初めての恋は、時代を越えたあなたと。

【沖田side】


「私という存在が、新撰組の弱点になっていないか……って」



そんなことを静かに口にする澪さんの手は、小さく震えていた。

いつも私たち隊士のために働いてくれていて気丈に振舞ってはいるが、それを聞くのはおそらく、あんな事があったからだ。

ここで初めて会った時も、私たちを知らないとはいえ、竹刀を向けるほどには肝が据わっている人だ。

出会った頃より表情は随分と柔らかくなったというのに、屯所内でもふとした時に彼女は、どこかへ消えてしまいそうな顔をする。

彼女が抱えていることと何か関係があるのだろうか。



「弱点になると思っていれば、貴女を屯所になんて置いたりしません」



その言葉にゆっくりと上がった彼女の顔は、不安に押し潰されそうなくらい悲しい顔をしていた。

だから、少しでも安心してほしいがために彼女の手を握るも、その小さな手はすごく冷たくて、その冷たさが彼女の不安の大きさを表している感じがした。

今日は少しでも不安を感じさせないために、心の底から笑って欲しくて誘ったのだが、あの親子に会ったことで不安が募ったらしい。

かといって親子のせいではないし、男の子に会った時の澪さんの笑顔はすごく安心したようだった。

その笑顔を見られただけでも、こちらとしては本当に嬉しかった。

けれど、彼女が何かを抱えている限り、不安を全て取り除くことはできないだろう。

それが少し悔しいと思ってしまう辺り、自分も随分と変わってしまったようだ。

今までなら隊士たちの悩みを聞いても飄々と返していて、人一人が抱える事情に踏み込むことはなかった。

時折近藤さんに「澪さんが来てからお前も変わったな」と言われるが、今ならその意味が嫌ほど分かってしまう。



「さあ、日が暮れる前に四条通まで行きましょうか。歩くのが疲れた時は必ず言ってくださいね?」

「……動くのは好きなので、大丈夫です」



今日のこれからの時間は、澪さんの好きにさせてあげたい。

彼女が今日という日を心から楽しいと笑えるように。