城に戻った僕たちは、広い会議室でテーブルを囲んでいた。
テーブルの上には、目玉商品の候補となる品々やその説明が書かれたメモがいくつか、それから主に商談相手の候補となる国名や都市名の一覧が書かれたメモが並べてある。
「今回はレガロのおかげで船を一新できたから、しっかりと打って出るつもりよ。まずは友好的な国や都市に挨拶をして、新生ステラロード商会をお披露目するの」
母さんが、イグナイト王国をはじめとしたいくつかの国や都市の名を口にする。
これまでもフェスタには参加していたものの、品数の少なさや船団の見た目で、あまり効果的な活動はできていなかったのだという。
「反対に、目立つ分だけ気を付けなきゃならん国もある」
「ガレドーラ共和国とか、ゼム帝国とか?」
表情をうかがいながら尋ねてみると、父さんは「おいおい。ゼム帝国はともかく、ガレドーラ共和国のワイズマン殿には挨拶したばかりだろう?」と眉をひそめた。
やっぱり、父さんの印象としては、オルブライトは完全にいい人枠らしい。
僕としても、あの一瞬だけで確証が持てないだけに、違和感を伝えきれないのがもどかしい。
「ゼム帝国は確かに色々と騒がしい国だが、そもそもフェスタに参加できるかどうか怪しいな」
「そうなんだ?」
「あそこはちょいちょい、跡目争いだの派閥争いだのをやってるんだ。東の大帝国のお家事情っていやあ、フェスタでもまあまあいいネタになるゴシップだ。下手に触れば刺されるが、ほっときゃ、そうおかしなことにはならないはずさ」
マグナ兄が肩をすくめて教えてくれる。要は内輪揉めで、フェスタどころじゃないんだね。
「さて、どこに注意すればいいかはおいおい話していくとして、今日のところは別の相談だ。レガロのスキルは、木箱だとか樽、それから斧だとか弓矢なんかも合成できるのか?」
「素材があれば大丈夫だと思うよ。マグナ兄の手斧を分解して、作り直したこともあるし」
「どれくらいの量を作れる?」
父さんの質問に、僕は考え込んでしまった。
ひとつの物を合成するなら、かなり複雑なもの……それこそ、仕組みを理解しきれていないものでも、どういう風に動くどんなものかがわかれば、合成できる。
ただ、量的にどれくらいと言われると難しい。
「ちょっと難しいから、やってみてから考えてみてもいい?」
「そう言ってくれると思ってな。実はいくつか持ってきている」
会議をする部屋には不釣り合いな、樽と木箱が登場する。しっかりした作りの樽には色々なサイズがあって、中には僕の背より高いものまであった。
「情けない話なんだが、輸出入を増やすにあたって、こういう入れ物がそもそも足りないんだ」
「向こうで買い付けてくる方法もあるけれど、完全にそれを当てにしていくのも違うと思うのよね」
船を新しくして、積載量も増えたと単純に喜んでいたけど、こういう問題もあるのか。
母さんが言う通り、あまりスカスカの船で向かうのも残念だもんね。
「斧とか弓矢はどうするの? それも、売るの?」
武器商人はなんとなくイメージがよくないな、と全開の偏見で考えてしまう。
「武器は売り物じゃない。海の魔物や海賊とやりあうためだ、そんな顔をするな。それに、武器商人だって立派な仕事だぞ。それこそ魔物相手の、魔力を込めた武器なんてのは、かなり高値でやりとりされてるし、重宝するんだ」
マグナ兄が、僕の頭をわしわしと撫でてフォローしてくれた。
この世界には魔物もいるから、どうしたって武器は必要だ。
岩壁を水門にしている途中で襲ってきた、海の魔物を思い出す。
海の幸を大きくして、形を歪にして、絶対に話が通じない空気感を纏わせた感じ、というのが魔物に対する印象だ。シンプルに怖かったし、そういうことなら納得もいく。
「これ、一度分解してみてもいい? どういう素材があればいいのか確認したくて」
完全に想像力だけに任せて、適当な素材を使っても、大抵はそれらしいものはできてしまう。
ただし、適量というか、適切な材料がわからないままやると無駄が多いし、魔力消費も激しい傾向にある。今回は量を増やすのが目的なので、最低限必要な素材の種類と分量を把握しておきたかった。
みんなの許可を得て、樽と木箱と斧をそれぞれじっくり観察してから、素材分解する。
どれも職人の技が光っているというか、精巧な作りに感動する。
何もないところから物を作れるわけではない僕は、職人さんに対して尊敬しかない。
「どれも合成はできそうだけど、たくさん作るのは結構大変かも」
僕自身の魔力が増えているから、数十個だとかの単位ならいけそうではある。
ただし、大量の輸出入に耐えうるような数……数百とか数千の規模を準備しておくとなると、難しい気がする。
