「嬢」
顔を少しだけ上げて目線を上げると、斎藤さんが腰から刀を鞘ごと抜いて床に置き、胡坐をかいた。
不思議なことに、こういう時の斎藤さんの低い声で少ない言葉数は落ち着く。
分かる範囲でいいから教えてくれと言われ、私はゆっくりと深く深呼吸をして襟元を掴む手に力を入れ、真っ直ぐ斎藤さんを見る。
「いつから見られていたかは、すみません……分かりません。ですが、初めて新見さんにお会いした時と同じような視線を感じて……。それで、少し気分が……」
「分かった。ありがとう」
言葉の代わりに頭を下げると、斎藤さんは刀を持って立ち上がった。
「念のため、今から見廻りに行く。総司、源さん、行くぞ」
土方さんの指示に、私の肩から沖田さんの手が離れるのが分かった。
今、沖田さんがそばからいなくなるのが、どうしようもなく怖く感じた。
「待って、ください」
気づけば私は、沖田さんの裾を掴んでいた。
「沖田さんが、いいです。……そばにいるのは、沖田さんがいいです」
隣に座る沖田さんを見ると、どういうわけだか目を丸くして驚いている。
「……だそうだ」
息を吐きながら呆れ交じりに聞こえる土方さんの声に沖田さんは優しく微笑み、「分かりました」と言って私を優しく包み込む。
この状況でなければ、今の体勢を見た藤堂さんや原田さんが茶化し、土方さんの呆れた声が飛んでいたことだろう。
でも、状況が状況なために誰も茶化そうとはせず、寧ろ土方さんは藤堂さんに、島田さんも呼んで警護に当たらせるように指示していた。
見られていただけだというのに、私が必要以上に怯えていたために大事になってしまった。
そして私は包まれていることに安心したのか、気づけば沖田さんの腕の中で眠りについた。
