新しい花、風に揺れるカーテン、黒で塗りつぶされた写真、病室から見える風景
…彼はどこに行った?

「じゃ、帰る前に連絡がありますー」帰りのホームルームで担任の先生が話し出す。
「えー、ニュースで知っている人もいるかもしれないが、最近殺人事件や強盗が増えている。実際にこの学校にも、被害に遭った子がいるんだ。帰る時にはくれぐれも注意するんだぞー。以上、さよならー」解散の挨拶をすると、ザワザワとみんなが話し出した。
…殺人事件、そういえば隣のクラスの男の子の両親が殺されたんだっけ
そんなことを思い出しながら家に帰る。随分と物騒な事件だなー。

「じゃあ、頼んだわよ。」母親に急かされて家を追い出される。最悪なことに、うちで飼っていた猫、タロウが昨日から行方不明なのだ。
…とはいえ、タロウは普段家から出ないので場所の見当もつかない。
とりあえず、公園から見回ろう。そう思って、近所の公園に足を進めた。
「…あれ?」麻河くんだ。公園のベンチに座っている。まあ、別に俺らは友達でも顔見知りでもない。気にせずタロウを探そう。
茂みのところにしゃがみこむ。伸び切った草をかき分けてみてもタロウは見当たらない。また別のところを探そうと、振り返る。
「うわっ?!」後ろには麻河くんがいた。
「あ、驚かせてごめん。同じ学校だよね?…何してるの」特に表情もなくそう言われた。麻河のは病院特有の服を着ていた。あれ、今入院中なのか?どうしてここに…?
「えっと、猫探してる。昨日からいなくてさ。」不思議に思う気持ちを抑えて、そう答える。
「…僕も探し物をしてるんだ。よかったら手伝おうか?」
「え、あ、ありがとう」麻河くんの探し物?なんだろう。
「どんな猫なの?」
「黒い猫で、赤い首輪してる」
「…ちょっと待ってて」そういうと公園の出口から足早に歩き出した。どこへ行ったのだろうか。
「…不思議だな、麻河くん」そう思いながら、俺は引き続きタロウを探した。

「お待たせ、タロウいたよ」そう言ってタロウを抱き抱えた麻河くんが公園に戻ってきた。
「タロウ!見つけてくれたのか!ありがとう麻河くん!」タロウをそっと撫でた。
「でもよく見つけれたよね?どこにいたの?」
「…自販機の下だよ」
「そっか…ありがとう!」俺はそう言うと、麻河くんは少し微笑んでタロウを僕に手渡した。
「…あのさ、麻河くんって色々…大丈夫…?」
「…事件のこと?」
「あ…ごめん思い出したくないよね」
「…いいよ別に。今は精神病院で入院してる。」
「あ、だからその格好…」
「でも、抜け出してきた」
「え?!」
「ご飯が不味かったから」淡々とした口調でそう話す。
「へ、へえ」あっさりした理由に驚いてしまう。
「…」しばらく沈黙が続いた。
「じゃあね、真波くん」麻河くんはそう言ってどこかに消えてしまった。
「…変な子」なんで俺の名前知ってるんだろうか。とにかく、タロウが見つかってよかった。
「タロウ〜」家に帰ろう。