朱莉と颯は私の父親の道場に通っている。
朱莉は中学時代、剣道部に所属していたみたいだけど、手首の怪我を機にマネージャーを志願したらしい。でも、時々竹刀を振りたくて体が疼くらしく、道場に通うようになった。
颯は、部活外でも練習して強くなりたいという思いで通っている。
私の剣道への思いは二人が一番理解しているだろう。
剣の天才と謳われた沖田総司を知って、私は無償に稽古がしたくなった。
おそらく、二人もそれに気づいたんだろう。
いつもはランニングは稽古が始まる一時間前に三十分だけ走るようにしている。
行きが十五分、帰りが十五分と、朱莉がいるときは朱莉に計ってもらっている。
だけど今日は時間があるから、十五分多く走りたいところだけど、生憎の暑さだから時間は変わらず。
残りの稽古までの時間は、素振りとストレッチに使おう。
図書館から道場までは、徒歩で約十五分。その道場から家までが徒歩五分。
「ただいま」
「おかえりなさーい」
リビングから母親が顔を出す。
いつも先に家に帰って部屋に荷物を置き、道場に荷物を置いてから、着替えたランニングウェアでランニングに行くというのがいつもの流れだ。
朱莉も颯も私の母親からしたら娘と息子だからと母親が言い、玄関だけど荷物を置いている。
私たち以外にも門下生がいるから、持ち物の紛失があれば大変だからと、母親が提案したのだ。
何度も言うように、今日は本当に暑い。天気予報だと、これからさらに暑くなるらしい。
魔の八月ということになるかもしれない。
だから今日は朱莉の付き添いは断り、道場でストレッチと素振りに励んでもらうことにした。
熱中症で倒れたら、稽古どころじゃなくなるからだ。
