも、命がかかっているこの場面で積み荷の心配だなんて。そんなもの、すべて差し上げればよいのです!」
シエナの強力な援護射撃のおかげで、イグナイト国王が「あいわかった、好きにされよ」と首を縦に振ってくれた。
説明不足でご心労をおかけしたのは、大変申し訳ない。無事に切り抜けられたら、ちゃんとお返しするか対価は払うつもりだ。
大きな爆発音がして、思わず振り返る。
これまで奇跡的な回避を続けてきたメテオライト号が、ついに魔法の直撃を受けたのだ。火の手が上がる甲板で、いくつもの影がせわしなく動く。
ステラロード王国の貨物船と、それに続くイグナイト王国の船団に逃げられたことで、予想通り包囲を狭めにかかってきた海賊たちが、メテオライト号へ攻撃を集中させているのだ。
沈みかけたこの船とメテオライト号なら、まだまだ動けるメテオライト号を優先するのは当然だ。とにかく、急がなくてはいけない。
「シルヴァ兄、僕をマストの上に連れていって」
「この船を合成しなおして、エンジンをつけちゃおうってことだね。わかったよ」
「私もお供させてください」
シエナにぱっと飛びつかれて、シルヴァ兄と三人でひしゃげたマストの一番上までジャンプした。ソルがちゃんとくっついているのを、ちらりと確かめるのも忘れない。
僕は指先をまっすぐ下に向けると、ぐるりと大きく円を描いて、船全体をしっかりと囲んだ。
「沈んだ素材まで、全部使って合成する……!」
自分に言い聞かせるように叫んで、完成した姿をイメージする。
魔法金属を惜しみなく使って、隙間を木材で埋める形がいい。
クイーン・ベアトリス号を覆いつくす巨大な魔法陣が現れて、海中の素材を吸い込みながら空中へ展開していく。
甲板に集まったみんなも、そして僕たちも、甲板やマストと一緒になって吸い上げられていく。
異変に気付いた海賊たちの船から、こちらに魔法弾が飛んでくる。
頭の中が妙にはっきりしていて、飛んでくる魔法弾の軌道がよく見えた。
「邪魔しないでね」
射線上に、吸い上げた魔法金属の一部を使った盾を展開して、魔法攻撃を相殺した。
魔法弾が盾に当たるたびに衝撃はあったものの、大したダメージはないようだ。
「違う種類の合成を同時にやるなんて……すごい」
隣にいたシルヴァ兄が驚く。確かにこれは、僕にとっても新感覚だ。
「素材……合成!」
巨大な魔法陣が、まばゆいばかりの光を放つ。
光の中から現れた巨大な船に、僕たちが立つマストと、下のみんながいる甲板が引き寄せられてがっちりとくっつく。
僕たち三人がいたマストが形を変えて、操舵輪を操作する台へと変わった。
目の前に鎮座ましました重厚な魔法金属製の操舵輪を、両手でしっかりと握りしめた。
「よおし、いくよ」
完成した大型船は落下して勢いよく着水……はせず、僕の思い描いた通り、空高く舞い上がった。
船の各所に取り付けられたいくつものプロペラが回り、取り付けたみっつのエンジンが小気味いい音を立てる。
僕が合成したのは、エンジンとスクリューを搭載した船ではなく、巨大な飛空艇クイーン・ベアトリス号だった。
たったひとつの凶悪な魔法で、こちら側の士気をごっそり持っていかれた。
「シエナ、戻りなさい。そんなところにいては、狙い撃ちにされてしまう」
イグナイト国王の悲痛な叫びにハッとした。シエナは甲板の端に立ったまま、拳を握りしめて立ち尽くしている。悔しがっているのか、恐怖で動けないのか、後ろ姿からは読み取れない。
どちらにしても、イグナイト国王の言う通り、あそこにいてはいけないのは確かだ。
怖くて笑っていた膝をひっ叩いて、僕は駆け出した。
「素材……合成!」
素材ボックスに入っていた魔法金属と、えぐれた甲板の破片を利用して簡易的な盾を作り、シエナの前に打ち立てた。
間髪入れず、いくつかの魔法弾が盾を揺らす。
「戻ってください、シエナ姫」
ぐいと肩を掴んで引き寄せて、僕は思わず息を飲んだ。
シエナは瞳いっぱいに涙を溜めて、それでもなお海賊の旗艦を睨みつけていた。
怖い、悔しい、なんとかしたい。様々な感情と葛藤が、彼女の中で渦巻いている。
そっと手を離してから、無理やりに笑顔を作ってシエナの前に回り込む。いつかのシルヴァ兄の真似をして恭しく礼を取った。
