『今日も一日おつかれさま。頑張った自分にご褒美あげて、ゆっくり休んでね』
夜は恋人の気まぐれ配信を聴きながらミルクティーを飲む。このナイトルーティンも地味にお気に入りだ。
自身の乙女化思考に拍車がかかってちょっと怖いけど、明日が来るのは楽しみだったり。
「箱崎、この前は試合観に来てくれてあんがと!」
「ううん、プレーすごかったよ。それと決勝進出おめでとう、間戸」
季節は夏を迎えた。俺も以前より、積極的に誰かと関わるようになった。
三千人がいなかったら参加しなかっただろう場所や、付き合いも顔を出している。女子ともそれなりに話すし……自分と違う価値観のひとと関わるのは、結果として自分の為になるということも知った。今頃になって、三千人がやってたコミュ力強化の意義も理解した。
よく知らない人こそ、目の前の世界を広げてくれる。何ものにも代えがたい、尊い存在だ。
久しぶりに二人きりで話すと、間戸はうだった様子でシャツの襟をぱたぱたと揺らした。
「しっかし、毎日暑いよな」
「はは、ほんとにな。はいっ」
自販機でスポドリを買い、間戸に手渡す。彼はサンキューと笑い、俺の指を頬で突いてきた。
間戸のバスケ大会は前から約束していたから、見に行けて良かった。
もちろん三千人も一緒だけど。
「何か、箱崎変わったな」
「そう?」
「うん。前より笑うようになった」
間戸はドリンクを一気飲みすると、俺の隣に並んだ。
「前はちょっと、周りと距離置いてる印象だったんだ。それはそれでクールっぽくて良かったけど、今の方がいいよ」
高雅効果かな? と笑い、彼は背中を叩いてきた。
まさしくその通りなんだけど、勘ぐられるとまずい。「あいつは関係ないよ」と言って瞼を伏せた。
「そうか? まあいいか。もう高雅も女の子引き連れなくなったし。よくわかんないけど、お前らは一緒にいるのが良いんだろうな!」
「あはは……」
俺と三千人が幼馴染ということを知ってる人はあまりいないけど、前よりは一緒に過ごしてることが基本になってるようだ。
あと、俺が三千人の傍にいることで彼に良い影響が出ると思ってる節がある。あの中許も、高雅と俺をすぐ引っ付けようとするし。
絶対不思議な関係だと思われてるけど。俺はやっぱり、三千人みたいな堂々とは過ごせないから。
───だけどそんな心配も、季節が過ぎる度に透けていく。
何で一緒にいるのか、なんて愚問だ。カレンダーをめくる度に、密かに頷いている。
多分彼も同じ。離れている時でも互いのことを想ってる。
『皆、いつも配信聴いてくれてありがとう!』
夜の定番、恋人の配信を聴きながらベッドに倒れた。
『……今日は大事なお話があるので、そのまま聴いてもらえると嬉しいです』
「ん?」
イヤホンを通して届く、愛しい声。それは優しい子守唄のように発信された。
『俺は来月から大学生になります。それで、ずっと考えていたんですが……自分が納得いく毎日を送るために、配信はこれで最後にしようと思います。今まで聴いてくださり、本当にありがとうございました。一年ちょっとの間だったけど、信じられないぐらい楽しかったです』



