初めての恋は、時代を越えたあなたと。


屯所に着くと、いつもは元気な声で「お疲れ様です!」と言ってくる門番係の隊士も、沖田さんに支えられている私を見て何かあったと察したのか、静かに通してくれた。

沖田さんは、低い声で門を閉めるように指示を出す。

沖田さんに連れられるまま玄関を通って中に入る。



「おっ、今帰り?って、どうした?」



中に入っていくと、ちょうど藤堂さんが歩いてきたみたいで藤堂さんの声が聞こえる。



「澪さん、座りましょうか」



居間に入った私は、声の通りにゆっくりと畳に腰を下ろす。

今までならあんな視線に物怖じしなかったというのに、あの日を境に私が狙われていることと改めてこの時代は危険だということを知ったから、私に向けられる視線には誰よりも敏感になってしまった。

屯所に入ったから安全という気にはなれずに両腕を掴んだままでいると、沖田さんが自身の羽織を私にかけてくれた。

羽織の温かさを感じ、襟元を掴む。



「平助、皆さん食事は終わりましたか?」

「広間で寝転がっている奴はいるが、お前ら以外は食べ終わってるぜ」

「なら、近藤さんたちを呼んできてください。ついでに、私の刀も持ってきてくれるとありがたいのですが」



沖田さんは私の肩に手を添えると、「私は今離れられませんので」と続けた。

藤堂さんがどんな表情をしているかは分からないけれど、低く真面目な声で「分かった」と言って走っていった。

それから間もなくして、数人の駆けてくる足音が部屋にまで響いてくる。



「総司、何があった」



土方さんの低い声が静かに届く。



「帰り道、何者かにつけられました。人数は不明ですが、足音からするに一人ではなかったことは確かです」



夕方まで優しく話していた沖田さんの口調は、隊長としてのしっかりとしたものに変わっていた。

顔を上げないといけないのに、目線があってしまえばさっきの視線を思い出しそうで中々上げることができない。

あの時の新見さんの視線の後も、気分が悪くなったのを思い出す。



「迂闊でした。その視線に真っ先に気づいたのが私ではなく、澪さんだったんです」

「澪さんが?」

「ええ。殺気を放つというよりかは、獲物を捕らえる感じだったんだと思います。殺気を放っていれば、私が気付かないはずありませんから」



沖田さんの言う通り、私が感じたのは殺気などではなかった。

ただ見られている、そういう視線が一番体に張り付き、消えてくれないのかもしれない。