一年前、太陽が当たらず薄暗いこの場所で、私は沖田さんたちの声で目を覚ました。
当時はタイムスリップしたということが中々受け入れられず混乱していたし、恐怖と不安に苛まれていた。
あの日のことは今でも鮮明に覚えているし、どうして怒ると怖い二人に竹刀を向けてしまったのだろうという後悔も若干ある。
沖田さんは木箱に腰を掛けると、優しい顔で私を見た。
「それで?どうしました?」
聞きたいことが幾つかある中で、これを聞いてしまったら何か変わってしまうんじゃないかといく不安が波寄せてくる。
手を握りながら視線を泳がせ、一生懸命言葉を探す。
「時々、考えるんです。私という存在が、新撰組の弱点になっていないか……って」
町の喧騒が遠くに感じるほど、今この場では静かな空気が流れていた。
沖田さんは私を真っ直ぐ見つめたまま、何も話さない。
「沖田さんは、どうしてここで倒れている私に声をかけてくれたんですか?……どうして、私がさとやを飛び出した時、探しに来てくれたんですか?」
助けられたあの日から、ずっと気になっていることだった。
女である私を拾えば、必ず新撰組という組織の弱点になる。
それなのに沖田さんだけでなく、新撰組の人たちの殆どが私が屯所にいることを許してくれた。
まぁ、家主の奥方であるお雅さんが許可したとあらば、それを拒否する権利は誰にもないのだけれど。
ご飯を奢ってもらったにもかかわらず、現実を受け入れられずにさとやを飛び出した私を、沖田さんは見つかるまでずっと探してくれていた。
放っておくことだってできたはずなのに、寧ろ放っておいた方が新撰組の皆だって先日のみたいな面倒ごとに巻き込まれなくて済んだはずだ。
それなのに、なぜ私を拾ってくれたのかがずっと分からなかった。
「澪さん」
考え始めたら、溜まっていた不安が一気に押し寄せてきて止まるということを知らない。
沖田さんが立ち上がったのは視界に映る足で分かるも、頭上から聞こえてくる声に顔が上げられない。
「弱点になると思っていれば、貴女を屯所になんて置いたりしません」
「え……」
静かに落ちてくる否定的な言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
すると沖田さんは微笑んで、私の手を両手で優しく包み込んだ。
「放っておけないからこそ、貴女が傷つけば皆さん過保護になるのですよ」
そう言って、沖田さんは困ったように笑った。
反対に、私の胸の奥では荒れていた波が落ち着くかのように、温かいもので包まれていった。
