「これが港にいくつかあれば、色んな常識がひっくり返るな。にしてもこんなの、どうやって思いついたんだ?」
「な、なんとなく?」
「ふうん。子供ならではの、柔軟な発想ってことかな」
シルヴァ兄の方が子供では……とは、もはや突っ込むまい。
とにかく、エレベーターは無事に動いてくれたし、ふたりの兄から許可も取れた。
魔力が吸われる感覚は動く歩道やエスカレーターより強かったものの、倒れてしまうほどでもなかった。なんなら、まだまだいける感じだ。早く港に設置してみんなを驚かせたい気持ちの方が強い。
素材合成と素材分解、ふたつのスキルを同時に使う感覚も、忘れないうちに復習しておきたいしね。
「これも魔力で動いてるんだよね? エスカレーターみたいに、風で魔力を集めているわけではなさそうだけど、どうやってるの? それもなんとなく?」
「これは、乗る人の魔力で動いてるんだ」
ボタンを押した時の指先から、乗る人の魔力を拝借して動かすようになっている。
「それって、大丈夫なんだよね?」
「うん、本当に少しだけの魔力で動くようになってるから」
使っている魔力は微々たるものなので、エレベーターのせいで魔力切れになって、気を失ってしまうようなことはないはずだし、魔法もスキルも使えない人でも、問題なく操作できるはずだ。
「もうひとつ聞いていいか? 残りの素材はどこいったんだ? 全部これに使ってるのか?」
「残りって?」
マグナ兄の質問の意味がいまいちピンとこなくて、僕は首を傾げてしまう。
「この箱と、箱を吊ってるワイヤー以外は空洞なんだろ? 崖をまるごと削ったんなら、量がおかしいだろ。この外側の枠だとか、見えないとこで使ってんのか?」
「言われてみれば、確かに?」
残りの素材か、と思い浮かべたところで、目の前にウインドウが現れる。
エレベーターが開いた時と同じ、チンという電子音付きで、とても不思議な感覚だ。
「え、なにこれ」
「どうしたの?」
きょとんとするシルヴァ兄には、僕の前に現れたウインドウは見えていないようだ。
ウインドウを確認すると、良質な石材やら、合金(ワイヤー)やら、エレベーターに使った残り物らしい素材が、四角い枠ごとに写真のような表示で映し出されている。
枠の下には個数を表しているらしい数字つきだ。
鼓動が高鳴る。僕はこの形式美を知っている。
そう、これは、チートスキルの代名詞。夢にまで見たアイテムボックスでは!?
「マグナ兄、手斧をひとつ貸してもらってもいい?」
「急にどうした? ほれ、気をつけろよ」
「ありがとう。ふっふっふ、驚かないでね?」
手斧を見せびらかすようにふたりに見せてから、僕は直感に従って叫んだ。
「収納っ!」
まばゆい光とともに、手斧がアイテムボックスに収納される。
「レガロ、急に叫んでどうしたの?」
「キュイ?」
「あれ?」
収納される……はずだったのだけど、まばゆい光どころか、完全に無反応だ。
マグナ兄とシルヴァ兄はもちろん、ソルにまで怪訝な顔をされてしまった。
「あれ、なんで? 収納! ストック! 入れ! 格納! イントゥザボックス! ゴートゥーザベッド! 我に力を! 収めたまえ!」
それらしいものから見当外れのものまで、思いつく限りの単語を叫んでみても、結果は同じだった。
「なんだかわからないけど、レガロが疲れてることだけはわかったよ。少し休もうか」
「斧はいったん返してもらうぞ。色々とアブないからな」
「キュイ……」
みんなから心配半分、引き気味半分の顔をされてしまった。こんなはずじゃなかったのに。
もう一度ウインドウを確認する。確かにいくつかのアイテムが枠に入っているのに、どうして新しく入れられないのだろう。
四角い枠だけの欄があるから、限界まで入っているわけでもなさそうなのに。