「それから素材って、色んな森とか岩からどんどん削っちゃっていいものなの?」
ステラロード王国の土や岩には、様々な金属が含まれている場所もある。
それは、エレベーターを作った時のワイヤーで実証済みだ。
とはいえ、それじゃあどんどん使っていいかといえば、微妙な気がするのだ。
今回の航海分はまかなうにしても、国土を削って備品を作っていくのは、長期的にみれば良策だとは思えない。
それに、僕がいなくても備品を増やしていけるような仕組みも、絶対に必要だと思った。
「樽とか木箱に使ってる釘とか金属の板とか、斧の刃の部分って、どこで作っているの?」
「魔法を併用して、金属を溶かして加工しているのよ。ただ、うちは鍛冶が盛んな国ではないから、炉が少ないし弱いのよね」
「設備さえあれば、優秀な魔法使いは多いんだがな」
母さんと父さんの話からすると、魔法使いはいるものの、炉だとかの設備の数が足りないんだね。
「それじゃあ、木箱とか樽とか斧とかを僕が頑張って作るより、炉を作った方がよかったりする? 素材分解と素材合成だけで、全部の道具を作るのはやっぱり厳しいかなって」
「魔法炉は構造が複雑だけれど、そんなものまで作れるの?」
「できれば実際に動いてるところを見たいのと、本とかがあれば見たいかも」
「本はないわね……魔法炉を管理してくれている専門の魔法使いから、説明してもらうのはどう?」
「うん、ぜひお願い。失敗しちゃうかもしれないけど、頑張ってみるね」
紙自体の流通が微妙で、僕が草や木の枝から作ったノートが重宝されているくらいだ。やはりというか、残念ながら本は難しかったみたいだ。
説明を聞いて、実物を見て、どういうものかイメージしてやってみよう。
考えてみたら、前世で普通に使っていたものは比較的簡単に合成できるけど、こっちの世界独特の、例えば魔法を使ったようなものを合成するのは、あまりやってこなかったね。大丈夫かな。
エスカレーターの風力発魔力だとか、エレベーターのボタン経由で魔力を充填するとか、魔法を使った仕組み自体は合成したアイテムに取り入れられているから、何とかなると信じたい。
「それはそれとして、品はこの辺にしようと思ってるんだが、どうだ?」
備品に対する方針が決まったので、話題は実際に何を売るかに移っていく。
お茶の葉のようなものやハーブ類、トマトなどの野菜、オレンジのような果物、見たことのない海産物などがテーブルに並べられていく。
生のものと加工済みのものとがセットで並べられ、主に加工済みの品を売り物にする計画だ。
家臣たちが、最近の流行りだとか前の航海で聞いた噂話だとかを織り交ぜて、こういう理由だからこれはきっと売れるでしょう、と口々にアピールしてくれる。
海の向こうでどんな品物に需要があるのかは僕にはわからないけど、それぞれの品物について目をキラキラさせて語り合うみんなを見ていると、本当に上手くいってほしいなと思う。
香ばしく焼きあがった生地の上で、とろけたチーズがふつふつと弾ける。
刻んで乗せたトマトとバジル――厳密にはどちらも違うのだけど、もうこの名前で呼んでしまおうね、の赤と緑が彩りを添える。
マルゲリータである。それも極上のチーズと、極上の新鮮素材を使った、とびきりのヤツである。
「俺たちが今まで食べてきたものは、なんだったんだ……」
「トマトの酸味のおかげでさっぱり食べられるし、とってもジューシーよね」
「こっちの魚のヤツも旨すぎる……まさかレガロに、料理の才能まであったなんてな」
「本当に美味しい。僕はお肉を乗せたのも好きだな」
現在進行形で、家族から大好評のピザの数々は、魔法炉合成からの意外な副産物だ。
武器や備品に使う金属を加工するための魔法炉は、思いのほか上手く合成できた。
途中で何度かやり直したし、専門の魔法使いから何度も話を聞いてイメージを膨らませもしたけど、結果的には、元々あった魔法炉と遜色ない機能を持つ新しい魔法炉の合成に成功した。
その過程で生まれた失敗作のひとつが、まさしくこの場で大活躍中の、携帯式のピザ窯だった。
ステラロード王国ではパン食が基本で、ピザのような食べ物も存在はしていた。
ただしそれは、シエナに振る舞った時のトッピング前のもの……平たく伸ばしたパン生地に油とチーズをざらっと塗り付けて、ざっくり焼いただけのものだ。
シエナをエスコートした時に、ピザのトッピングに確信を得ていた僕は、できあがったピザ窯を見て大喜びだった。さっそく、トマトにバジル、オイルサーディンのような魚の加工品、ベーコンなどを次々と乗せて焼いていったというわけ。
結果の見えた勝負でも、時には楽しいものだ。
