あれから数週間が過ぎ、私がここに飛ばされて一年と数日が経過した。
最初は帰りたいとばかり思っていたのに、三食の食事作りや洗濯に掃除という日々を繰り返すうちに一年という時間はあっという間に過ぎていった。
土方さんの言う通り、あれ以来屯所内でも護衛がついてはいるが、あまり近くに居られても仕事ができないので、仕事をするときは少し離れてもらっている。
こういう感じを前にも味わったことがある。
だが今回は近藤さん自らお雅さんに説明をし、ものすごく心配をされたが大丈夫という旨を伝え、護衛の承諾を得ていた。
それ以外は特に何も変わらないはずなのに、最近はなんだか妙に落ち着かない。
「ったく……。土方先生も容赦なく叩きすぎだよなぁ」
洗濯物が終わり、今日の護衛の井上さんと歩いていると声が聞こえてきて、赤紫色に染まった腕に包帯を巻いていく隊士が目に入った。
稽古は全員参加だからと、稽古中は私は見学でそばにいることになっている。
私が落ち着かない理由は、土方さんが最近また一段と厳しくなっているからだ。
山南さんがアメと言うなら土方さんはムチで、稽古後はこうして隊士の愚痴を耳にすることが増えた。
初めて会った時から厳しくて怖い印象を持ってはいたが、芹沢さん同様土方さんも本当に不器用な人で、山南さんか沖田さんがいつも言葉を補っている。
稽古をちゃんと見学するのは初めてだったけど、厳しくて怖いというより、混ざりたいという気持ちが勝ってしまった。
護身術を学びたいと言えば、沖田さんが相手の元、稽古の休憩中に木刀を振らせて貰えるようになった。
けれど、土方さんが厳しくする時はいつも何かあるときだった。
池田屋事件が近づいていると思うと、不安で仕方がない。
池田屋と言ってしまえば、なぜ分かったのかが問われてしまう。
そうなれば、何となくで通るほど土方さんは甘くない。
未来を分かっているのに、いや、分かっているからこそ何もしてあげられない自分が悔しいと何度も思ってしまう。
「総司」
掃除に使用する水を変えるために井戸で水汲みをしていると、真剣な表情で話し始める土方さんと沖田さんを見かける。
小声で話しているらしく、ここからではその内容は聞き取れない。
すると隊士を数人呼びつけて、門の方へと歩いていった。
原田さんや藤堂さんはいつも通りに護衛中でも話しかけてくれるけど、沖田さんとはあからさまに会話が減っていた。
護衛中でも他の隊士の人より一定の距離を保ち、話しかけてすら来なくなった。
藤堂さんたちに聞いても、理由は分からないの一点張りで、聞いた時に一瞬気まずそうな顔をするのがずっと引っかかってはいるが、それ以上の深追いはしなかった。
今は彼らが元気で明日を越えれるようにと、祈るばかりだ。