「あれ、これってもしかして?」
入っているアイテムを確認する。木材に石材、岩と金属のワイヤー、おそらく岩肌に生えていたであろう苔……なるほど、どうやら間違いなさそうだ。
「素材だけってこと? ごめんマグナ兄、もう一回だけ、手斧を貸してもらってもいい?」
手渡された手斧を素材分解して、パーツにばらす。
それを収納するイメージにしたら、手斧を分解したパーツが手の中から消え、ウインドウの中の四角いボックスにそれぞれ収まった。
「うお、消えた!?」
「どうやったの?」
「やっぱりそうだった。そっか、アイテムボックスじゃなくて、素材ボックスだったんだね」
僕はふたりに、アイテムボックス改め、素材ボックスを説明した。僕としては一緒に喜んでくれるかと思ったのだけど、ふたりはなんだか渋い顔をしている。
三つ目のスキルを手に入れても、やっぱり喜ぶにはまだまだ早いのかな。
「どうしようマグナ兄。さっきまでそこにいたはずの常識が、ウインクしながら片足で逃げていくみたい。脱げた靴だけ転がってる」
「わからんでもないが……いや、わからんな。何言ってんだ。お前はお前で大丈夫か、シルヴァン?」
「だから、ダメなんだってば。逆にマグナ兄はどうして平気なの?」
「まあなんだ、兄としてのプライドってヤツだな」
ふたりの会話がよくわからない。ひそひそと相談を始めてしまったから、今のうちにもう少しスキルの性能を確かめておこうかな。
何度か、手斧の材料とかさっきエレベーターに合成した時の余り素材とかを出しては消して、なんとなくの感覚を掴む。
この素材ボックスは、魔力をほぼ使わずに素材を出し入れできるみたいだ。少なくとも、素材合成や素材分解よりはるかに少ない魔力で発動できるから、かなり便利だ。
これからは、素材分解と素材合成の連続使用で無理やり素材を運ばなくてもよくなる。
それだけでも、かなり使い勝手がいい。連続使用で素材を運ぶのも、ちょっと楽しくなってきてはいたものの、魔力消費がすごいし、何より目立つからね。
「ねえ、まだ魔力に余裕はあるから、このまま港の方にエレベーターを作ってもいい? もし危なくなったら助けてほしいから、念のためふたりにも見ててほしいな」
「いいけどよ……今一番危ないのは、俺たちの常識だけどな」
「どういうこと?」
「なんでもないよ。兄さんといっしょに見てるから、頑張っておいで。僕はさっき脱げた靴を拾って磨いておくから」
「シルヴァン、お前はいいから現実に戻ってこい」
三人でわいわいしながら港の上に戻ると、さっきと同じ要領で直通のエレベーターを設置した。
せっかくなので、素材ボックスに格納してあったワイヤーも組み合わせて使ってみる。
素材合成、素材分解、素材ボックス。三つのスキルを同時に使うのも、問題なさそうだ。
「レガロの一番すごいところは、魔力の量なのかもしれないな。エレベーターを合成する時の魔法陣、結構な魔力を感じるってのに、こんなにほいほい作れるなんてな。一番最初にぶっ倒れたあの時は、本当にみんなで心配したんだぞ」
「あの時は本当にごめんなさい。でもそうだね、要領がつかめたのかも。一回上手く合成できたものは、二回目からは楽になるんだよね」
「合成のやりようはそうだろうけど、使う魔力量は変わってないよな?」
三基ほど港直通のエレベーターを合成したところで、マグナ兄に呆れられてしまった。
確かに、最初のエレベーターを合成したときは一気に魔力をもっていかれる感じがして、ちょっと危うい瞬間があった。
だけど今は、エレベーターの合成に慣れたのか、そもそものコツをつかんだのか、かなり楽に合成できている気がする。
毎日練習していたおかげで、全体的な魔力量も思った以上に成長していたらしい。