ご覧の通り、シエナたちと同じかそれ以上のリアクションを、家族からもしっかり得られている。
父さんはこれまでの食体験を疑うレベルで涙を流しているし、母さんはトマトとチーズの相性にご満悦だ。マグナ兄は魚、シルヴァ兄はベーコンを乗せたものをそれぞれ気に入ってくれたようだ。
重臣たちも軒並み瞳を潤ませているし、まさしく、わが軍は圧倒的ではないか。
「チーズの量と種類を増やして、蜜をかけても美味しいと思うよ。あとはキノコとバターなんかを乗せても美味しいと思う」
ピザを考案したのはもちろん僕ではないのだけど、ここまで来たら勢いだ。
美味しいピザが日常的に食べられるようになるのは嬉しいし、色々と広めてしまえ。
本当は日本食も恋しくなってきているものの、この世界で米は一度も見かけていないから、少なくともステラロード王国には存在しないみたいだ。
「なにこれ、罪の味がする……蜜がチーズと絡み合って、どうにかなりそう」
「きのことバターのこれも売れるわね、絶対に。順番にレシピをメモしておかなくちゃ」
シルヴァ兄と母さんがほっぺたに手をあてて、くねくねしている。クワトロフォルマッジ風のあまじょっぱい味も、きのことバターを使ったフンギ風も、どちらもお口にあったようだ。
「トマトは、ドライトマトでも美味しいのかしら? フェスタに持っていくのに、生は無理よね」
「少しバランスは変わるけど、美味しそうだよね。ドライトマトはぎゅっと美味しさが詰まった感じがするし」
すぐさま頭を切り替えて、売り物としての可能性を試しにかかるあたり、さすがは母さんだ。あまり、なんでもかんでも食べたことがあるような言い方だと怪しいので、言葉を選んで答えておく。
「そうよね。でも何とか、この感じのまま運べないかしら。樽では持っていけないし、塩やお酢に漬けてしまうのも違うわよね」
母さんは、食べる手を動かし続けたまま、トマトをどうやって持っていくのが一番売れるかを真剣に考えている。
「レガロ、これもっとまとめて焼けないか? 一枚ずつだとじれったい」
「単純にこの小さい魔法炉の数を増やせばいいんじゃないか? 見たとこ、焼くのはそんなに難しくなさそうだよな」
「あえてゆっくり焼いて、行列にした方が目立つんじゃない?」
「いいわね、一枚ずつの付加価値も捨てがたいわ。ただ、最初はやっぱり広めたいわよね。オリジナルがステラロード王国であることが広まれば、トマトもチーズも、バターだって売れると思うのよ」
食欲だけで声をあげた父さんの一言から、どうすればまとめて振る舞えるか、売り物になるかの議論が始まる。
「ねえレガロ、このピザの焼き上がりに、ステラロード王国の紋章を刻印できないかしら? 生地の端っこでも、チーズを焦がすのでもいいのだけれど」
「うちがオリジナルだってアピールするんだね」
ささっと、紋章をかたどったミニサイズの焼きごてを合成して、ピザの耳部分に刻印してみた。
「いいわね、すごくいい。絶対に売れるわ……王家御用達、島国の名物料理、ピッツァ・ステラロォォド!」
「か、母さん……大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ。苦節ウン年、あなたのおかげで初めて見えた勝ち筋なんだから。愛してるわ。もちろんみんなもよ、愛してる」
「ピッツァ・ステラロードってのはいいな。ステラロード王国といえばって商品が欲しかったとこだ」
マルゲリータさん、ごめんなさい。世界が違うのでどうか許してください。
これだけ盛り上がっているところに、この食べ物の名前は実は……などと口を挟めるわけがない。異世界の王妃の名を冠した食べ物だなんて、知っている方がおかしいのだ。
そう、この食べ物は今日からピッツァ・ステラロード。いや、ピッツァ・ステラロォォドなのだ。
「あとはやっぱりトマトの保存よね。ねえ、みんなも何かアイデアないかしら?」
「ドライトマトでいいんじゃないか?」
「悪くはないのだけれど、もう少しな気がするのよね」
そっと、手を挙げてみる。
今なら、ある程度の無茶な提案をしても許される空気のような気がした。
そもそも、携帯式のピザ窯が許されているのだから、何をかいわんやである。
「食べ物って、風とか日にあたると腐っちゃうんだよね?」
「色々と原因はあるが、それもまあひとつだな」
「何か思いついたの?」
父さんが顎に手をやり、母さんが目を輝かせた。マグナ兄やシルヴァ兄も、ピザをぱくつきながらではあるものの、興味深そうに僕を覗き込んだ。
「それなら、風とか日に当たらないようにすればいいんじゃないかなって」
みんなの視線が、何度か交差して僕に戻ってくる。どうやって、と言いたげだ。
