【沖田side】
「当日、俺と近藤さんの二部隊に分かれる」
澪さんが寝静まり、源さんが戻ってきたことで隊長会議が開かれた。
内容は、古高俊太郎が計画の全てを自白したということだった。
京都市中への放火から放火の混乱に乗じて御所を襲撃し、中川宮朝彦親王を連れ去ること。
孝明天皇を長州側へ動かすこと、長州勢が京で挙兵するなどが計画だったらしい。
そうなると、尊皇攘夷派がどこかで長州勢と会合をしているに違いない。
場所の検討がつかないからこそ、二手に分かれてしらみ潰しに探していこうということだ。
「時に総司。いつまであの娘を避ける気だ?」
土方さんの低い声に、肩がビクリと反応する。
この場にいる全員の目線が、私に集中している。
「別に、避けてはいませんよ」
「いーや、避けてるね。俺らが分かるだから、澪はもっと分かるだろ。お前に拾われて、お前が一番澪のそばにいたんだから」
いつも軽口を叩く平助でさえ、真っ直ぐに真剣な眼差しで私を見ていた。
「お前らが古高を捕らえて帰ってきた時のことだ。嬢ちゃんはお前らが帰ってきたと聞いて行こうとした。だが行かなかった。そしてこう言ったんだ。"迷惑かもしれないから"ってな」
源さんの声が、静かに部屋中と胸の奥に響いてくる。
迷惑なんか出会った時から一度も思ったことがない。
どれだけ忙しくても疲れていても、彼女の声や顔を見るだけで救われていた。
既にこの気持ちの正体には気づいてはいるが、これ以上踏み込んではいけないと本能が告げている。
中途半端ではないと近藤さんにはっきり言ったと言うのに、結局中途半端な行動をしていると自覚している。
「澪が可哀想だよ」
「平助」
独り言のように呟く平助を近藤さんが窘めるが、平助は止まらなかった。
「だってそうだろ?理由もなく距離を置かれてさ。なのに、ちゃんと仕事しながら待ってんだぜ?なぁ、総司」
重そうに腰を上げた平助は私の前に来て、私の襟を強く掴んだ。
「お前、言ったよな?中途半端じゃないって近藤さんに。だけどよ、お前がしてるのは中途半端そのものだ。澪を悲しませるなら、俺がもらう。俺が!!……あいつを笑顔にする」
平助が澪さんを好いているということは知っているし、土方さんたちもそれに気づいている。
だけど、今無性に平助だけには渡せないと感じた私は、平助の手首を力強く握っていた。
自分で驚くほどの強い力に、平助が眉を顰める。
「やめろ。藤堂、手を離せ。総司もだ」
土方さんの声に舌打ちをしながら乱暴に手を離す平助の顔は、すごく悔しそうだった。
平助の言う事はもっともで、言われなくても同じことを思っていたし、それは本当に自分がいちばん理解している。
「総司。あいつを避けるのはお前なりの考えがあってのことだろうが、これだけは覚えておけ。守るってのは突き放すことじゃねぇ」
「……それでも」
膝の上で手を握り、声を絞り出す。
「今だけは、これでいいんです」
誰もその言葉に納得いっていないようだった。
それもそうだろう。私は、彼女に聞かれれば何でも答えてしまう。
私が言わなくても、彼女は芹沢の時みたいにどこからか聞きつけてやってくるかもしれない。
けれど、今回のは今までとは規模が違う。
多くの死傷者が出る可能性があるし、向かった私達もただで済むとは思えない。
優しい彼女のことだから、我々が怪我をしているのを見たら目に涙を溜めることだろう。
あの顔はもう二度と見たくないが、この危険な京にいる限りそうはいかない。
だからこそ、今回だけは離れて欲しい。なんて、私のわがままに過ぎないが、本当なら京自体から離したいくらいだ。
それくらい、私は澪さんのことが大切なのだ。
「当日、俺と近藤さんの二部隊に分かれる」
澪さんが寝静まり、源さんが戻ってきたことで隊長会議が開かれた。
内容は、古高俊太郎が計画の全てを自白したということだった。
京都市中への放火から放火の混乱に乗じて御所を襲撃し、中川宮朝彦親王を連れ去ること。
孝明天皇を長州側へ動かすこと、長州勢が京で挙兵するなどが計画だったらしい。
そうなると、尊皇攘夷派がどこかで長州勢と会合をしているに違いない。
場所の検討がつかないからこそ、二手に分かれてしらみ潰しに探していこうということだ。
「時に総司。いつまであの娘を避ける気だ?」
土方さんの低い声に、肩がビクリと反応する。
この場にいる全員の目線が、私に集中している。
「別に、避けてはいませんよ」
「いーや、避けてるね。俺らが分かるだから、澪はもっと分かるだろ。お前に拾われて、お前が一番澪のそばにいたんだから」
いつも軽口を叩く平助でさえ、真っ直ぐに真剣な眼差しで私を見ていた。
「お前らが古高を捕らえて帰ってきた時のことだ。嬢ちゃんはお前らが帰ってきたと聞いて行こうとした。だが行かなかった。そしてこう言ったんだ。"迷惑かもしれないから"ってな」
源さんの声が、静かに部屋中と胸の奥に響いてくる。
迷惑なんか出会った時から一度も思ったことがない。
どれだけ忙しくても疲れていても、彼女の声や顔を見るだけで救われていた。
既にこの気持ちの正体には気づいてはいるが、これ以上踏み込んではいけないと本能が告げている。
中途半端ではないと近藤さんにはっきり言ったと言うのに、結局中途半端な行動をしていると自覚している。
「澪が可哀想だよ」
「平助」
独り言のように呟く平助を近藤さんが窘めるが、平助は止まらなかった。
「だってそうだろ?理由もなく距離を置かれてさ。なのに、ちゃんと仕事しながら待ってんだぜ?なぁ、総司」
重そうに腰を上げた平助は私の前に来て、私の襟を強く掴んだ。
「お前、言ったよな?中途半端じゃないって近藤さんに。だけどよ、お前がしてるのは中途半端そのものだ。澪を悲しませるなら、俺がもらう。俺が!!……あいつを笑顔にする」
平助が澪さんを好いているということは知っているし、土方さんたちもそれに気づいている。
だけど、今無性に平助だけには渡せないと感じた私は、平助の手首を力強く握っていた。
自分で驚くほどの強い力に、平助が眉を顰める。
「やめろ。藤堂、手を離せ。総司もだ」
土方さんの声に舌打ちをしながら乱暴に手を離す平助の顔は、すごく悔しそうだった。
平助の言う事はもっともで、言われなくても同じことを思っていたし、それは本当に自分がいちばん理解している。
「総司。あいつを避けるのはお前なりの考えがあってのことだろうが、これだけは覚えておけ。守るってのは突き放すことじゃねぇ」
「……それでも」
膝の上で手を握り、声を絞り出す。
「今だけは、これでいいんです」
誰もその言葉に納得いっていないようだった。
それもそうだろう。私は、彼女に聞かれれば何でも答えてしまう。
私が言わなくても、彼女は芹沢の時みたいにどこからか聞きつけてやってくるかもしれない。
けれど、今回のは今までとは規模が違う。
多くの死傷者が出る可能性があるし、向かった私達もただで済むとは思えない。
優しい彼女のことだから、我々が怪我をしているのを見たら目に涙を溜めることだろう。
あの顔はもう二度と見たくないが、この危険な京にいる限りそうはいかない。
だからこそ、今回だけは離れて欲しい。なんて、私のわがままに過ぎないが、本当なら京自体から離したいくらいだ。
それくらい、私は澪さんのことが大切なのだ。