頑張ってやってきたことが実を結んだのだと思うと、すごく嬉しくなった。
「な、なんとなく?」
「ふうん。子供ならではの、柔軟な発想ってことかな」
シルヴァ兄の方が子供では……とは、もはや突っ込むまい。
とにかく、エレベーターは無事に動いてくれたし、ふたりの兄から許可も取れた。
魔力が吸われる感覚は動く歩道やエスカレーターより強かったものの、倒れてしまうほどでもなかった。なんなら、まだまだいける感じだ。早く港に設置してみんなを驚かせたい気持ちの方が強い。
素材合成と素材分解、ふたつのスキルを同時に使う感覚も、忘れないうちに復習しておきたいしね。
「これも魔力で動いてるんだよね? エスカレーターみたいに、風で魔力を集めているわけではなさそうだけど、どうやってるの? それもなんとなく?」
「これは、乗る人の魔力で動いてるんだ」
ボタンを押した時の指先から、乗る人の魔力を拝借して動かすようになっている。
「それって、大丈夫なんだよね?」
「うん、本当に少しだけの魔力で動くようになってるから」
使っている魔力は微々たるものなので、エレベーターのせいで魔力切れになって、気を失ってしまうようなことはないはずだし、魔法もスキルも使えない人でも、問題なく操作できるはずだ。
「もうひとつ聞いていいか? 残りの素材はどこいったんだ? 全部これに使ってるのか?」
「残りって?」
マグナ兄の質問の意味がいまいちピンとこなくて、僕は首を傾げてしまう。
「この箱と、箱を吊ってるワイヤー以外は空洞なんだろ? 崖をまるごと削ったんなら、量がおかしいだろ。この外側の枠だとか、見えないとこで使ってんのか?」
「言われてみれば、確かに?」
残りの素材か、と思い浮かべたところで、目の前にウインドウが現れる。
エレベーターが開いた時と同じ、チンという電子音付きで、とても不思議な感覚だ。
「え、なにこれ」
「どうしたの?」
きょとんとするシルヴァ兄には、僕の前に現れたウインドウは見えていないようだ。
ウインドウを確認すると、良質な石材やら、合金(ワイヤー)やら、エレベーターに使った残り物らしい素材が、四角い枠ごとに写真のような表示で映し出されている。
枠の下には個数を表しているらしい数字つきだ。
鼓動が高鳴る。僕はこの形式美を知っている。
そう、これは、チートスキルの代名詞。夢にまで見たアイテムボックスでは!?
「マグナ兄、手斧をひとつ貸してもらってもいい?」
「急にどうした? ほれ、気をつけろよ」
「ありがとう。ふっふっふ、驚かないでね?」
手斧を見せびらかすようにふたりに見せてから、僕は直感に従って叫んだ。
「収納っ!」
まばゆい光とともに、手斧がアイテムボックスに収納される。
「レガロ、急に叫んでどうしたの?」
「キュイ?」
「あれ?」
収納される……はずだったのだけど、まばゆい光どころか、完全に無反応だ。
マグナ兄とシルヴァ兄はもちろん、ソルにまで怪訝な顔をされてしまった。
「あれ、なんで? 収納! ストック! 入れ! 格納! イントゥザボックス! ゴートゥーザベッド! 我に力を! 収めたまえ!」
それらしいものから見当外れのものまで、思いつく限りの単語を叫んでみても、結果は同じだった。
「なんだかわからないけど、レガロが疲れてることだけはわかったよ。少し休もうか」
「斧はいったん返してもらうぞ。色々とアブないからな」
「キュイ……」
みんなから心配半分、引き気味半分の顔をされてしまった。こんなはずじゃなかったのに。
もう一度ウインドウを確認する。確かにいくつかのアイテムが枠に入っているのに、どうして新しく入れられないのだろう。
四角い枠だけの欄があるから、限界まで入っているわけでもなさそうなのに。
「あれ、これってもしかして?」