「シルヴァ兄、手伝ってくれる?」
言いながら僕は、金属製の円筒と、プルタブのついた円形の板を合成した。つまり、缶詰である。
そこに、ピザのトッピングを試す中で作ってもらった、塩ゆでしたトマトを入れる。
「蒸気……あったかい風をあててほしいんだ」
「なんとなく、やりたいことがわかったかも」
察しが良すぎる気がするけど、シルヴァ兄はにっこり頷くと、風魔法を詠唱してくれた。
「この状態で……蓋をするね」
蒸気で空気を逃がしつつ、真空状態に近い形できっちり蓋をする。
缶詰の作りが面白くて、一時期たくさん動画を見たので、その時のイメージそのままでギュギュッと巻いて閉めていく。二重巻締というやり方だ。
缶の素材には、武器や備品の加工には向かないやわらかくて加工しやすい金属を使った。
この金属は魔力の含有量も多くて、ちょうどよさそうだったからだ。魔力を含んだ素材は、前世でいうところの抗菌効果があるらしく、食品が腐りにくくなるのだそうだ。
「とりあえず蓋はできたから、これを加熱処理しておきたいんだけど」
「加熱処理なんて、難しい言葉を知ってるわね、どこで覚えたの?」
「え! えっと、魔法炉を作る時に聞いたんだよ」
そうなの、と母さんが笑顔のままで顎に手を当てる。
この顔の母さんは、完全に冷静な時の母さんだ。勢いで押し切るのは難しかったかな。
「まあいいでしょう。加熱なら、私の魔法でいけそうね。ちょっと貸してくれる?」
母さんは缶詰をテーブルに置くと、シルヴァ兄を手招きして呼んできた。
「シルヴァン、風魔法でこれのまわりを囲んでちょうだい。周りに熱がいかないようにしないとね。それから、炎を直接当てるのもよくないでしょうから、それを防ぐためにもね」
シルヴァ兄が風魔法でガードして、母さんが炎の魔法で缶詰を加熱処理する。
ふたりの魔法がすごいのは知っていたけど、母さんは風魔法使いだと思っていたから、火の魔法も使えることに驚いた。
ますます、何をしていた人なのか気になってくる。父さんと一緒に航海しているくらいだから、昔は名のある魔法使いだったりして。
「塩気が強くなるのはある程度仕方ないかしらね……でもこれは、面白い作りだわ」
「ラシェル、いけそうなのか?」
父さんはすっかり、観客のような立ち位置で興味津々の顔だ。マグナ兄も、結構手間がかかるもんなんだなと、残りのピザをつまんでいる。
「開けてみてもいい? ここを引っ張ればいいのよね?」
「うん。試しに作ってみただけだから、上手くいってるかどうかわからないけど」
母さんが、ゆっくりと缶詰のプルタブを開ける。
無言のまま、開けた缶詰を父さんに見せる。マグナ兄とシルヴァ兄も覗き込んで、頷きあった。
「試してみる価値はありそうね。出航までしばらく時間があるから、作れるだけ作って様子を見てみましょう」
「いけそうに見えるけどな?」
父さんの言葉に、母さんの目つきが鋭くなる。
「ヴィクター、食べ物を売るのはとっても大変なのよ。万が一、ダメになったものを使ったピザを売ってごらんなさい。しっかりとステラロード王国の紋章が入った食べ物で、たくさんの人がおなかを壊したら、どうかしら?」
「……広まるのは悪評だけだな」
そういうことよ、と母さんが口の端を持ち上げる。
「レガロ、気を悪くしないでちょうだいね。あなたが頑張って考えてくれたものでも、安全性を確かめてから持っていく必要があるの」
「大丈夫、もちろんだよ」
むしろ、この慎重さは必要な慎重さだ。ステラロード王国がどうにか海外の商船を呼び込めているのは、母さんの力によるものなのかもしれない。
「だからね、レガロ。やるべきことはやっておきたいの。わかるわね?」
「うん……!」
「この入れ物の蓋と本体、それぞれにステラロード王国の紋章を刻んでもらえるかしら? できれば、かわいらしいトマトの絵も入っていると嬉しいのだけれど、どうかしら?」
「あれ?」
慎重に安全性を確かめて売りに出そうとしている割には、もうデザインに凝りだしている。
「どうかしら? 難しければ、入れ物だけ作ってもらえれば職人を探すけれど……」
「えっと、頑張ってみるね」
それは助かるわ、と母さんが満面の笑みで身をひるがえした。
向かった先にはもちろん、ピッツァ・マルゲリータ改め、ピッツァ・ステラロードが待っている。
一口ほおばりながら、さらさらと何かをメモして、「これでどう?」と僕に手渡す。
描かれていたのは、にっこり笑顔の顔がついたトマトのイラストである。
「……すごいね、母さんって」
「そうでしょう?」
何に対してすごいと言われたのか、おそらく噛み合っていないまま、母さんが胸を張った。
