辺りを見回しながら歩いていると、一つのお店が目に入り、その店の前で足を止める。
沖田さんに聞くと小間物屋というらしく、化粧品や簪や櫛と言った小物が売られているらしい。
店に近づいてみると、店先には簪が綺麗に並べられて売られている。
「綺麗……」
値段が二両と書かれている簪は桜の飾りがついていて、季節ものだからか並べられている簪の中で一番輝いて見える。
普段は食材しか買っていなかったし、その分のお金を渡されるだけだったから、この時代の値段が現代でどれくらいするのかは分からない。
今つけている簪をいつまでも借り続けるというのも申し訳ないから、新調したいと思っているけれど、こんな高そうなものを買ってしまっては壊れた時にすごく落ち込むことだろう。
それに、女中が綺麗なものをつけていたら浮いてしまうに違いない。
もう少し目立たないものを買おうと思い、簪が売られている店を数店舗回るも、この時代でなければ見たりもつけたりもしないため、すべての簪が綺麗で高そうに見えてきて買えずに、私たちは甘味処へ移動した。
せめて、値段の相場さえ知っていればいろいろな買い物ができたのかもしれないけど、今以外で特に困ったことはなく充実しているから問題はない。
「澪さん、私少し用事を思い出したので、ここで待っていてもらえますか?」
「私も行きましょうか?」
「すぐに終わりますので。それに、帰りにまた歩かないといけないので休んでいてください」
押し切られた気もするが、お言葉に甘えて休ませてもらうことにした。
外の長椅子に座りながら行き交う人を見つめる。
島原に近いということもあって遊女の方たちがたくさん歩いていたり、壬生とは違って身だしなみが綺麗な人が多い。
お雅さんの言う通りにして本当に良かったと思う。
いつもの恰好で来ていたら、それこそ間違いなく浮いていただろう。
「お待たせしました。では、帰りましょうか」
「はい」
用事というのは早く済んだらしく、数分もかからずに戻ってきた。
この時代の時間の表し方は一年いても中々覚えられず、現代言葉で表しそうになる時がある。
何より、三十分以下を表す言葉がないというのは本当に厄介だ。