入っているアイテムを確認する。木材に石材、岩と金属のワイヤー、おそらく岩肌に生えていたであろう苔……なるほど、どうやら間違いなさそうだ。
「素材だけってこと? ごめんマグナ兄、もう一回だけ、手斧を貸してもらってもいい?」
手渡された手斧を素材分解して、パーツにばらす。
それを収納するイメージにしたら、手斧を分解したパーツが手の中から消え、ウインドウの中の四角いボックスにそれぞれ収まった。
「うお、消えた!?」
「どうやったの?」
「やっぱりそうだった。そっか、アイテムボックスじゃなくて、素材ボックスだったんだね」
僕はふたりに、アイテムボックス改め、素材ボックスを説明した。僕としては一緒に喜んでくれるかと思ったのだけど、ふたりはなんだか渋い顔をしている。
三つ目のスキルを手に入れても、やっぱり喜ぶにはまだまだ早いのかな。
「どうしようマグナ兄。さっきまでそこにいたはずの常識が、ウインクしながら片足で逃げていくみたい。脱げた靴だけ転がってる」
「わからんでもないが……いや、わからんな。何言ってんだ。お前はお前で大丈夫か、シルヴァン?」
「だから、ダメなんだってば。逆にマグナ兄はどうして平気なの?」
「まあなんだ、兄としてのプライドってヤツだな」
ふたりの会話がよくわからない。ひそひそと相談を始めてしまったから、今のうちにもう少しスキルの性能を確かめておこうかな。
何度か、手斧の材料とかさっきエレベーターに合成した時の余り素材とかを出しては消して、なんとなくの感覚を掴む。
この素材ボックスは、魔力をほぼ使わずに素材を出し入れできるみたいだ。少なくとも、素材合成や素材分解よりはるかに少ない魔力で発動できるから、かなり便利だ。
これからは、素材分解と素材合成の連続使用で無理やり素材を運ばなくてもよくなる。
それだけでも、かなり使い勝手がいい。連続使用で素材を運ぶのも、ちょっと楽しくなってきてはいたものの、魔力消費がすごいし、何より目立つからね。
「ねえ、まだ魔力に余裕はあるから、このまま港の方にエレベーターを作ってもいい? もし危なくなったら助けてほしいから、念のためふたりにも見ててほしいな」
「いいけどよ……今一番危ないのは、俺たちの常識だけどな」
「どういうこと?」
「なんでもないよ。兄さんといっしょに見てるから、頑張っておいで。僕はさっき脱げた靴を拾って磨いておくから」
「シルヴァン、お前はいいから現実に戻ってこい」
三人でわいわいしながら港の上に戻ると、さっきと同じ要領で直通のエレベーターを設置した。
せっかくなので、素材ボックスに格納してあったワイヤーも組み合わせて使ってみる。
素材合成、素材分解、素材ボックス。三つのスキルを同時に使うのも、問題なさそうだ。
「レガロの一番すごいところは、魔力の量なのかもしれないな。エレベーターを合成する時の魔法陣、結構な魔力を感じるってのに、こんなにほいほい作れるなんてな。一番最初にぶっ倒れたあの時は、本当にみんなで心配したんだぞ」
「あの時は本当にごめんなさい。でもそうだね、要領がつかめたのかも。一回上手く合成できたものは、二回目からは楽になるんだよね」
「合成のやりようはそうだろうけど、使う魔力量は変わってないよな?」
三基ほど港直通のエレベーターを合成したところで、マグナ兄に呆れられてしまった。
確かに、最初のエレベーターを合成したときは一気に魔力をもっていかれる感じがして、ちょっと危うい瞬間があった。
だけど今は、エレベーターの合成に慣れたのか、そもそものコツをつかんだのか、かなり楽に合成できている気がする。
毎日練習していたおかげで、全体的な魔力量も思った以上に成長していたらしい。
頑張ってやってきたことが実を結んだのだと思うと、すごく嬉しくなった。