テーブルの上には、目玉商品の候補となる品々やその説明が書かれたメモがいくつか、それから主に商談相手の候補となる国名や都市名の一覧が書かれたメモが並べてある。
「今回はレガロのおかげで船を一新できたから、しっかりと打って出るつもりよ。まずは友好的な国や都市に挨拶をして、新生ステラロード商会をお披露目するの」
母さんが、イグナイト王国をはじめとしたいくつかの国や都市の名を口にする。
これまでもフェスタには参加していたものの、品数の少なさや船団の見た目で、あまり効果的な活動はできていなかったのだという。
「反対に、目立つ分だけ気を付けなきゃならん国もある」
「ガレドーラ共和国とか、ゼム帝国とか?」
表情をうかがいながら尋ねてみると、父さんは「おいおい。ゼム帝国はともかく、ガレドーラ共和国のワイズマン殿には挨拶したばかりだろう?」と眉をひそめた。
やっぱり、父さんの印象としては、オルブライトは完全にいい人枠らしい。
僕としても、あの一瞬だけで確証が持てないだけに、違和感を伝えきれないのがもどかしい。
「ゼム帝国は確かに色々と騒がしい国だが、そもそもフェスタに参加できるかどうか怪しいな」
「そうなんだ?」
「あそこはちょいちょい、跡目争いだの派閥争いだのをやってるんだ。東の大帝国のお家事情っていやあ、フェスタでもまあまあいいネタになるゴシップだ。下手に触れば刺されるが、ほっときゃ、そうおかしなことにはならないはずさ」
マグナ兄が肩をすくめて教えてくれる。要は内輪揉めで、フェスタどころじゃないんだね。
「さて、どこに注意すればいいかはおいおい話していくとして、今日のところは別の相談だ。レガロのスキルは、木箱だとか樽、それから斧だとか弓矢なんかも合成できるのか?」
「素材があれば大丈夫だと思うよ。マグナ兄の手斧を分解して、作り直したこともあるし」
「どれくらいの量を作れる?」
父さんの質問に、僕は考え込んでしまった。
ひとつの物を合成するなら、かなり複雑なもの……それこそ、仕組みを理解しきれていないものでも、どういう風に動くどんなものかがわかれば、合成できる。
ただ、量的にどれくらいと言われると難しい。
「ちょっと難しいから、やってみてから考えてみてもいい?」
「そう言ってくれると思ってな。実はいくつか持ってきている」
会議をする部屋には不釣り合いな、樽と木箱が登場する。しっかりした作りの樽には色々なサイズがあって、中には僕の背より高いものまであった。
「情けない話なんだが、輸出入を増やすにあたって、こういう入れ物がそもそも足りないんだ」
「向こうで買い付けてくる方法もあるけれど、完全にそれを当てにしていくのも違うと思うのよね」
船を新しくして、積載量も増えたと単純に喜んでいたけど、こういう問題もあるのか。
母さんが言う通り、あまりスカスカの船で向かうのも残念だもんね。
「斧とか弓矢はどうするの? それも、売るの?」
武器商人はなんとなくイメージがよくないな、と全開の偏見で考えてしまう。
「武器は売り物じゃない。海の魔物や海賊とやりあうためだ、そんな顔をするな。それに、武器商人だって立派な仕事だぞ。それこそ魔物相手の、魔力を込めた武器なんてのは、かなり高値でやりとりされてるし、重宝するんだ」
マグナ兄が、僕の頭をわしわしと撫でてフォローしてくれた。
この世界には魔物もいるから、どうしたって武器は必要だ。
岩壁を水門にしている途中で襲ってきた、海の魔物を思い出す。
海の幸を大きくして、形を歪にして、絶対に話が通じない空気感を纏わせた感じ、というのが魔物に対する印象だ。シンプルに怖かったし、そういうことなら納得もいく。
「これ、一度分解してみてもいい? どういう素材があればいいのか確認したくて」
完全に想像力だけに任せて、適当な素材を使っても、大抵はそれらしいものはできてしまう。
ただし、適量というか、適切な材料がわからないままやると無駄が多いし、魔力消費も激しい傾向にある。今回は量を増やすのが目的なので、最低限必要な素材の種類と分量を把握しておきたかった。
みんなの許可を得て、樽と木箱と斧をそれぞれじっくり観察してから、素材分解する。
どれも職人の技が光っているというか、精巧な作りに感動する。
何もないところから物を作れるわけではない僕は、職人さんに対して尊敬しかない。
「どれも合成はできそうだけど、たくさん作るのは結構大変かも」
僕自身の魔力が増えているから、数十個だとかの単位ならいけそうではある。
ただし、大量の輸出入に耐えうるような数……数百とか数千の規模を準備しておくとなると、難しい気がする。