「シエナ姫、どうかこのレガロに、エスコートをお任せください。ご安心を、この場は私が、必ずなんとかしてみせましょう」
しばらくしてから、「いいでしょう」と小さな声がして、そっと顔を上げる。
いくつもの魔法弾が降り注ぐ中で、シエナは大粒の涙をこぼしながら、きらきらした瞳で笑っていた。
「レガロ様に、私の命とイグナイト王国の命運、お預けいたしますわ」
イグナイト王国の命運までとなると、さすがに荷が重すぎやしませんか、と言いたくなるのをぐっとこらえる。これだけ格好つけておいて、すぐさま弱音を吐くわけにはいかない。
「承りました、さあこちらへ」
そっとシエナの手を取ると、魔法金属の盾を何度か合成しなおしながら、みんなのところに戻った。
「やるねえ、レガロ。もう僕から教えることは何もないみたいだね」
戻るなり、さっそくシルヴァ兄に脇をつつかれる。
「シルヴァ兄、この非常時に何言ってんの!?」
からかうにしても、時と場合と状況を考えてほしい。
「それで? 実際どうしようか? 向こうはどう考えても海賊じゃない。海賊にカモフラージュしたどこかの魔法兵だね。むかつくほど統率の取れた集中砲火で、味方の船が次々やられてる」
「メテオライト号が、救助にあたってくださっていますわね」
一時は僕たちを目指していたメテオライト号は反転して、僕たちがいるクイーン・ベアトリス号より早く沈んでしまいそうな、あるいはすでに沈められてしまった船の救助にあたっていた。
二隻のモーターボートが出ているのも見える。乗っているのはもちろん、父さんとマグナ兄だ。ふたりは、海に投げ出された人を順番に助けて回っているようだ。
実際のところ、エンジンがついていて急旋回ができるメテオライト号以外は、まともに魔法攻撃をかわせない状態まで追い込まれている。
そんな状況にも関わらず、時間が経つにつれて、メテオライト号からの魔法による反撃が増えていく。救助した人たちの中から魔法が使える人を集めて、母さんが指揮をしているのだろう。
まだ、誰も諦めてなんていない。
だけど、とても楽観できる状況ではない。
こちら側の無事な船はどんどん減って、海賊たちが包囲を狭めるように動き始める。
包囲の中心にあるのは、僕たちがいるこのクイーン・ベアトリス号だ。
めぼしいところの救助を終えたのか、メテオライト号が僕たちに向かって速度を上げる。
別の場所では、ステラロード王国の貨物船一隻が、ダメージを追ったイグナイト王国の船を率いて包囲を突破しようとしているのが見えた。
エンジンが無事な一隻を先頭にすることで、強引に包囲に穴を開けようとしているのだ。
どうやらメテオライト号は、その殿を買って出たらしい。ときおり止まっては、モーターボートが周囲を駆け回っているのを見ると、海に投げ出された人をできる限り助けつつ、海賊の注意を引きつつ、僕たちも助けるつもりらしい。とんでもない高難易度だ。
ごぼごぼと、下の方で音がし始めた。いよいよ、クイーン・ベアトリス号も沈みつつある。あまり時間があるとは言えない。このまま何もせず、メテオライト号を待つだけではダメだ。
強力な魔法で一発逆転したり、父さんやマグナ兄のように、剛腕を振るって突破口を開いたりはできない。僕にできるのは結局、素材合成と素材分解だけだ。
それでも、できることは全部やるんだ。
「レガロ様、無理はなさらないでください」
シエナにそっと手を握られる。僕はなるべく明るい表情を作った。
「バレちゃいましたか。でもやっぱり、何かできることがあれば、したいと思うんです」
そっと手をほどくと、シエナはますます必死な表情になって、訴えかけてきた。
「私、嬉しかったです。危険を顧みず助けにきてくださったことも、素敵なエスコートを買って出てくださったことも。こんな状況ですけれど、空に舞い上がってしまいそうな気持ちでしたわ。だから、レガロ様にもしものことがあったら、絶対に嫌」
「……それだ!」
僕は、ぐるりと海賊たちの包囲網を見渡した。
メテオライト号が抵抗して動き回っているおかげで、海賊たちの旗艦は包囲を突破しようとしている貨物船の追撃までは手が回っていない。おそらく、あの一団はどうにか抜けられるだろう。
