お絹さんの背中を見送った後、引っ張られていた袖は解放され、四条通に向けて再び歩き始めた。
沖田さんは相変わらず私のスピードに合わせて歩いてくれている。
四条通がどんなところかは分からないけれど、私たちが歩いている道は進めば進むほど人通りが増えてきて、賑やかな声もあちこちから聞こえてくる。
それなのに私は、お絹さんの最後の表情が頭から離れなかった。
「あの、沖田さん。先ほどのお絹さんは、お医者さんなんですか?」
「そうですね。正確に言えば、お絹さんの父君が医者でして、その師にあたる方が我々新撰組と縁のある方なんです」
ということは、医師同士で患者の共有をしていて、それをお絹さんが知っていてもおかしくはない。
薬を届けたりとかいう手伝いなら、取り扱いさえきちんと説明していれば娘さんでも持ってくることができるということだ。
「見えてきましたよ」
前を見ると、壬生とは大違いに道が人や露店、店で溢れかえっていた。
私は幼い子どものように駆け足で少し先に進んで足を止めた。
近ければ近いほど、先ほどまで聞こえてきていた賑やかな声が、会話としてはっきり聞こえてくる。
どれだけ歩いたのかはもはや気にしていない。
簪や風車、飴細工など現代では見られないものが沢山並んでいて、胸の高鳴りが抑えられない。
足を止めたまま辺りを見回していると、横から小さな笑い声が聞こえてきた。
「澪さん、本当に表情が豊かになりましたね」
「そ、そうですか?」
「ええ。屯所に来たばかりの頃は表情が硬かったですし、ずっと警戒していたでしょう?」
そう言われると、確かに最初は警戒していたが気づけば警戒なんてものはなくなっていた。
自分がどんな表情をしているかは分からないけれど、何かとそばにいてくれている沖田さんが言うのであれば相当豊かになったのかもしれない。