「それから素材って、色んな森とか岩からどんどん削っちゃっていいものなの?」
ステラロード王国の土や岩には、様々な金属が含まれている場所もある。
それは、エレベーターを作った時のワイヤーで実証済みだ。
とはいえ、それじゃあどんどん使っていいかといえば、微妙な気がするのだ。
今回の航海分はまかなうにしても、国土を削って備品を作っていくのは、長期的にみれば良策だとは思えない。
それに、僕がいなくても備品を増やしていけるような仕組みも、絶対に必要だと思った。
「樽とか木箱に使ってる釘とか金属の板とか、斧の刃の部分って、どこで作っているの?」
「魔法を併用して、金属を溶かして加工しているのよ。ただ、うちは鍛冶が盛んな国ではないから、炉が少ないし弱いのよね」
「設備さえあれば、優秀な魔法使いは多いんだがな」
母さんと父さんの話からすると、魔法使いはいるものの、炉だとかの設備の数が足りないんだね。
「それじゃあ、木箱とか樽とか斧とかを僕が頑張って作るより、炉を作った方がよかったりする? 素材分解と素材合成だけで、全部の道具を作るのはやっぱり厳しいかなって」
「魔法炉は構造が複雑だけれど、そんなものまで作れるの?」
「できれば実際に動いてるところを見たいのと、本とかがあれば見たいかも」
「本はないわね……魔法炉を管理してくれている専門の魔法使いから、説明してもらうのはどう?」
「うん、ぜひお願い。失敗しちゃうかもしれないけど、頑張ってみるね」
紙自体の流通が微妙で、僕が草や木の枝から作ったノートが重宝されているくらいだ。やはりというか、残念ながら本は難しかったみたいだ。
説明を聞いて、実物を見て、どういうものかイメージしてやってみよう。
考えてみたら、前世で普通に使っていたものは比較的簡単に合成できるけど、こっちの世界独特の、例えば魔法を使ったようなものを合成するのは、あまりやってこなかったね。大丈夫かな。
エスカレーターの風力発魔力だとか、エレベーターのボタン経由で魔力を充填するとか、魔法を使った仕組み自体は合成したアイテムに取り入れられているから、何とかなると信じたい。
「それはそれとして、品はこの辺にしようと思ってるんだが、どうだ?」
備品に対する方針が決まったので、話題は実際に何を売るかに移っていく。
お茶の葉のようなものやハーブ類、トマトなどの野菜、オレンジのような果物、見たことのない海産物などがテーブルに並べられていく。
生のものと加工済みのものとがセットで並べられ、主に加工済みの品を売り物にする計画だ。
家臣たちが、最近の流行りだとか前の航海で聞いた噂話だとかを織り交ぜて、こういう理由だからこれはきっと売れるでしょう、と口々にアピールしてくれる。
海の向こうでどんな品物に需要があるのかは僕にはわからないけど、それぞれの品物について目をキラキラさせて語り合うみんなを見ていると、本当に上手くいってほしいなと思う。
香ばしく焼きあがった生地の上で、とろけたチーズがふつふつと弾ける。
刻んで乗せたトマトとバジル――厳密にはどちらも違うのだけど、もうこの名前で呼んでしまおうね、の赤と緑が彩りを添える。
マルゲリータである。それも極上のチーズと、極上の新鮮素材を使った、とびきりのヤツである。
「俺たちが今まで食べてきたものは、なんだったんだ……」
「トマトの酸味のおかげでさっぱり食べられるし、とってもジューシーよね」
「こっちの魚のヤツも旨すぎる……まさかレガロに、料理の才能まであったなんてな」
「本当に美味しい。僕はお肉を乗せたのも好きだな」
現在進行形で、家族から大好評のピザの数々は、魔法炉合成からの意外な副産物だ。
武器や備品に使う金属を加工するための魔法炉は、思いのほか上手く合成できた。
途中で何度かやり直したし、専門の魔法使いから何度も話を聞いてイメージを膨らませもしたけど、結果的には、元々あった魔法炉と遜色ない機能を持つ新しい魔法炉の合成に成功した。
その過程で生まれた失敗作のひとつが、まさしくこの場で大活躍中の、携帯式のピザ窯だった。
ステラロード王国ではパン食が基本で、ピザのような食べ物も存在はしていた。
ただしそれは、シエナに振る舞った時のトッピング前のもの……平たく伸ばしたパン生地に油とチーズをざらっと塗り付けて、ざっくり焼いただけのものだ。
シエナをエスコートした時に、ピザのトッピングに確信を得ていた僕は、できあがったピザ窯を見て大喜びだった。さっそく、トマトにバジル、オイルサーディンのような魚の加工品、ベーコンなどを次々と乗せて焼いていったというわけ。
結果の見えた勝負でも、時には楽しいものだ。