ただしその後は、メテオライト号と僕たちを逃がすまいと、包囲がさらに狭められるのは間違いない。そうなれば、海上にはいよいよ逃げ場がなくなる。
それじゃあどうすればいいか。シエナのセリフに、ヒントをもらった。
海から逃げられないなら、空に逃げてしまえばいい。
海賊たちの船から、規則正しく飛んでくる魔法攻撃の間隔を慎重に測る。
「イグナイト国王陛下、お願いがあります」
「むう。どうしたのだね?」
「クイーン・ベアトリス号と積み荷のすべてを、ステラロード王国に……いえ、僕に譲ってはいただけませんか?」
「なんと。船はともかく、積み荷のすべてとなると……むう」
「お父様、何を迷っていらっしゃるのですか」
「しかしだな、シエナ。もう少しでステラロード王国の旗艦メテオライト号が来てくれる。それを待って脱出すれば、後でここに戻れる目もあるのではないか? この場で積み荷のすべてを譲る約束というのは、さすがに」
「レガロ様には考えがあるご様子。これまで、レガロ様に何度助けられたとお思いですか? しかも、命がかかっているこの場面で積み荷の心配だなんて。そんなもの、すべて差し上げればよいのです!」
シエナの強力な援護射撃のおかげで、イグナイト国王が「あいわかった、好きにされよ」と首を縦に振ってくれた。
説明不足でご心労をおかけしたのは、大変申し訳ない。無事に切り抜けられたら、ちゃんとお返しするか対価は払うつもりだ。
大きな爆発音がして、思わず振り返る。
これまで奇跡的な回避を続けてきたメテオライト号が、ついに魔法の直撃を受けたのだ。火の手が上がる甲板で、いくつもの影がせわしなく動く。
ステラロード王国の貨物船と、それに続くイグナイト王国の船団に逃げられたことで、予想通り包囲を狭めにかかってきた海賊たちが、メテオライト号へ攻撃を集中させているのだ。
沈みかけたこの船とメテオライト号なら、まだまだ動けるメテオライト号を優先するのは当然だ。とにかく、急がなくてはいけない。
「シルヴァ兄、僕をマストの上に連れていって」
「この船を合成しなおして、エンジンをつけちゃおうってことだね。わかったよ」
「私もお供させてください」
シエナにぱっと飛びつかれて、シルヴァ兄と三人でひしゃげたマストの一番上までジャンプした。ソルがちゃんとくっついているのを、ちらりと確かめるのも忘れない。
僕は指先をまっすぐ下に向けると、ぐるりと大きく円を描いて、船全体をしっかりと囲んだ。
「沈んだ素材まで、全部使って合成する……!」
自分に言い聞かせるように叫んで、完成した姿をイメージする。
魔法金属を惜しみなく使って、隙間を木材で埋める形がいい。
クイーン・ベアトリス号を覆いつくす巨大な魔法陣が現れて、海中の素材を吸い込みながら空中へ展開していく。
甲板に集まったみんなも、そして僕たちも、甲板やマストと一緒になって吸い上げられていく。
異変に気付いた海賊たちの船から、こちらに魔法弾が飛んでくる。
頭の中が妙にはっきりしていて、飛んでくる魔法弾の軌道がよく見えた。
「邪魔しないでね」
射線上に、吸い上げた魔法金属の一部を使った盾を展開して、魔法攻撃を相殺した。
魔法弾が盾に当たるたびに衝撃はあったものの、大したダメージはないようだ。
「違う種類の合成を同時にやるなんて……すごい」
隣にいたシルヴァ兄が驚く。確かにこれは、僕にとっても新感覚だ。
「素材……合成!」
巨大な魔法陣が、まばゆいばかりの光を放つ。
光の中から現れた巨大な船に、僕たちが立つマストと、下のみんながいる甲板が引き寄せられてがっちりとくっつく。
僕たち三人がいたマストが形を変えて、操舵輪を操作する台へと変わった。
目の前に鎮座ましました重厚な魔法金属製の操舵輪を、両手でしっかりと握りしめた。
「よおし、いくよ」
完成した大型船は落下して勢いよく着水……はせず、僕の思い描いた通り、空高く舞い上がった。
船の各所に取り付けられたいくつものプロペラが回り、取り付けたみっつのエンジンが小気味いい音を立てる。
僕が合成したのは、エンジンとスクリューを搭載した船ではなく、巨大な飛空艇クイーン・ベアトリス号だった。



