井上さんに部屋まで送ってもらい、布団に入った。
けれど、胸の奥がずっとざわついていて落ち着かず、中々寝れずにいた。
何度寝返りを打ったかは分からない。
結局寝ることを諦めて羽織を肩にかけて、部屋を出た。
すると階段を途中まで降りた時、複数の足音が聞こえてきた。
階段を少し降りて、ロウソクを持つ手を少し高くあげると、初めて見る色のだんだらを着た土方さんたちが歩いていた。
明るい浅葱色ではなく、闇に溶け込むような暗い紺色。
私はその様子に息を飲んだ。
ずっと来て欲しくないと願っていた池田屋事件が、とうとう来てしまったのだと、いつもより静かな皆を見て確信した。
近藤さん土方さんに続いて出てくる人物を見て駆け寄ろうと一歩を踏み出す。
けれど、沖田さんはこちらを見ることなく、背を向けて行ってしまった。
ずっとそばで聞いていた声が聞けなくなり、沖田さんの微笑みを見ることもなくなっていた。
待っていようと決めていたけれど、姿を見てしまってはもう止めることなどできなかった。
「沖田さんっ…!」
「……先に門前にいる」
大きく響いた私の声に沖田さん以外が振り返り、その後土方さんの低い声が響いた。
私はロウソクを置いて駆け出し、沖田さんの背中に抱きついた。
行かないでなんてわがままは言わない。
彼らは京の治安を守るために行く。
なのに、沖田さんがどうなるかを知ってしまってる以上、行かないでと願わないことなんてできない。
「澪さん」
久々に触れる大きな手は、冷たいのに何故か今だけは温かく感じた。
「必ず帰ってくるって、約束します。ですから──」
"離してください。"とは言われていないのに言われてるような気がして、静かに手を離す。
沖田さんは顔を見せないまま、土方さんたちの後を追いかけていく。
私はただ、暗闇に溶け込んでいく背中を見守ることしか出来なかった。