ご覧の通り、シエナたちと同じかそれ以上のリアクションを、家族からもしっかり得られている。
父さんはこれまでの食体験を疑うレベルで涙を流しているし、母さんはトマトとチーズの相性にご満悦だ。マグナ兄は魚、シルヴァ兄はベーコンを乗せたものをそれぞれ気に入ってくれたようだ。
重臣たちも軒並み瞳を潤ませているし、まさしく、わが軍は圧倒的ではないか。
「チーズの量と種類を増やして、蜜をかけても美味しいと思うよ。あとはキノコとバターなんかを乗せても美味しいと思う」
ピザを考案したのはもちろん僕ではないのだけど、ここまで来たら勢いだ。
美味しいピザが日常的に食べられるようになるのは嬉しいし、色々と広めてしまえ。
本当は日本食も恋しくなってきているものの、この世界で米は一度も見かけていないから、少なくともステラロード王国には存在しないみたいだ。
「なにこれ、罪の味がする……蜜がチーズと絡み合って、どうにかなりそう」
「きのことバターのこれも売れるわね、絶対に。順番にレシピをメモしておかなくちゃ」
シルヴァ兄と母さんがほっぺたに手をあてて、くねくねしている。クワトロフォルマッジ風のあまじょっぱい味も、きのことバターを使ったフンギ風も、どちらもお口にあったようだ。
「トマトは、ドライトマトでも美味しいのかしら? フェスタに持っていくのに、生は無理よね」
「少しバランスは変わるけど、美味しそうだよね。ドライトマトはぎゅっと美味しさが詰まった感じがするし」
すぐさま頭を切り替えて、売り物としての可能性を試しにかかるあたり、さすがは母さんだ。あまり、なんでもかんでも食べたことがあるような言い方だと怪しいので、言葉を選んで答えておく。
「そうよね。でも何とか、この感じのまま運べないかしら。樽では持っていけないし、塩やお酢に漬けてしまうのも違うわよね」
母さんは、食べる手を動かし続けたまま、トマトをどうやって持っていくのが一番売れるかを真剣に考えている。
「レガロ、これもっとまとめて焼けないか? 一枚ずつだとじれったい」
「単純にこの小さい魔法炉の数を増やせばいいんじゃないか? 見たとこ、焼くのはそんなに難しくなさそうだよな」
「あえてゆっくり焼いて、行列にした方が目立つんじゃない?」
「いいわね、一枚ずつの付加価値も捨てがたいわ。ただ、最初はやっぱり広めたいわよね。オリジナルがステラロード王国であることが広まれば、トマトもチーズも、バターだって売れると思うのよ」
食欲だけで声をあげた父さんの一言から、どうすればまとめて振る舞えるか、売り物になるかの議論が始まる。
「ねえレガロ、このピザの焼き上がりに、ステラロード王国の紋章を刻印できないかしら? 生地の端っこでも、チーズを焦がすのでもいいのだけれど」
「うちがオリジナルだってアピールするんだね」
ささっと、紋章をかたどったミニサイズの焼きごてを合成して、ピザの耳部分に刻印してみた。
「いいわね、すごくいい。絶対に売れるわ……王家御用達、島国の名物料理、ピッツァ・ステラロォォド!」
「か、母さん……大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ。苦節ウン年、あなたのおかげで初めて見えた勝ち筋なんだから。愛してるわ。もちろんみんなもよ、愛してる」
「ピッツァ・ステラロードってのはいいな。ステラロード王国といえばって商品が欲しかったとこだ」
マルゲリータさん、ごめんなさい。世界が違うのでどうか許してください。
これだけ盛り上がっているところに、この食べ物の名前は実は……などと口を挟めるわけがない。異世界の王妃の名を冠した食べ物だなんて、知っている方がおかしいのだ。
そう、この食べ物は今日からピッツァ・ステラロード。いや、ピッツァ・ステラロォォドなのだ。
「あとはやっぱりトマトの保存よね。ねえ、みんなも何かアイデアないかしら?」
「ドライトマトでいいんじゃないか?」
「悪くはないのだけれど、もう少しな気がするのよね」
そっと、手を挙げてみる。
今なら、ある程度の無茶な提案をしても許される空気のような気がした。
そもそも、携帯式のピザ窯が許されているのだから、何をかいわんやである。
「食べ物って、風とか日にあたると腐っちゃうんだよね?」
「色々と原因はあるが、それもまあひとつだな」
「何か思いついたの?」
父さんが顎に手をやり、母さんが目を輝かせた。マグナ兄やシルヴァ兄も、ピザをぱくつきながらではあるものの、興味深そうに僕を覗き込んだ。
「それなら、風とか日に当たらないようにすればいいんじゃないかなって」
みんなの視線が、何度か交差して僕に戻ってくる。どうやって、と言いたげだ。
