屯所への帰り道、茜色の空の端から少しずつ群青色が広がり始めていた。
他愛もない話をしながら歩くこの時間も、もうすぐで終わってしまうと思うと少し寂しくなる。
藤堂さんや原田さんたちと話すもの楽しいけれど、沖田さんはここに飛ばされた私の事情も聞かずに手を差し伸べてくれた人で、この人と居る時が一番落ち着いていられる。
だから、まだ屯所に帰りたくない自分がいた。
すると、何やら背後から感じる嫌な視線に足を止める。
誰かは分からないけれど、初めて新見さんと会った時のような視線が全身に張り付いてくる。
せっかく忘れていたというのに、この視線があの日のことを思い出させる。
「澪さん?」
数歩歩いた先で沖田さんが足を止めて私の方に歩いてくるが、視線の気味悪さに両腕を掴む。
声が出ずにいる私を見て察したのか、沖田さんは片手で私をそっと抱き寄せ、もう片方の手を脇差にかけた。
「いつからです?」
耳に静かに小さく落ちてくる声に、私は首を横に振る。
本当にいつから見られたのかは分からない。
けれど屯所に近づくにつれて人通りは少なくなり、その時にこの嫌な視線に気づいたのだ。
「隠れて見ているだけとは、随分趣味が悪いですねぇ」
少し大きめに出された声に、どこからか舌打ちが聞こえてくる。
「……新撰組か」
背後から低い男の声が聞こえると共に、数人の遠ざかっていく足音が聞こえた。
完全に消えた嫌な視線と足音に、強張っていた体の力が抜けていき、沖田さんは「おっ…と」と言いながら体を支えてくれた。
沖田さんがいなかったら今頃どうなっていただろうと考えるだけで全身が震え上がり、沖田さんの袖を入らない力で握りしめる。
「もういないと思いますが、念のため屯所に急ぎましょうか」
「はい……」