「シルヴァ兄、手伝ってくれる?」
言いながら僕は、金属製の円筒と、プルタブのついた円形の板を合成した。つまり、缶詰である。
そこに、ピザのトッピングを試す中で作ってもらった、塩ゆでしたトマトを入れる。
「蒸気……あったかい風をあててほしいんだ」
「なんとなく、やりたいことがわかったかも」
察しが良すぎる気がするけど、シルヴァ兄はにっこり頷くと、風魔法を詠唱してくれた。
「この状態で……蓋をするね」
蒸気で空気を逃がしつつ、真空状態に近い形できっちり蓋をする。
缶詰の作りが面白くて、一時期たくさん動画を見たので、その時のイメージそのままでギュギュッと巻いて閉めていく。二重巻締というやり方だ。
缶の素材には、武器や備品の加工には向かないやわらかくて加工しやすい金属を使った。
この金属は魔力の含有量も多くて、ちょうどよさそうだったからだ。魔力を含んだ素材は、前世でいうところの抗菌効果があるらしく、食品が腐りにくくなるのだそうだ。
「とりあえず蓋はできたから、これを加熱処理しておきたいんだけど」
「加熱処理なんて、難しい言葉を知ってるわね、どこで覚えたの?」
「え! えっと、魔法炉を作る時に聞いたんだよ」
そうなの、と母さんが笑顔のままで顎に手を当てる。
この顔の母さんは、完全に冷静な時の母さんだ。勢いで押し切るのは難しかったかな。
「まあいいでしょう。加熱なら、私の魔法でいけそうね。ちょっと貸してくれる?」
母さんは缶詰をテーブルに置くと、シルヴァ兄を手招きして呼んできた。
「シルヴァン、風魔法でこれのまわりを囲んでちょうだい。周りに熱がいかないようにしないとね。それから、炎を直接当てるのもよくないでしょうから、それを防ぐためにもね」
シルヴァ兄が風魔法でガードして、母さんが炎の魔法で缶詰を加熱処理する。
ふたりの魔法がすごいのは知っていたけど、母さんは風魔法使いだと思っていたから、火の魔法も使えることに驚いた。
ますます、何をしていた人なのか気になってくる。父さんと一緒に航海しているくらいだから、昔は名のある魔法使いだったりして。
「塩気が強くなるのはある程度仕方ないかしらね……でもこれは、面白い作りだわ」
「ラシェル、いけそうなのか?」
父さんはすっかり、観客のような立ち位置で興味津々の顔だ。マグナ兄も、結構手間がかかるもんなんだなと、残りのピザをつまんでいる。
「開けてみてもいい? ここを引っ張ればいいのよね?」
「うん。試しに作ってみただけだから、上手くいってるかどうかわからないけど」
母さんが、ゆっくりと缶詰のプルタブを開ける。
無言のまま、開けた缶詰を父さんに見せる。マグナ兄とシルヴァ兄も覗き込んで、頷きあった。
「試してみる価値はありそうね。出航までしばらく時間があるから、作れるだけ作って様子を見てみましょう」
「いけそうに見えるけどな?」
父さんの言葉に、母さんの目つきが鋭くなる。
「ヴィクター、食べ物を売るのはとっても大変なのよ。万が一、ダメになったものを使ったピザを売ってごらんなさい。しっかりとステラロード王国の紋章が入った食べ物で、たくさんの人がおなかを壊したら、どうかしら?」
「……広まるのは悪評だけだな」
そういうことよ、と母さんが口の端を持ち上げる。
「レガロ、気を悪くしないでちょうだいね。あなたが頑張って考えてくれたものでも、安全性を確かめてから持っていく必要があるの」
「大丈夫、もちろんだよ」
むしろ、この慎重さは必要な慎重さだ。ステラロード王国がどうにか海外の商船を呼び込めているのは、母さんの力によるものなのかもしれない。
「だからね、レガロ。やるべきことはやっておきたいの。わかるわね?」
「うん……!」
「この入れ物の蓋と本体、それぞれにステラロード王国の紋章を刻んでもらえるかしら? できれば、かわいらしいトマトの絵も入っていると嬉しいのだけれど、どうかしら?」
「あれ?」
慎重に安全性を確かめて売りに出そうとしている割には、もうデザインに凝りだしている。
「どうかしら? 難しければ、入れ物だけ作ってもらえれば職人を探すけれど……」
「えっと、頑張ってみるね」
それは助かるわ、と母さんが満面の笑みで身をひるがえした。
向かった先にはもちろん、ピッツァ・マルゲリータ改め、ピッツァ・ステラロードが待っている。
一口ほおばりながら、さらさらと何かをメモして、「これでどう?」と僕に手渡す。
描かれていたのは、にっこり笑顔の顔がついたトマトのイラストである。
「……すごいね、母さんって」
「そうでしょう?」
何に対してすごいと言われたのか、おそらく噛み合っていないまま、母さんが胸を張った。



